【小説】クリスマスに
灯火@ココロ・カタチ・ヅクル「リ・キュレーター」さんの # 灯火物語杯に参加します。
クリスマスには夢が詰まっている。
「あかね、サンタさんに会ったよ」
きらきらした目で、あかねちゃんは言った。
「え?! どんな人だったの?」
私はサンタクロースに会ったことがない。
あかねちゃんが羨ましくて、食い下がるように、私は教えて教えてと聞いた。
あかねちゃんは思いを巡らせるように、右手の人差し指を頬に当てて、「どうしようっかなー」と、ませたお姉さんポーズで私をチラリと見た。
「赤い服着ていて、白いおひげがついてたよ」
そう言ったあかねちゃんの顔は、とても誇らしげだった。
「サンタさんは大きな袋を持ってて、これから近所中を回るんだって言ってた」
「本当?! じゃあ、私のとこにも寄ってくれたのかな」
私は、今年のプレゼントだった、リカちゃん人形の新しいドレスを思い浮かべた。
私は誰にも欲しいものを言わなかったのに、サンタさんは何でも知ってるのだと、すごく嬉しかった。
サンタクロースって本当にいるんだ!
「私もサンタさんに、ありがとう言いたかったな」
私がクリスマスの朝、早速サンタさんのプレゼントを開けていると、朝から両親はイライラしていて、「学校に遅刻するから、帰ってきてからにしなさい」とそればっかり言っていた。
後ろ髪を引かれるような思いで、プレゼントを置いて、朝ごはんの席に着いたけれど、頭はプレゼントの中身でいっぱいで、ご飯の味はしなかった。いつも以上にイライラしている両親のことも気になった。
「サンタさんってすごいよね! 私も来年は会いたいなぁ。どこで待ったらいいんだろう。あかねちゃんはどこで会えたの? おうちの中?」
あかねちゃんは、その時初めてムッとした顔をした。
「無理だと思うよ」
「え? なんで?」
「だって……、サンタさんの言ってた近所って、あかねのおうちの近くのことだもん」
「じゃあ、別のサンタさんに会えるかも……」
「だから、無理だよ。みいちゃんとこは、本物のサンタさんじゃなくて、みいちゃんのお父さんかお母さんが、サンタのフリして、プレゼントを置いてるだけ」
「そんなの分からないじゃん!」
私は胸が張り裂けそうな気持ちになって、あかねちゃんがどうしてそんな意地悪を言うのか分からなかった。
「でも、みいちゃんはサンタさん、見たことないんでしょ」
「ないけど……」
「それにサンタさんの袋、あかねが会った時には、もうぺっちゃんこだったよ。みいちゃんのおうちには行かなかったんじゃないの?」
「私のおうちを、あかねちゃんのおうちより先に回ったかもしれないじゃん」
あかねちゃんのおうちは、確かに私の家からは離れていて、でも大きく括ればご近所ではある。
サンタさんは、全ての子供にプレゼントを配ってくれるんじゃないの?
だから、私の枕元にリカちゃんのドレスがあったんじゃないの?
「サンタさん、うちにも来たもん!」
「だーかーらー」
泣きべそをかいた私に、うんざりした顔をしたあかねちゃんは、首を右に左に振り、舌ベロをぺっと出した。
「サンタさんは、泣き虫のおうちには来ないんだよ」
ーーー
ホットココアを飲みながら、私はクリスマスイブの深い夜を待っていた。
隣の部屋から、子どもたちのサンタ論争が聞こえていたが、それも静かになってからしばらく経つ。
電気を常夜灯にして、強い光が入らないようにしてから、隣の部屋の襖をそっと開けてみる。
小学3年生の娘と、1年生の息子。
仲良く口をポカンと開けて、気持ちさそうに寝ている。
足音を忍ばせて、1つずつプレゼントを枕元へ置く。
大したものはあげられないけど、サンタさんはいるんだよ。
赤い服も着ていないし、白いひげもないけど。
泣き虫でも、へそ曲がりでも、嘘つきでも、みんなのところにサンタさんは来るんだよ。
たとえ、プレゼントが枕元になくても、サンタさんは来ているんだよ。
あかねちゃんが見たサンタさんは、本物のサンタさんで、私のところにも、本物のサンタさんが来ていた。
私は再び襖をそっと閉めて、冷めてしまったホットココアが残るマグを眺める。
でも、もう大人の私のところには来ないかな。
マグを片付けて、そろそろ寝ようかという頃、かちゃん、と玄関の鍵が開く音がした。
「いやー、寒い寒い。あ、まだ起きてたの?」
「おかえり。今日は、サンタしなきゃだからね」
「そっか。そうだったよね。今日は」
その人は「いつもありがとう」と言って、まだ冷たい外の空気を体にまとわせたまま、近づいてきて私を抱きしめた。
「メリークリスマス」
「今日はまだイブだよ」
クリスマスには夢が詰まっている。
【今日の英作文】
どんなことも継続は力なりといいます。あきらめず、取り組むことが大事です。
They say persistence pays off in everything. It's important to do your best and never give up.
#日々 #日記 #文章 #エッセイ #毎日note #毎日更新 #アウトプット英作文 #灯火物語杯 #クリスマスに #サンタさん #サンタ論争 #あたたかな夜を #私の作品紹介 #小説
