炭酸水とたい焼きとカセットテープ|映画『夜明けのすべて』感想文
映画『夜明けのすべて』を観に行きました。昨年2月の劇場公開から1年以上過ぎてますが、「映画をみる会」の企画で上映されたのです。

※カセットテープはイメージです。
わたしは年々出不精になり、このところライブや映画にほとんど行ってません。今回は久々に足を運んで映画鑑賞したからテンション上がってます。
「#映画感想文を書いてみませんか?」の募集を知って、この機会に応募しようと思い立ったわけです。でもすでに多くの方々がこの映画や原作について感想を書かれているではありませんか。
そこで視点を変えて、わたしなりに“ファンではない”立場から書いてみましょう。
わたしを取り囲む状況について少々
妻は瀬尾まいこさんにハマっていて、すでに原作を読んでいます。娘は松村北斗のファンで映画封切り早々見たらしい。市民会館で上映されるのだったら、観に行くべきよ。ということでチケットを購入したのです。つまりわたしは原作も知らないし、松村北斗も知らない。あまり関心を持ってないけど観に行ったというのが正直なところです。遅まきながら、この記事を書くために調べてようやく松村北斗と上白石萌音は朝ドラ『カムカムエヴリバディ』で共演していたことを知ったほどの無関心振り。
でも、そんなわたしでさえいい時間を過ごせました。見終えてから穏やかな気持ちになれる。そんな映画でした。
※これで感想が終わったわけではありません。本編はこれから。
事情を汲む
中小企業「栗田金属」で働く藤沢美沙(上白石萌音)は「PMS(月経前症候群)」。最近転職してきた山添孝俊(松村北斗)は「パニック障害」です。
医学や心理学など専門的なことは置いといて、自己流で進めます。
美紗は自分の常識からずれたことを我慢していると苛立ちが募って爆発してしまう。孝俊は突然不安に襲われて呼吸困難などの症状が現われる。という悩みを抱えています。
栗田金属の社員はたぶん5~6名。社長の栗田和夫(光石研)をはじめ皆が二人の事情を汲んで接しているようでした。
コミュニケーションを取る上で言葉に出さず「察してくれるはず」というのはよろしくないとされます。「察する」「阿吽の呼吸」などは日本人の悪いところ。ちゃんと言葉にして伝えましょう。なんて物の本に書いてありました。
でも栗田金属では社員たちが「事情を汲む」姿勢で二人を受け容れて、やがてそれぞれのペースを掴んでいきます。
事情を汲む
他人の置かれた状況や気持ちを理解し、それに基づいて行動や判断をすることを意味します。具体的には、相手の言葉や態度だけでなく、その背景にある事情や感情を推察し、考慮に入れることを指します。
言外に察する
言葉ではっきりと表現されていない相手の気持ちや意図を、言葉の裏側や雰囲気、態度などから推測して理解することを意味します。はっきりとした言葉で伝えられていない部分を、周囲の状況や相手の表情、言葉の選び方などから読み取ることを指します。
つまり会社や周囲の人たちが事情を汲んで「ハッキリ」と問いただすことなく言外に察しながら見守ってくれる環境にあったのは幸いでした。
きっかけと変化
序盤でのこと。新顔の孝俊が仕事中にペットボトルで炭酸水を飲むたびにキャップを開けて「プシュッ」って音を出してました。
何度かやっていると堪えかねた美紗が「炭酸飲まないでくれます」ってキレ気味に注意します。
これわかりますわ~。わたしだって仕事中に「プシュ」ってやられたらイラッとしますもん。だから美紗に共感しました。
感心したのは、孝俊がそれ以来、炭酸水ではなくミネラルウォーターを飲むようになったこと。
彼はそれまで無愛想で我が道を行くという感じだったので、「ちゃんとわかるんだ。人の気持ち」と意外でした。
やがて美紗は孝俊に対して世話を焼いたり指摘するなどして距離を縮めます。一方の孝俊も美紗がPMSだと知って「発作」が起きる前に察知して軽減しようと努力します。
