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ジョン・レノンに捧ぐ|天国での快談「その呼び方はやめてえな」他

 地球上はそろそろクリスマスシーズンやろなぁ。
 ここじゃ、自分が祝いたいことを祝いたいときに祝うから気にせえへんけど。
 日本でシャンパン抜いて、皆で歌って騒いだころが懐かしいわ。

 こうやってユートピア公園をのんびり散歩するのもいいけど、たまには「メリークリスマス」とか叫びとうなる。

 おやっ、公園の中を流れるガンジー川の岸辺で宙に浮きながら日向ぼっこしてるの、ジョン・レノンの旦那やないかい。

 今日というタイミングで会えることなんてそうそうおまへんで。ちゃんと、あいさつしとこ。

「Hi!Mr. Lennon!ナイスミーチュー」

「やあ!オサム氏じゃないか、久しぶりだね」

「あのな、こっちから声かけたのになんやけど。その呼び方はやめてえな」

「そうかい。だって君は石田長生(いしだおさむ)だろう。オサム氏じゃないか」

「そやけど、オサムシって。なんか昆虫みたいやんけ」

 ボクが不服そうに理由を話したら、ジョンは人差し指を立てて舌打ちする。

「チッチッチ。知らないのかい。マンガの神様と言われた手塚治虫氏は昆虫のオサムシが好きで、ペンネームにしたっていうじゃないか。全然不満がることはないよ」

「さよかぁ、もし手塚先生に会えたら聞いてみるわ」

「それよりオサム。あまり言いたくないけど、君のあいさつもどうかと思うよ。『Mr. Lennon』ってダコタ・ハウス前であの男が声をかけてきたときのセリフじゃん。ドキッとしたぜ」

 ボクはジョンに言われてようやく気がついた。

「あーーー!なんてこったい。ボクとしたことが。エライすんまへん」

「いいよいいよ、そんなに恐縮しなくても。ほら、タイミングがタイミングだからさ。ギョッとしたわけさ」

「ジョンの命日だからあいさつしよう思て声をかけたのに。やらかしてもうたわ」

 頭をかきかき額に汗をにじませるボクを見てジョンは優しく慰めてくれた。

「そうだよ。12月8日はボクの命日でもあり、ここにやって来た記念日でもあるんだ。近ごろは忘れられがちだけど覚えていてくれたんだね。サンキュー・オサム」

「忘れへんよ!ボクは小学生のときにビートルズの最初の主演映画『A Hard Day's Night』を見て“ぜったいこんな風になる”って決心してギターを弾きはじめたんやし」

「オーマイ!あの映画で。そっか、それは責任重大だな。でも君を見たところ悪い方向には影響しなかったようだね」

「もちろん。苦労もしたけど、プロのギタリストになれたし、歌も歌った。海外のアーティストたちとも共演出来て、これからやて思うた矢先。あなたの訃報やろ。ショックとかいう言葉じゃ表せんほど落ち込んだよ。少しでもその気持ちを届けたいと願って、僭越ながら自分でアレンジして『HELP!』を日本語で歌うてるねん」

 ボクがそう語ると、ジョンは目を輝かして明かしてくれた。

「いいねぇ。『HELP!』は本当に好きな曲なんだ。ボクが『♪助けてくれ~』って叫んでるだけの曲で、しかもでっちあげとか、まやかしじゃない。あの頃のボクの心境を歌った真実なんだ。歌詞のよさは作った当時から色あせてないし、何も変わってない。オサムはそれを選んでくれたんだね。サイコーだよ!」

 ジョンが興奮気味に話してくれるのは嬉しかったけど、日本語歌詞はかなりアレンジしてたさかいちょっと焦った。
 ちょうどそのとき、どこからか声がした。見ればクルセイダーズのジョー・サンプルとウィルトン・フェルダーやないけ。

「やあお二人さん。なんか楽しそうだな」
「ボクらも仲間に入れてくれないか」

 ボクはクルセイダーズが来日したときにツァーの前座を務めたことを思い出したよ。ジョンと彼らの接点はよく知らんけど。ここじゃそんなの関係ない。

「もちろんさ。それにしても名だたるミュージシャンが集まってきたね。普段は穏やかな感じだけど、たまには“音楽フェス”でもやっちゃうかい!?」

 ジョンが声を上げると、クルセイダーズの二人もノリノリで続ける。やっぱ陽気やねん。

「そういえば、ザ・フーのベーシストを見かけたぞ」
「ああ、ジョン・エントウィッスルだろ。彼もいいプレイをするよね」

 ボクも僭越ながら話しに加わりたい。そう思たら関西人やし、そこは黙っておれんわけや。

「ドラムだったらローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツとかええんちゃう。YMOで活躍した高橋幸宏も近ごろ来られましてん」

