線香花火
コンビニに入ると、冷房が夏の熱気を掻き消した。
「ふぅ。涼しいね、明咲《めい》」
「うん、向日葵《ひまり》ちゃん!」
二人の女の子が、飲み物と──
花火セットを買う。
店を出ると、近所の公園へ向かう。
うるさいくらいのセミの声。明咲は汗を拭うと、向日葵を見る。
色素の薄い髪と瞳。長い髪を無造作に下ろしている。
自分の黒い二つ結びに髪を肩から払い、向日葵のそばにしゃがむ。
向日葵は、地面に建てたロウソクに。ライターで火をつける。
「やろう! 明咲!」
「うん!」
袋を開け、手持ち花火を持つと、二人は順に火をつける。
棒の先に、弾ける、黄色、赤、緑。
「綺麗だね!」
見ると、いつに間にか向日葵が明咲を、スマホでムービー撮影している。
「楽しいね、明咲」
「うん!」
スマホをしまうと、また向日葵も花火をし出す。
「ほんと、きれー……」
「向日葵ちゃんは、どの花火が好き?」
「え? 派手なのが好き!」
「あはは」
「明咲は?」
「わたし? わたしはやっぱり、線香花火かな!」
「え? どうして?」
「小さくても、頑張ってるから……」
「ふーん?」
向日葵は不思議そうにしていたが、最後に残った線香花火を手にする。
赤い中心部から、外に伸びる、線香花火。
じっと見ていた向日葵が口にする。
「確かに、よく見ると、綺麗……」
「うん……」
明咲は、花火を見ながら思い出す。
向日葵が初めて声をかけてくれた時を。
屈託なく笑ってくれた、春の日の教室。
(仲良くなれて、嬉しかった。明るくて、キラキラしてて、物怖しなくて。
話しかけてくれて、嬉しかった)
不意に、向日葵が言った。
「かわいい子がいるなぁと思って。仲良くなりたかったんだよね!」
「そうだったんだ……」
二人して、笑う。
ジジジと、音がして、広がる線香花火。
赤い中心部が、地面に落ちる。
儚い、光の花。
「あ……」
「……終わっちゃった」
もう、花火の残りがない。
二人は顔を見合わせて、笑った。
「楽しかったね!」
「うん!」
バケツを持ち上げる。花火の燃えカスが入っている。
ロウソクも片付けた。
「帰ろうか」
「うん……」
「喉、乾いたね」
二人はまたコンビニに入る。
飲み物と、棒のアイスを買って、並んで夜道を歩く。
ソーダアイスがなんだか切ない味がした。
明咲は、お茶を一口飲む。
「また、来年もやろうね、明咲!」
「うん、向日葵ちゃん」
その言葉が嬉しくて、明咲は笑う。
──来年。
「そうだね……。約束」
夜空を見上げる。
夏の星座が、優しく二人の上で瞬いている。
(どうか、来年も友達でいられますように……)
明咲はそっと。
星に祈った。
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