見出し画像

詩的随筆_音律詩人のFermata #9 噂の古典副業① feat.国語便覧

概要

観察対象:古典娯楽、武士
貴族の力は衰え、武士が力をつけるようになったため
文化の担い手が大きく変わる


本文

貴族から武士へ 権力の重心が移った
その結果として完成した時代を江戸時代という
権力の移動があるということは 文化の担い手が変わるということ
その移動は 文化の担い手の交代でもある
将軍が変われば 政治が変わるように
担い手が変われば 文化が変わる

武士という職業は いわば貴族の雇っていた警備員のようなもの
江戸時代は比較的平和だった
平和ということは 警備員として暇ということ
暇になると 副業を始める

副業一覧
・寺子屋の師匠 → 塾の先生
・剣術の師範 → 剣道の先生
・傘張り
・提灯づくり
・金魚や鈴虫などの飼育
・植物の栽培
・職業作家
などなど

退屈なのかと言いたいくらい 平和な職業しかない
まあ、実質平和なのだが

参考にしている文献には 植物の栽培と職業作家について詳細が書かれている
武士の副業を覗いてみよう

まず 植物の栽培について

今の新宿区大久保あたりに組屋敷のあった、鉄砲組百人隊の同心どうしん(下級役人)たちはツツジの栽培に成功し、のちに『江戸名所図会ずえ』に紹介されるほどの名所になった。

第一学習社:新訂総合国語便覧

まず 江戸名所図会という観光ガイドブックが存在している
このガイドブックは「南総里見八犬伝」の作者である滝沢馬琴(曲亭馬琴)は以下のように評したという

江戸名所図会はその功、編者は四分にしてその妙は画にあり
【現代語訳:この本の良さの決め手は絵。編纂へんさんの手柄は四割くらいで、残りは絵が持っていってる】

東京都立図書館デジタル

というくらい 絵がすごい
該当するページを覗いてみよう


出典:東京都立図書館デジタルアーカイブ(TOKYOアーカイブ)
江戸名所図会 第4巻(挿図「大久保の映山紅えいさんこう
所蔵:東京都立中央図書館(部分・トリミング) 参照日:2026-02-07
※画像のリンク先:該当ページ

これだけ書き込みがえげつないなら
そりゃあ馬琴が高評価するのもうなづける

しかもこれだけ保存状態がいいのもすごい
東京都立図書館で保管されるまで 災害がなかったとはいえないはずなのに
あまりにも美しく保存されている

この映山紅えいさんこうという植物はツツジの一種である
ツツジの栽培はとにかく困難を極める
もともと模様がきれいな種類でも 育てているうちに模様が変わって
ただの色になったり 模様がなくなったりすることがあるくらい
繊細な花だ

その努力をたった一行で国語便覧は終わらせてしまう
他の情報をもっともっと入れなければならないから
絶対 天国で
「せめて2~3行くらい書いてよ🥲🥲」
って思ってますって

たった一行のために削がれた情報を探す
これもまたロマンと呼ぶのだろう


おわりに

参考文献
 ☆新訂総合国語便覧/第一学習社
 ☆Wikipedia
  江戸名所図会 曲亭馬琴 サツキ(映山紅)
 ☆東京都立図書館デジタルアーカイブ(TOKYOアーカイブ)
  『江戸名所図会』第1巻及び第4巻

 日本人はやはり、表現において外国諸国とはどこか一線を画したものが存在していると思う。
 オノマトペ、擬人化、擬音語——数えればきっときりがないだろう。「どんぶらこ」だってよく考えてみればおかしな言葉なのに、大抵の日本人は桃が流れてくるとイメージが湧く。
 その繊細な視覚と聴覚が、現代まで引き継がれてきた。それをどこに活用するかは、きっと我々次第なのだろう。

※本記事は2026年2月18日に有料化予定です。

いいなと思ったら応援しよう!