「不安がある=弱い」って、誰が決めた?
受信箱に、顧客からメッセージが届く。
「大至急でお願いします。」
「今週中に回答いただけますか。」
丁寧語なのに、急ぎの温度だけが残る。
画面の文字は短いのに、指が止まる。
返せる文章はいくつか浮かぶ。
状況も整理できている。次の段取りも見えている。
なのに、送信の手前で一拍、間が空く。
怖いというより、ちゃんと返したい、が先に来る。
いつものスイッチが入る。
“ちゃんとしている文面”を作ろうとする。
落ち着いている感じ、余裕がある感じ、安心させる感じ。
相手の不安を消してあげるような文章。
そしてついでに、自分の不安も消せたらいいのに、と思う。
でも内側は、揺れている。
間違えたらどうしよう。期待を下回ったらどうしよう。
「遅い」と思われたら。信用が落ちたら。次がなくなったら。
不安が消える気配はない。
……ここで、ひとつ聞きたくなる。
「不安がある=弱い」って、誰が決めた?
仕事って、いつの間にか“採点”が始まる
仕事の世界は、結果が見える。
数字、スピード、反応、評価。見えるものが多い。
だからなのか、頭の中に“採点表”ができやすい。
揺れない=強い
迷わない=強い
動じない=強い
不安がある=弱い
戸惑う=弱い
立ち止まる=弱い
この採点表に合わせようとすると、文章の表情が固くなる。
「問題ありません」
「順調に進んでおります」
「対応いたします」
もちろん、必要な場面もある。
でも、それだけで走り続けると、息が詰まる。
不安があることよりも、
“不安がない自分”を演じ続ける方が、しんどい。
揺れていないものなんて、実はない
そもそも、揺れない仕事なんてあるだろうか。
顧客の状況が変わる。社内の優先順位が変わる。締切が変わる。
昨日までの前提が、今日には少し違う顔をしている。
変化がある場所で、変化に反応する。
それって、弱さじゃなくて自然な働きだと思う。
不安って、たぶん“敵”じゃない。
今の負荷、今の責任、今のズレを知らせるセンサーみたいなものだ。
だから、不安が出た瞬間に
「はい、弱い」って判定を出すのは、もったいない。
「安定して不安定」それが標準
最近しっくり来ている言葉がある。
安定して不安定。
不安定がたまに起きるんじゃなくて、
不安定が“安定的にある”。
これ、冷たく聞こえるかもしれない。
でも私は、むしろ救いだと思っている。
「不安定が出る=自分がダメ」
この誤解が外れるから。
揺れるのが当たり前なら、
揺れた瞬間に“失格”にしなくていい。
波があるのが普通なら、
波をゼロにしようとして、自分を責め続けなくていい。
安定して不安定。
案外まともで、案外人間らしい状態なのかもしれない。
強いって、不安がないことじゃない
じゃあ、強さって何なんだろう。
私はこう思う。
強いって、不安がないことじゃない。
不安を抱えたまま、それでも必要な一歩を選べること。
(選べる、というより“進める自分”を残せること。)
不安があるのに、返せる。
揺れているのに、仕事は回せる。
完璧じゃないのに、ちゃんとやれる。
“平気な顔”を作ることが強さじゃなくて、
揺れがある現実を前提にしながら、投げ出さないこと。
その方が、ずっと現実的で、長持ちする強さだと思う。
不安をゼロにする発想を降りる
苦しくなる瞬間って、たぶんここだ。
不安を感じる
→ 不安を消そうとする
→ 消えない
→ 自分を責める
→ 余計に揺れる
このループに入ると、仕事そのものより、心の消耗が大きくなる。
だから私は、ここで降りたい。
不安をゼロにする発想を降りる。
不安はあっていい。
揺れはある。変化もある。
その前提に立った上で、今日の自分に“問い”を置く。
たとえば、これくらいでいい。
いま、守りたいものは何?
今日、削ってはいけないものは何?
この問いがあると、自分が変わる。
例えば返す文章も
“強がりの文章”じゃなくて、“必要な文章”に寄せられる。
相手を安心させるために、無理に立派にならなくていい。
丁寧に状況を伝える。できることを切り分ける。次の一歩を明確にする。
それで十分、届く。
送信ボタンの上で止まっていた指が、少し動く。
揺れがあるままでも、返せる言葉がある。
揺れがあるままでも、進める自分は残っている。
「不安がある=弱い」って、誰が決めた?
少なくとも今日の私は、その採点表を採用しない。
不安があって当たり前。
安定して不安定。
それでも仕事はできる。
それでも、前には進める。
揺れがあるのに、進めている。それがもう、強さだ。
“至急”の文字に反応してしまうのは、弱いからじゃない。
ちゃんと返したい、を背負っているからだと思う。
もし、その揺れが「自分のせいだ」に変わってしまうなら、ここから。
→「『私のせいだ…』その思い込みは、本当に事実なのか?」
不安をゼロにする発想を降りる練習は、ここで続きができます。
→「『これで合ってる?』不安な自分を卒業していく一歩」
一緒に進んでいきましょう。
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