具Kの告白
鍋の具はたまたまだったのだと思う。他にも僕の使い道はあったはずだ。
僕はこの冷蔵庫の仲間入りをしてから「今日か」「明日か」と選ばれる日をずっと待ちわびていた。毎日、毎日、豆腐、卵、にんじん、しいたけ、鶏肉、長ネギ、プリン、次々と得意げに外に連れ去られる仲間たちを見送った。
時には僕より遅く来て一瞬でいなくなるヤツもいた。まぁ、ヤツには生クリームがのっていたから仕方が無い。僕は気が長いからね。いいんだよ、別に。3か月くらいは待てるから。
気長に構えようと決めた僕に、その日は唐突にやってきた。
「ダイエット中だけど、もうちょっとボリュームが欲しいのよね。」
彼女はそう言うと僕を抱き上げた。いよいよだ、いよいよなのだ。嬉しくて、嬉しくて・・・憧れの君に絶対美味しいひと時を贈ろうと意気込みすぎてプルプル震えたほどだったよ。
けれど次の瞬間、
その震えは恐怖のそれへと変わった。
僕は無造作に鍋の中に放り込まれたんだ。
僕は叫ぶ。
嫌だ、やめてくれ、駄目なんだ。それじゃ、駄目なんだ。せめて軽く洗って、できれば灰汁抜きしてくれ。こんなままじゃ本当の僕を伝えられない。
ああ、君があまり料理が得意じゃないのは知ってるよ。それでも頑張っていたのも知ってるよ。昨日のボケナスには動画を見ながら下ごしらえをしてたじゃないか。なのにどうしてだよ。何故なんだよ。僕のどこがいけなかったんだ。
しかも「鍋」だなんて。
ねぇ、知ってるかい?鍋の具の気持ち。
人気者はいい。けど、僕のような脇役には地獄のような時間だよ。一人分ずつ皿に乗っているなら残されはしないよ。基本僕には癖がないからね。
けど、何故か「鍋」になった途端に人気者ばかりが救われるんだ。繰り返し、何度も、何度も、選ばれない瞬間を味わうんだ。
ねぇ、わかるかい?
じりじりと時間をかけて、救われない僕は底に沈むしかないんだ。
味も心も浸みシミだよ。
さぁ、そろそろ時間だ。もういくよ。
人参さんも大変だったね。崩れてそんなに小さくなったんじゃね。
何だか眠くなってきたよ。
ああ、遠くで彼女が友達と話してるのが聞こえる。
「どうする?これ?」
「もう残ってないでしょ?ダシも少ないし」
「あ、残ってるそれ捨てないで」
「え?どうするの?」
「軽く炒めて七味かけたら、ほい、おつまみの出来上がり」
「ほんとだ、味浸みてて最高!!!」
<了>
こちらの企画に参加です。
シロクマ部長、いつもありがとうございます。
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ペンギンのえさ