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☂️雨の日のKISS☔️

 
 ちょうど、梅雨の時期だった。
 今でも、ときどき思い出す……。

 世界が闇に見えた。
 ずっと、好きだった人と別れた。

 2年つきあった彼氏だった。
 なんか怪しいと思ってた。
 最近は、デートの回数も減った。
 LINEの返事も適当。
 電話なんて、ほぼない。

 いけないことだとは、わかってた。
 けど……
 見てしまった。彼のスマホ。

 彼氏が浮気してた。

「河井!」
 放課後。クラスメートの、羽柴漣が声をかけてきた。
「おまえ、今日、元気ないな……なんか、あった?」
「べ、別に…」
「ふーん…なら、いいけど」
 漣がじっとあたしを見てる。
 そんなに元気なく見えるのかな?
「あ」
 漣が、窓のほうを指差す。
「雨だ!」
「え、ほんと、やだ!」
「強くなりそうだな」
「ほんと? すぐ帰る! 強くなる前に!」
「少し待ってから帰れば?」
「大丈夫!」

 あたしは、昇降口で、靴箱からローファーを取り出した。
「雨、やだな」  
 少し、校庭を横切る。
 途端、前に進めなくなった。
 辛くて、しゃがみ込む。
 傘が手から転げ落ちた。
「う、うぅー……なんで? 好きだっていったじゃん」
 涙と雨が混ざり合って、ぐちゃぐちゃになる。

 どれだけしたか、
「河井!」
 名前を呼ばれた。
 傘があたしの頭上に差し出された。
 見上げると、漣が心配そうに見ている。
「どうして?」
「窓から見えたから」

 漣がかがみ込む。
「河井……大丈夫か? 服、着替えたほうがいい。ジャージあるか?」
「うん……」
 漣があたしの肩に手を置いた。
 いろんな感情がごちゃ混ぜになって、

 気付いたら、
 あたしは漣にキスしてた。

「え?」
 な、なにしてた? いま、あたし?
 ど、どうして、漣にキスなんて……。

「菜乃……」

 急に名前で呼ばれた。
 漣も自分で言って驚いたのか、気まづそう。  
 でも、そのあと、漣があたしを抱き寄せてきた。

「好きだ……菜乃。
 ずっと、好きだった……」

 えぇえーー!!!
 漣が、あたしを???
「ご、こめん、つきあってもいないのに、キスなんてして……」
「じゃあ、つきあって」
「え! ムリムリ。
 あたし彼氏と別れたばかりだし、他の男の子なんて,いまちょっと、考えられない!」
「え……」
 漣がショックを受けてる。
 やばい。
「ご、ごめん……」

 そのあと、あたしはジャージに着替えて、帰宅した。
 なんで、好きでもない男の子にキスしちゃったんだろ。 
 そして、その子が、あたしを好きだなんて……。  

 スマホが鳴った。
 
 漣からのLINEだった。


《今日は、いきなりごめん。
 菜乃があいつより、俺が好きになるまで、待ってい?》 

 漣……。

 ばかなんだから。

 その後、漣と私の関係が変わることはなかった。

 でも、やっぱり、気持ちは、嬉しかった。

 

 今でも雨の日には、ときどき思い出す。
 
 漣の優しさと、
 
 あの、
 
 キスのことを……

  

 

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