《ショートショート》眠らない手紙──届かない想いにも、行き場があるとしたら。
深夜、ポストは眠らない。
昼間はただの赤い箱。
けれど、夜になると、
その中で手紙たちが静かに目を覚ます。
宛先のない手紙、出せなかった手紙、
戻ってきた手紙。
それらは互いに読み合い、語り合い、
そっと泣いたり笑ったりする。
「好きだった」「ごめんね」
「本当は、ずっと寂しかった」
そんな文字たちが、
誰にも読まれずに積もっていく。
ポストの奥には、
誰かの想いの層が重なっていた。
古びた封筒、にじんだインク、
届かなかった未来。
ある夜、古い手紙がそっと言った。
「私たちは、もう誰にも
届かないのかもしれないね」
そのとき、見えない声が答えた。
「それでも、言葉になったということは、
もう届いているんだよ」
手紙たちは、静かに揺れた。
夜の風に包まれながら、
そのまま眠らずに朝を待った。
誰かが受け取るとは限らない。
それでも、夜のポストの中で、
想いは静かに息をしている。
お題で書きはじめるnote企画
▼このお題で、書かせていただきました。
最後までお読みくださり、
ありがとうございます🙏