「フェスをやるわけだし、参加アーティストは多いほど盛り上がるさ」

 ジョンがうなずいてくれたそのとき。別の声がひびく。

「おっと。もちろんボクも入れてくれるだろうな。シタールだってスライドギターだって出来るぞ」

「おーい。ジョージじゃないか。もちろんだよ」

 ジョンが両手を広げてハグしながら迎え入れた。

 2025年のクリスマスシーズンは空の上も楽しくなりそうやね。
 ほなまた。


-了-



12月8日はジョン・レノンの命日ということで、勝手ながら創作のショートストーリーを書いてみました。

ここからは、文中に出てきた楽曲『HELP!』について補足したいと思います。

ジョンが好きなビートルズの楽曲は

ジョン・レノンは1970年12月、音楽雑誌『ローリング・ストーン』の共同創設者兼元発行者であるヤン・ウェナーのインタビューを受けてこう話しています。

ヤン「これまでの自分の作品で一番いいと思えるのは?」
ジョン「……どれが最高なんて決められないって。『アイアム・ザ・ウォルラス』『ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー』『ヘルプ』『イン・マイ・ライフ』は気に入ってるけどね」
ヤン「なぜ『ヘルプ』なんですか」
ジョン「本気で作ったから――真実だからさ。歌詞のよさが作った当時から色あせてない。何も変わってないんだ。あの頃の僕もこの境地に達してたのがありありと見てとれて、安心するんだよ。あれって僕が♪助けてくれ~って叫んでるだけの曲で、しかもでっちあげとか、まやかしじゃない。本気なんだ……」

『ロッキンオン1998年12月号「70年12月ヤン・ウェナー・インタヴュー」』より


このインタビューからジョン・レノンにとって『HELP!』は思い入れが深い楽曲であることがわかります。

『HELP!』の歌詞には「Help me if you can, I’m feeling down」や「Help me get my feet back on the ground」など「Help me」と救いを求める内容に思えます。

石田長生版『HELP!』について

石田長生さんはジョン・レノンの訃報に接して衝撃を受け、その心情を歌に込めました。

歌のタイトルは『HELP!』ですがメロディーも歌詞もかなりアレンジしています。

歌詞の一部を見てみると「Won't you please.please.Help yourself」と歌ってるんですよね。「Help me」ではなく「Help yourself」なんです。

歌の内容からすると「Help yourself」は「自分を救ってあげて」という意味かと思うのですが、正確にはどうなのかネットで調べました。

するとほとんどの記事で『「Help yourself」はパーティなどで食べ物・飲み物を取ってもらうとき「ご自由にどうぞ」「遠慮なくどうぞ」という意味で使う』と解説しているではありませんか。

『HELP!』の脈略からして「ご自由にどうぞ」では納得できません。そこでさらに調べたところ、近い感じの解釈がありました。

以前、海外の美術館を訪れたとき、 “Help yourself to inspiration” (ひらめきを、どうぞご自由にお持ちください) と書かれた小さなバスケットを見かけたことがあります。中には、芸術家のことばがプリントされ、来館者が手に取って持ち帰ることができるようになっていました。観る人もまた作品の一部として参加し、関わることができるという趣向です。

芸術家、音楽家、平和運動活動家であるオノ・ヨーコの作品《カット・ピース》((1964年) もまた、観客の参加によって完成する作品です。彼女が座る前で、観客はハサミを使い、彼女の衣服を少しずつ切り取っていきます。その行為は、女性の身体が社会の中でどのように見られ、扱われているのかを浮かび上がらせると同時に、「切る」ことを託された人の内面や責任を問いかけます。そして、言葉を使わないやりとりで、私たちにコミュニケーションの在り方を深く考えさせるものでもあります。

オノ・ヨーコは、この作品を「世界平和への希望」と語りました。彼女の作品は、関わるという勇気、自ら選び取る意志、そして他者への思いやりを、私たちに問いかけています。

“Help yourself.”(ご自由にどうぞ)という言葉には、優しさや勇気、そして人とのつながりなど、思っていた以上にたくさんの意味が込められているのだと、あらためて感じました。

『サライ:趣味・教養|“Help yourself.”の意味は?|「あなた自身を助ける」ってどういうこと?【英語の泉】』より

石田長生さんは2015年7月8日、食道がんとの闘病の末に亡くなりました。「Help yourself」について真意を聞いてみたいところですが、そうもいきません。でもきっと、わたしが共感した解釈を知ったら「それでいいねん」と微笑んでくれることでしょう。

まとめ

ジョン・レノンを偲ぶ歌や文章は数えきれません。彼が世界中の人々に愛されていることの証でもあります。

わたしも毎年、12月8日にはジョンの曲を聴き、ときには記事を投稿しています。そんな中、何よりその気持ちを代弁しているのは石田長生さんが歌う『HELP!』ではないかと思い取り上げさせていただきました。

最後に関連動画を紹介しています。ジョン・レノンと石田長生さんを偲びながらご視聴ください。

長文におつきあいいただき、ありがとうございました。

【関連動画】

・The Beatles『HELP!』(和訳つき)

・石田長生カバーバージョン『HELP!』

・石田長生 『HELP!』ライブバージョン

・石田長生とクルセイダーズ

・石田長生とビートルズ

・ビートルズ映画『ハード・デイズ・ナイト』(『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』)予告編

【参考資料】

ありがとう、石田長生さん。HELPに助けられました。



手塚治虫「オサムとムサシ」


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※タイトル画像はCopilotに依頼して作成したものです。


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