【SB:第2部】ワイルド・ブラッド:エピローグ 大団円
▼前回▼
「え? 銀次、かーちゃん?
……どういう関係?」
牙が言う。
「別に。大学の同期よ」
「大学? ほんとに??」
「上に行ってなさい、牙」
「う、うん……」
かなり疑ってる目だ。
「美桜、どゆこと?
まさかおまえ、ポップコーンと結婚してたのくわぁ!」
大ショック顔の銀次。
美桜が一転、冷たく睨んだ。
「いまさら、なにかしら?
私はもう、家庭があるの、あなたなんかに構ってられないの!」
肩の髪を払って、背を向け、料理作りを再開する。
肉じゃがのいい香り。野菜を手ぎわよく切る音。
「そんな〜! な、美桜! ビューティフル美桜!
美桜だって我のこと……」
振り返った美桜の目が、鋭く光った。
その手に、スペア包丁。
「ひ、ひえ〜〜〜〜っ!」
銀次は、情けない声を出した。
「参ったよ、銀次がストーカーで、しかも、かーちゃんと知り合いっぽくて……なんなんだよ」
牙が部屋に戻ると、おしゃれ双葉が壁に耳を当てていた。
「なにやって……」
ピーンと来た。
そっちは、美紅の部屋の方だ。
「おまえもなぁ!」
恋すると、<男>は変わる。
「だって、なぜか美紅さんの部屋に通してくれないから……」
ルーズソックスに、黒いミニスカート。オフホワイトのジャケット。どこまでも乙女な双葉。
違うのは、親父くさいグローブを、左手にはめてることくらいだ。
双葉はそこに、グールを封印しているのだ。
牙が呆れる横で、聞こえてくる声を、双葉が懸命に聞いている。
美紅はピッチで誰かと盛り上がっている。
「お、男じゃないよな? 男じゃ!」
「おまえなぁ」
「頼む! 赤羽、美紅さんの交友関係を教えてくれ!」
「知らん」
「大学って、出会いがたくさんあるってドラマで観た。心配だ」
しばらく壁に耳を当てていたが、双葉は不意に、牙に向き合う。
「あーあ……愛に生きると決めたけど、美紅さんには会えないし、もう若木の姿で、バイトもなんもできねーな」
「若木……」
牙はため息をついた。
「これで、ほんとによかったのか?」
そこに響く、高い無機質な電子音。
青いプラスチックの中で、淡い緑色のバックライトが点滅する。
双葉は腰につけていたスケルトンブルーのボケベルを見た。
中の基盤や乾電池が透けて見える、おしゃれなタイプだった。
「美紅さん⁈」
双葉にはすぐわかった。
受信した画面に映るのは、美紅の11桁のピッチの番号だった。
もちろん、暗記している。
双葉は、弾かれたように、美紅の部屋の方を見た。
そしてすぐ、公衆電話に走った。
『999(ありがとう)』
液晶の緑色の光の中で眩しく輝くメッセージに、双葉は最高の笑みを浮かべた。
「美紅さん、俺、美紅さんに一生着いていきます!」
受話器を置いたその背中を見つめ、牙はそっと呟いた。
「若木、かっこよすぎだろ」
⭐︎おしまい?⭐︎
▼次回▼
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