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【タイトル未定】『泡沫』楽曲感想~うたかたの唄に、やさしい名前を。

 札幌を拠点に活動しているアイドルグループ「タイトル未定」から、また必聴の名曲が生まれました。

 曲名は『泡沫』。テレビドラマ「ワカコ酒 Season9」のED曲としても起用されています。タイトル未定にとってドラマタイアップは初だそうで、グループの名を世に広める機会になりそうですね。

 この曲を聴いた私は「シンプルにいい曲と、いい歌だ」を感じつつ、様々な感情を覚えました。その断片をこうして記事という形で取りまとめ、記事にしたいと楽曲感想note着手に至りました。
 少しでも、この曲とグループの良さが伝わればいいなと思います。


『泡沫』

作詞:青葉紘季
作曲・編曲:青葉紘季、大山聖福

シンプルにいい曲、メンバーの想い

 率直に、いい曲といい歌。
 リスナーの心の隙間にしれっと入り込んで、まるでお酒を飲んだかのように、徐々に身体へ浸透するような。聴いて心がぽかぽかするミディアムバラードです。珠玉の逸品。

 先日、この楽曲のフルが初公開された彼女たちの冠ラジオ番組「タイトル未定の金曜の予定は未定!」にて出演したメンバーの谷乃愛さん・阿部葉菜さん・冨樫優花さんが本楽曲に対するインスピレーションをそれぞれ話していたのがとても印象的に感じました。

 谷乃愛さんは、
「ライブ終わりのファン達が飲み会で語り合う姿を思い浮かんだ、自分ならそのシチュエーションでMVが撮りたい」

 阿部葉菜さんは、
「帰省した友達と会った帰りに聴いて泣いた」
「この曲のレコーディングの際、自分がしんどかった時(先日までの活動をセーブしていた時期についてでしょうか)にメンバー一人ひとりと話せた、曲調も相まってメンバーのことが思い浮かぶ」

 冨樫優花さんは、歌詞の一節である
「些細なことでも愛せるような そんな人になりたい」を聴いて泣いてしまった(この時点ではまだタイアップという事を知らされていなかったそうです)と話されていました。

 この曲により、谷さんは自分を応援してくれる存在であり"かけがえのない他者”である「ファン(の寄り合い)」、阿部さんは「自分における仲間の存在」が浮かび、冨樫さんは「楽曲と歌詞が自己の琴線に触れた」ということなのでしょう。

 楽曲を聴く人によってそれぞれの風景を描けるのは、まさにこの曲が普遍的なポップスゆえ、様々なものを包含している、社会(=人)と接続した世に開けている音楽という証左ではないでしょうか。


 上記について語られている今週の「タイトル未定の予定は未定!」とてもいい回なので、聴ける環境にある方はおすすめです。まだ聴けます。
(⇓ 未定ラジオを聴くため関東住み筆者は今年からradiko課金しました)

サウンド面について

 『泡沫』の音楽的な要素について触れていきましょう。
 曲調としてはミディアムバラード、ピアノとアコースティックギターが爽やかに鳴る耳心地のいいサウンドです。

 作詞はおなじみの青葉紘季さん、作編曲は青葉さんと大山聖福さんの共作で、この組み合わせは『群青』『春霞』『空』『水流(未リリース)』が過去曲で上げられますね。
 発足初期は意外にも作詞面では青葉さんに依頼することが少なかったとのことで、『踏切』『綺麗事』『花』『灯火』などは作編曲は青葉・大山コンビですが作詞者が別の方だったりします。また、『薄明光線』『溺れる』『最適解』のような「作詞が青葉さんともう一方(ついまさんとかotsukuriファミリーの青葉祐五さんだったり)」パターンもあったり。