事情を抱えた二人だけが、ハッキリと言葉にしてお互いに助け合い励まし合うことができたと言えるでしょう。
とくに孝俊が心境の変化を形にしたのが「たい焼き」でした。
それまで美紗が会社の皆に差し入れやお土産としてお菓子を買ってきても受け取らなかった孝俊。ところが終盤では皆に「たい焼き」を差し入れて喜ばせたのです。
姿なき名演技
もう一つ、孝俊に大きな影響を与えたのがカセットテープでした。栗田社長の弟・康夫が生前に吹き込んでいたプラネタリウムの案内用音声。
兄・栗田和夫(社長)によると康夫は自ら命を絶ったといいます。遺したのがカセットテープでした。「夜についてのメモ」という音声です。
「太陽が西の空に沈んだ。って思わず言っちゃいましたけど太陽は沈みません…(動いてるのは地球の方なのに。自分たちは動いてないって、おこがましいと思いませんか…)」と優しい口調で語りかけるそのテープを、孝俊は一人で夜を徹して聞きながら笑っていたそう。
弟・康夫役として声のみで出演したのは斉藤陽一郎。(光石研とは『サッド ヴァケイション』(2007年)で共演した間柄だとか)
カセットテープから流れる声は温かく、星空そして宇宙を語るのにぴったり。孝俊もずいぶん心の栄養をもらえたようです。
ちなみにboidラジオ「Voice Of Ghost」で『夜明けのすべて』を特集した回に、「陽一郎を探せ!」を募集していました。
三宅唱監督『夜明けのすべて』に声のみで出演している斉藤陽一郎が実はこの映画のどこかに映っている(写真ではなく)という話。
いったいどこに映っているのか、見事的中させた方の中から抽選で1名の方に斉藤陽一郎からプレゼント差し上げます。
SNSでは映画を見た人から「エンドロールに社長の弟さんおられた。ちょこんと座って皆んなが和気藹々としてる風景を見てた…」というつぶやきも見受けられました。
エンドロール
エンドロールの背景は栗田金属の社員たちが外で談笑したりキャッチボールして過ごす場面。孝俊は自転車にまたがって「コンビニに行ってきますけどぉ」と皆に声をかけます。
自然体な感じはもしかしてアドリブで撮ったのではないでしょうか。和気藹々な雰囲気は孝俊もすっかり馴染んだことを思わせました。
これが「夜明けのすべて」ですと締めるのにふさわしいエンドロールでした。
まとめ
まとめというか補足です。
そういう経緯で映画を見たため、わたしにとって松村北斗の第一印象は“山添孝俊”になりました。
松村が男性アイドルグループSixTONESのメンバーであることよりも先に、『夜明けのすべて』の山添くんというイメージがインプットされたわけです。
わたしは日曜夜9時からバラエティ番組『Golden SixTONES』を見ることが多く、「スノーマンもだけど、ストーンズもなかなか個性的なメンバーが揃ってていいね」などと好き勝手に評して楽しんでます。
ジェシーをはじめ森本慎太郎、田中樹、京本大我に注目していたのですが、ふと目に止まった不器用で的外れなことばかりやって騒いでるヤツ。
「えー!これがあの松村北斗なの?」
“山添孝俊”とのギャップに驚き、笑い、そして唸りました。
「演技力すげえな」って。
瀬尾まいこさんや『夜明けのすべて』ファン、なにより松村北斗ファンの方々には異論もあるかと思います。
そんなわたしの映画感想文をお読みいただきありがとうございました。
【参考映像】
【参考資料など】
・boidラジオ「Voice Of Ghost」|「陽一郎を探せ!」募集開始とプレゼントのお知らせ
・『夜明けのすべて』を観賞した方のポストより
夜明けのすべて観て来た。3度目に気が付いた。エンドロールに社長の弟さんおられた😭ちょこんと座って皆んなが和気藹々としてる風景を見てた。
— 水菜 (@hokuhoku2418) February 15, 2024
この映画の良さはエンドロールも含めてだなとしみじみ。あのシーンがあるから余計栗田科学がリアルに思える。
#映画夜明けのすべて出会えてよかった
