父上よ、それは自分のためだ
父上が、定年になるらしい。
いや、正確にはよく分からない感じで違うのだが、とにかく会社退職する。
何が困るか。
それは、毎日の父上のお昼ご飯。
母は勤めに出ているので、父上のお昼ご飯まで準備する余裕がない。
現在、母がいないような日、父上は母が作った作り置きを食べるか、冷凍品をチンするか、スーパーのお弁当を買っている。
自分で料理などしない。
退職して何かする予定があるのか、というと、再就職でもしない限り、何もないらしい。テニスとゴルフと趣味の畑仕事? くらい。
というわけで、この際料理を始めたみたらいかがか。
母と話していて、考える。
父上も図書館はよく行くし、最近図書館の料理本でも、きっとレシピが分かりやすい、華やかなものが多そう、だろうと思う。
少子高齢化の進んだ田舎でも、地元の図書館はまだ健在らしいので、レシピ本くらい心惹かれるものがきっとあるはず、と思う。
なのでよく分からずYouTubeをさまよったり、よく分からないSNSに登録したりするより前に、レシピ本をまず手に入れる。
今、本を出すような料理研究家さんは、大概YouTubeチャンネルを持ってるし、SNSをやっている。
気に入った料理研究家さんをフォローして、研究していけば、料理動画がYouTubeにも流れるし、気になれば、SNSを新しく使いはじめてもいい。
一石二鳥どころか、どれだけの鳥が捕まえられるか分からない。
新しい趣味も、実益を兼ねた挑戦もできる。
とりあえず、図書館へ一緒に行くのだ!
そうね。
そうね。
とあわーい期待と希望を抱いて、母と話を終える。
父上の一言。
「そんなことはする必要がない」
即断でブチギレ却下。
まあ、そんなことだろうとは思ったけど。
普段の食生活だけの問題じゃないのよ。
スーパーのお弁当を続けて食べることで、塩分過剰などの健康に害があるとかだけでもない。
父上も母も、もういい年だ。
母がなにかで、料理を普段作れなくなる日だって、来ないわけじゃない。
その時、父上はどうするの?
それ以降、365日スーパーのお弁当なの? いつか車にも乗れなくなって、スーパーに行けなくなる日だって来るのに。
スタートとしては、遅すぎるのかもしれないけど、スタートする価値は無限大だし、まずはやってみればいいじゃない。
と私は思う。
今やってみて、うまくいこうといかまいと、料理は「やればできる」という感覚や、あのタイプの料理はさっぱり分からんという感覚を、知っているか知らないかだけでも、生活の質は大きく変わってくるだろう。
簡単な野菜炒めを作るにしても、塩加減や醤油の加減も、やってみないと分からない。
思えば、今回の選挙。消費税をなくすという政党は多い。でもこれの意味するところは、社会保障が必然的に手薄になっていくということ。
今でさえ、所得の多い人は負担が増えるようになっている。そして今も、介護認定を受けていない配偶者の家事手伝いを、ヘルパーさんはできない仕組みになっている。
つまり、料理ができない母に介護の認定がおりて、ヘルパーさんが入っても、父上の食事の準備はしてもらえない。
社会保障の財源が減っていけば、この仕組みはもっと厳格化していくだろうし、国がその節約に走るということは、そういう末端のもろもろサービスが削られていくということ。
自力でなんとかできる能力は、もう待ったなしで、持っていなければならない。
父上、やるだけやってみな。
将来にわたって、自分が生きるか、自分らしく生きられるか、その瀬戸際なんだよ。
それは、自分のためなんだから。
料理を勧められて、「人生や生き方を否定」されたように感じているなら、それは違う。
むしろ応援してる。できる限り、今後も父上の人生が父上らしいものであるために、なにかできないか、そういう気持ちでいるんですよ。
伝えるのはとても難しい。でも諦めないでいたい。
【今日の川柳】
お題「急ぐ」
悲哀こそ 急襲すれば 凪の海
【今日の英作文】
食事をサボろうかと思うのですが、お腹がすくのが苦手で、結局食べています。私には断食は無理そうです。
I'm thinking about skipping meals, but I don't like being hungry, and I usually end up eating something. It looks like I'll never try fasting.
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