 メンバー歌唱について触れていくと、これまでの楽曲は「スキルフルな冨樫・阿部両名にほかメンバーが付いていきつつ各々の個性を出していく」という座組が自然と構成されていたように思えますが、
 この『泡沫』は「5人の女性ボーカルグループ」として調和がとれたバランスで聴きやすい曲だと感じました。これは穏やかな曲調も相まっての効果とも思いますが、純粋に新加入メンバーの2人が実力をつけた結果、グループ全体が非常に高いレベルで「いい歌」を構築できていると、自信を持って私は言い切りたいと思います。  
 各メンバーがソロパートを任されるに恥じないスキルを持ち、それを各々が出したあと、サビ冒頭のハモリがきれいに映えるんですよね。綺麗。

 そして「場は作ったからあと点取って当たり前ね」みたいな場面で当然のようにきっちりゴール決めてくる落ちサビの冨樫優花さん(かわいい)(眼鏡姿もかわいい)、一点差1,3塁とかいう場面でマウンド出されたった2球でクロージングするドジャースの佐々木朗希かと思いました(例えをサッカーと野球で混ぜるな)(ぶれるだろ)。

 また、この楽曲でハイライトとなるのは間違いなく谷乃愛さんが丸々ソロを任されているDメロパートでしょう。『空』のロングトーン抜擢もそうでしたが、アイドルとしてのあざとかわいいキャラでありつつ「めっちゃ歌がうまくなって信頼を得て楽曲内での位置を勝ち取る」というストロングスタイル極まりない形で直近の楽曲において出しろを増やしています。
 姉御分である阿部さんのライブ活動お休みにより、谷さんが彼女の分まで、とギアを上げ堂々と声を張り上げていた印象が強い今夏でしたが、先日実施された、阿部さんの復帰初戦である木曜定期ライブでは頼れるお姉さんの帰還に安心していたのか楽しそうに解放されたようなアイドルボイスで要所を歌っていたのが印象的でした。

 話をDメロに戻し、彼女の歌唱は激動の夏を経たうえで「ライブアイドル:谷乃愛」としてまた一つ着実にステージを上げたように感じました。等身大、かつ堂々と自身が歩んできた道を歌という形で表現しているような。「誰か」ではなく「谷乃愛」としてのかわいい、儚い、ストイックさがこの20秒と少しに詰まっていると感じます。

 そしてこのブリッジからの落ちサビまでのコード展開が「王道、でもそれが欲しい」すぎて最高なんですよね。『泡沫』のキーはA♭だと思うのですが、A♭⇒E♭/G⇒F♯⇒F(コードは間違ってたらごめんなさいの精神でいきますね)トニックから♭7を経由し、以後B♭m~E♭まで徐々に焦らしつつ階段でドミナントに行く、しかもこれがアコギコード弾きというのがロック色強い進行とはいえ余りにも無骨すぎる。
 最高で言うとBメロ「乾杯しようよ」のA♭⇒E♭⇒Fmはこれ弾き語りしたくてたまんないですね。このワードで進行の気持ちよさが来るのは楽曲テーマとの相補性も兼ね(3つのジョッキで乾杯して音を立てるみたいな)ギター経験者は共感してくれるかも。

 楽曲全体としては、転調もなくキーA♭のオーソドックスなダイアトニックで折り目正しく進んでいるのかな、というのが初聴の印象でしたが、聴き込むと先述のDメロは四和音の比重が大きくなったり、サビメロが何気にシンコペ多かったりでエアギターしながら「あれ、この曲実は歌いながら弾くのむずくない?」と思ったりしました。
 コード自体も掘ればスケールじゃなくて分数とかaugとかのパターンありそうですが、私の知識ではここら辺までなので有識者さんたすけて。


