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表銀座縦走路を歩きたい

序章 謎のスイカ教団


日本列島に寒波到来。大阪の最高気温、4℃。うーむ、滝、凍ってるかな?←(寒波が来るたびに「氷瀑しているか、否か?」が真っ先に気になる、末期症状)。
こんなに寒いと、灼熱の太陽が恋しくなる。ジリジリと身体が焦げ、汗が滝のように流れ落ちる。身体はあっという間に干からびて、水を飲んでも満たされない激しい乾き。
そんなとき、目の前にスイカが現れたら……。果汁をたっぷり蓄えた真っ赤な果肉は、もはや暴力的光景だ。今すぐ、頭から果肉の海に突っ込みたい! はぁ、はぁ。フラフラになりながら、配給場所にたどり着く。「す……いか、くださ……い」。

がぶっ!!
なんということだろう。一口かじりついた瞬間、HPが全回復。これは、まさに神の奇跡。

標高2350m。北アルプスの山中で、干からびた登山者にスイカを配り歩く、謎の布教活動が行われているという。まことしやかに囁かれている、この都市伝説。その真相を探るため、長野県安曇野市にあるJR穂高駅からバスに乗り、燕岳(つばくろだけ)の登山口、中房温泉に向かった。
(一部フィクション。けっして、怪しいスイカ教団は出てきませんw)


1章 燃え上がれ、オタク魂

標高2763mの燕岳。白い砂地をまとった、たおやかな山容が美しく、「北アルプスの女王」と呼ばれる山。その稜線にある燕山荘(えんざんそう)は約100年ものあいだ、女王を見守り続ける老舗山小屋。さながら、お嬢様に忠実な老執事って感じかな?←(オタク女子的妄想)
山荘からは、裏銀座の稜線と槍ヶ岳を一望できるし、表銀座縦走路の起点でもあるから、槍様まで歩いて行けちゃう。まさに全アルピニスト、憧れの場所。(ちなみにグーグル先生によると、アルピニスト=高度な登攀技術を兼ね備えた登山者とのこと。ふーん。うるせえ、黙りやがれ)

今回は、燕山荘から表銀座縦走路を歩いて槍ヶ岳へ。そこから西鎌尾根を渡って双六小屋、三俣山荘をめぐる、MAX6泊7日の長旅予定。
私のテント泊登山は、3泊4日で計画することが多い。今回は日数の長さだけでも、かなりハードルが高くなる。「無事に歩き切れるかな?」「バッテリー類の電源は足りる?」「山小屋があるとはいえ、食料は……」などなど、不安なことがてんこ盛り。
それでも歩きたい、表銀座! だって、このルートは漫画「山を渡る」で三多摩大学山岳部が夏合宿で歩いた、燕岳~立山10daysをたどる道。そんなの、そんなの……オマージュ、捧げたいじゃん!
「愛のために、己の魂を全力で燃やし尽くす」。それが、オタクの生きる道。見せてやろうじゃないか、気高き(?)オタク魂ってやつを。


2章 すべての道は、中房温泉に通ず


「山は登山口へのアクセスに始まり、下山口から街へのアクセスで終わる」。山行はアクセス状況に応じて組まないといけないし、ここで失敗すると待ち受けるのは悲劇でしかない。特にバスなんかは、平日祝日、繁忙期、閑散期で運行状況が異なるのがデフォ。運賃の支払い方法の確認も怠るべからず。
燕岳は山の中でもアクセス良好な方だと思うけど、今回の山行は下山口が状況によって何パターンもあるから、下山後に車を回収に行くのは無理。そうなると公共交通機関、一択だ。
さっそく、綿密な計算を練る。下界では、行き当たりばったりで行っちゃうけど、山に限っては計画がすべて。「遭難は、計画段階で起きている!」という、名言もあったり無かったり。

そして、出来上がった登山口までの計画はコレだぁ☆
①京都駅 新幹線(始発6:14)→名古屋駅(6:48着)
②名古屋駅 特急しなの(7:00)→松本駅(9:08着)
③松本駅 JR大糸線(9:20)→穂高駅(9:47着)
④穂高駅 中房温泉行き定期バス(11:10)→中房温泉(12:05着)

この緻密な計画。ポイントは④中房温泉12:05着。
中房温泉登山口の近くにある、有明荘。燕岳登山の前泊、後泊地として人気の宿だ。金銭的にもアレだけど、予約も取りにくい。案の定、宿泊は無理。だったらせめて、昼ご飯食べて、酒飲んで、日帰り温泉入って、憧れの有明荘満喫したーーーい!
その野望を叶えるタイムリミットは、ラストオーダーの14時。そのためには、ぜったいに11:10発のバスに乗る必要がある。
さらに②の特急しなの。次の電車だと、松本駅での乗り換え時間が4分しかない。初めての駅で、重いザックを抱えてホームを移動するのは至難の業。絶対7:00発に乗りたい。
となると、名古屋駅の乗り換え時間がややタイト。でも名古屋は地元。勝手したる駅。10分あれば、いける!

