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サッカーは「ボールゲーム」ではない――高校までサッカーをやっていた私が、50代になってようやく見え始めたもの



私は高校までサッカーをやっていた。

決して上手い選手ではなかった。それでも、自分ではサッカーをやっているつもりだった。

ところが今になって振り返ると、当時の私はボールしか見えていなかった。

目の前のボールを追う。ボールを持ったら、パスを出すか、ドリブルするかを考える。味方がボールを持てば、次は自分のところに来るかもしれないと思って待つ。

とにかく視界が狭かった。

味方がなぜそこへ動いたのか。相手がなぜ中央を閉めたのか。ボールを持っていない選手が、なぜ数メートルだけポジションを変えたのか。

そこまで見えていなかった。

そんな私が、

「サッカーって、すげーな」

と思った瞬間がある。

トヨタスタジアムのバックスタンド、そのど真ん中の席でヴィッセル神戸の試合を見たときだった。

目の前にいたのは、イニエスタと山口蛍だった。

バックスタンドの中央から見えたもの

テレビ中継では、基本的にボールの周辺が映される。

しかし、バックスタンドの中央から見ると違う。

ピッチ全体が見える。

ボールから遠い場所にいる選手も見える。

最終ラインの位置も、選手同士の距離も、誰がどこのスペースを埋めているのかも見える。

そこでイニエスタと山口蛍を見て、驚いた。

ボールを持っている時間だけがサッカーではなかった。

むしろ、ボールを持っていない時間に何をしているのかが重要だった。

数メートル動く。

立つ場所を変える。

相手を引き付ける。

味方のためにパスコースを作る。

危険なスペースを先に埋める。

次にボールが来る場所を予測して動く。

ボールだけを見ていたら、こうしたプレーの多くは見えない。

私は高校までサッカーをやっていたのに、そのとき初めて、

「自分はサッカーのほんの一部分しか見ていなかったのではないか」

と思った。

「ボールから目を離す」では少し違う

最近、AIを使って初心者向けのサッカー戦術図解を作っている。

最初は、

ボールから目を離そう

最初は、

ボールから目を離そう

というテーマで作っていた。

しかし、図解を一つずつ精査していくと、少し違うことに気付いた。

ボールを見なくていいわけではない。

必要なのは、

ボールとスペースを往復して見ること

なのだと思う。

ボールを見る。

次に、周囲を見る。

誰が動いたのか。

どこにスペースができたのか。

守備のラインはどう動いたのか。

そして、またボールを見る。

この視線の往復ができるようになると、サッカーはまったく違うゲームに見えてくる。

フォーメーションは「記念写真」にすぎない

テレビ中継では試合前に、

「今日は4-4-2です」

「3-4-2-1です」

とフォーメーションが紹介される。

しかし、試合が始まれば、その数字はすぐに動き出す。

ボランチが最終ラインまで下りる。

GKもビルドアップに参加する。

サイドの選手が高い位置を取る。

守備になれば全員が戻り、5バックになる。

攻撃と守備で形は変わる。

同じ攻撃の中でも、ボールの位置によって配置は変わる。

だから、

フォーメーションは静止画であり、戦術は動画である。

4-4-2という数字を覚えただけでは、実際にピッチで何が起きているのかは分からない。

サッカーはスペースを奪い合うゲームだった

戦術を勉強するようになって、ようやく理解できるようになったことがある。

攻撃側はスペースを作ろうとする。

守備側はスペースを消そうとする。

片方のサイドへ人数を集めれば、反対側が空く。

前からプレスをかければ、その背後にはスペースが生まれる。

誰かが動けば、別の場所が空く。

誰かがそのスペースを埋めれば、また別の場所が空く。

サッカーとは、ボールを中心に22人が動き続けるだけのゲームではない。

22人が、限られたピッチの中で時間とスペースを奪い合うゲームなのだ。

だから、ゴールだけを集めたハイライトと、90分の試合を見ることでは、得られるものがまったく違う。

ゴールは「結果」だ。

90分を見ると、その結果が生まれるまでの「構造」が見えてくる。

AIで図解を作って分かったこと

今回、AIを使ってサッカー戦術の図解を作ってみた。

驚いた。

初心者向けの教材として、かなりそれらしいものが短時間で出来上がる。

しかし、よく見るとハルシネーションもある。

バイタルエリアの扱い。

4-4-2と4-3-3の噛み合わせ。

可変システム。

GKを含めたビルドアップ。

一見すると正しそうでも、細かく見ると違和感がある。

だから、もう一度戦術書を読み直し、試合映像を見ながら、一つずつ精査してみようと思っている。

AIに全部任せるのではない。

AIに図解してもらい、人間が「本当にそうなのか」と問い直す。

その作業自体が、私にとってサッカーをもう一度勉強することになっている。

高校までサッカーをやっていた。

それでも、当時の私はボールしか見えていなかった。

そして何十年も経って、トヨタスタジアムのバックスタンドの中央でイニエスタと山口蛍を見た。

そこで初めて、

「サッカーって、こんなにすごいスポーツだったのか」

と思った。

今もまだ、全部が見えているわけではない。

むしろ、知れば知るほど見えていなかったものが増えていく。

だから面白い。

ボールだけを追うのをやめるのではない。

ボールとスペースを往復して見る。

そこから、私のサッカー観戦はもう一度始まった。

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