未定のうたに、題名を

 冒頭~序盤でも触れましたが、『泡沫』の歌詞について今度は私なりの好きポイントを。

 『泡沫』という言葉を調べると、こういった意味があると出てきました。

うた‐かた【泡=沫】
1 水面に浮かぶ泡あわ。「泡沫の如く消える」
2 はかなく消えやすいもののたとえ。「泡沫の恋」「泡沫の夢」

泡沫(ウタカタ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

 過ぎていく日々、その中で頑張っている「みんな」にはそれぞれの生活があり、それぞれの清濁もある。そこで巡り合えた人がいて、それは一期一会のひとときかもしれない。
 泡のようにあっという間に消えていく日々だからこそ、この瞬間を抱きしめよう。だって、出会えたことが奇跡なのだから、それを愛せるような人になろう。そういった人間賛歌の詞です。

 その上で、タイアップ要素含め違和感なく「乾杯」というワードを使っていたり、2サビから意図的にワードだけ抽出すると「ほろ苦い」「甘いひととき」「かき混ぜて」「泡のように消えてしまう前に」「グッとせーのでさあ飲み干そう」もうこんなんお酒じゃないですか。一杯どころか流れでもう三杯くらいいくじゃないですか。
 「タイトル未定」の楽曲としても成立し「ワカコ酒」タイアップとしても寄り添っているこのバランスが、とても品があると感じました。

 また、自分がとても気にいっているフレーズはこれで。

また会えるかな?
会えないかもな
それでも 出会えたことが奇跡だ

タイトル未定『泡沫』より

 過去曲で言うと、
 『にたものどうし』の「にたものどうし ねえそうじゃなくても ここまで来れたね そういうことだよね」に近いものを感じたのです。

 単にポジティブ一辺倒ではなく、希望的観測や不安を想ったうえで「違うかもしれない」「そうあってほしくないけど、そうなるかもしれない」という、一度詞のなかで「振り向く」ことで歌を届ける対象の視座を広げられるんですよね。このクッションがあることで、次に控えるワードがこれ以上なく説得力を増し、タイトル未定の楽曲は輝く気がするのです。


 そしてもう一つ、私がこの『泡沫』をはじめとしたタイトル未定の楽曲について強く感じたことを最後に記してこのnoteを締めたいと思います。

 『泡沫』の前にリリースされた『余白』も含め特に今年、2025年の活動で感じたこと。 
 タイトル未定の音楽活動、「"いつか必ず来る終わり"に対して、丁寧に名前を付けている」ような気がするんです。

 『泡沫』については、泡のように消えていく日々へ。
 『余白』では、二人でともに過ごした季節の終わりを。

 その気付きを経て他の楽曲を振り返ると、
 『蜃気楼』『夏のオレンジ』は夏の終わりに寄せて、『風花』は君と過ごす初めての冬について、まさに名をつける曲。

 『栞』『青春群像』は曲名通り、いつか振り返ってそう呼ばれる青春としての恋だったり、夢だったり。

 『春霞』は卒業された川本さんソングといって過言ではないと思います。花びらに想いを乗せて背中合わせで、せーので歩き出そう。その「さようなら」へ。
 『灯火』はこれまた川本さん在籍時ラストソングとして披露されたことがあり。一度きりの人生、迷ったら照らしてね、一緒に笑ったり泣いたりよろしくね。これからも同じ季節を巡って歩こうね。そんなメッセージ性を。

 今年の楽曲から逆算して着想に至ったものなので、勿論すべての楽曲がそうであるとは言わないですが、「タイトル未定」という何者でもない(つまり、何者にでもなれる)というコンセプトを活かして、今年は特にあらゆる文脈を抜きにして「終わりのあるもの」「儚く、ぼやけているもの」に対して題名を付けていた楽曲活動だったのではないかな、とも思います。古参のファンからは解釈違いとか言われちゃうかもですが(むしろ、みなさんのこうだと思うがありましたら是非お寄せください!)。


 以上、私が一推しのアイドルグループ「タイトル未定」の新曲『泡沫』感想文でした。いい曲なので、広まればいいなと思っています。
 すてきな泡沫の唄が、あなたに届きますように。

 それではまた、次の記事で。

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