【超短編-猫ファンタジー】星のしずくと均衡の猫
遥か昔、この宇宙が生まれるよりも前。
ひとつの虚無に、ふたつの存在が目覚めた。
ひとつは、創造神の猫・ルミナ。
白の毛並みは星々のきらめきをまとい、足音は命を芽吹かせた。

もうひとつは、破壊神の猫・ノクス。
漆黒の体躯は闇を孕み、その瞳に映ったものはすべて塵へと還った。

ふたりの神猫は出会い、戦った。
銀河を裂き、時を砕く戦いだった。
ルミナは命を育もうとし、ノクスは静寂の美を追い求めた。

だが、永劫の戦いの果て、ふたりは気づく。
創造も破壊も、片方では意味を持たぬことを。

ふたりは尾を絡め、魂を重ね、ひとつの存在へと溶け合った。
こうして生まれたのが――均衡神〈エクウィリス〉。

エクウィリスは、静かに宇宙を紡ぎ始めた。
星をちりばめ、時間を編み、重力に名を与えた。
そうして、最初の世界が生まれた。

そこに生まれたのは、神を祖とする猫たち。
彼らは空中に浮かぶ都市を築き、神殿を建て、均衡神を信仰する文明を生み出した。
「すべては釣り合いの中にある」
それが、彼らの宗教であり、生き方だった。

やがて、その世界にひとりの預言者猫〈セリィ〉が現れた。
彼女は月の光の下で神託を受け、「均衡の乱れ」を予見する。

そして神殿の前に現れたのが――
若き戦士猫〈アウリス〉だった。
まだ幼きその毛並みは、夜明けのように淡く、
その瞳には、破壊も創造も恐れぬ決意が宿っていた。

エクウィリスの声が、彼の魂に囁く。
「均衡は揺らぐ。だが、おまえの中に、すべての答えがある」
アウリスは剣を取り、旅に出る。
神に選ばれし猫として――
命と滅びの狭間で、宇宙を守るために。