か・ん・ぺ・き・だーッ\(^o^)/

当日。最初の関門は、京都駅の始発新幹線への乗車。これに乗り遅れたら、すべてが崩壊する。早朝、旦那さんを叩き起こして、駅まで送ってもらって、無事乗車。
(始発の新幹線ってガラガラのイメージだったんだけど……。通路までびっしりで身動きすら取れなかったのは誤算だった。こんな早朝から、みんなどこ行くの?←お前もな)
名古屋について、特急しなのへの乗り換え口を確認。時間もまだある。順調だ。「よし、朝ごはんを調達しよう!」。食は旅を彩る大切な1ページ。手を抜くことなど許されない。どれにしよーかなー……♪

その結果……

駅構内のカフェで時間をつぶしながら、自分を呪うひととき。

乗り遅れた\(^o^)/わーい、ばーか、ばーか、ばーか!

あんなに緻密に考え抜いた計画が、あっさりと崩壊した。食い意地が張っている自分を、こんなにも呪ったことはない。
いや、待て待て。まだチャンスはある! 松本駅で、4分乗り換えミッションを成し遂げればいいだけだ。駅の階段くらい走って登ってやるぜ!

公共交通機関は移動中にティータイム出来るのが、神。

8時発のしなのに乗り込む。しなのって、もう名前が「信州行くぜー\(^o^)/」って感じなんだよねー。くぅぅぅぅ、とりあえず、かんぱーい!
アルプスへ向かう高揚感と、挑む4分間のミッションインポッシブル。緊張と興奮が入り乱れる。とりあえず、スマホで松本駅構内の地図を頭に叩き込む。ミスは、許されない。

「つぎはー、松本ぉぉぉ」。
アナウンスとともに臨戦態勢。20kgのデカザックを背負い、ベルトを締める。走る衝撃で小物が落ちないように最終確認。

ぷしゅー。
ドアが開いた。迷うことなく、一目散に階段を(気持ち的には)駆け上がる。人もまばらな駅構内、進むべき道を遮るものはない。
大糸線の乗り場は、調べてもよく分からなかった。でも、連絡通路に上がると一目瞭然。登山装備の民たちが、吸い寄せられるように向かうホームがある。「あそこだッ!」。
「〇〇分発、〇〇行きの列車が間もなく発車しまーす」
ヤバい!! 階段を駆け下りる。電車は目の前。幸い、まだ車掌さんはのんびり乗客を迎え入れていて、発車する気配はない。そのまま電車に飛び乗った。登山客であふれる車内。山へ行く高揚感に包まれている。「間に合ったぁぁぁ、奇跡だ!!」。

電車が出発して、1分後。
車内アナウンスと、周りの登山者から聞こえる会話に違和感が覚える。「重太郎新道もいいなーって思ったんだけどー」「涸沢のテン場ってさぁー」。車内を見渡す。明らかに高い、ヘルメット所持率。
もう違和感じゃない、確信だ。心臓がバクバクうるさい。震える手でスマホを開く。地図アプリの青い現在位置マークを確認する。

上高地に罪はない。むしろ行きたい。でも、今日じゃないんだ……。


うん。上高地行きだ、これ\(^o^)/

(正しい目的地は穂高駅 ↑図参照)

渚駅にも罪はない。かわいい看板が、よけいに哀愁を誘う。

想像してみて欲しい。重いザックを抱え、早朝から電車を乗り継ぎ、やっとたどり着いた松本。そこでたった一人、見知らぬ駅に放り出されたときの気持ちを。

松本に戻って、あらためて穂高駅に向かった。駅で炎天下の中、1時間以上登山バスを待った。乗車してから、さらに1時間。ようやく中房温泉に着いたけど、もちろん有明荘のご飯には間に合わなかった。
そう広くない中房温泉のテント場。テントはまだまだ張れだったけど、どうやら温泉の地熱で、夏にテントなんて張れたもんじゃねぇ!って場所が多いらしい。そっか、良い場所が空いていてよかった。

あぁぁぁ、やっと我が家を立てることが出来た。

テントを張ったら、ようやくホッとした。激動の一日が終わった。中房温泉の小屋の軽食には間に合ったから、温泉に入ってから食べることにしよう。とにかく汗を流して、ビールを飲みたい! なんだろう、山に登るよりも疲れてるんだけど?
(ちなみに温泉地と言っても、山以外には何もない。ここは標高1462m。人里離れた秘境温泉なのだ)

ビールは瓶ビールで呑むのが粋だと思ってる。でも、もちろん缶ビールも好きだ。←結局、なんだっていい。

カレーライスを食べようと思っていたのに、お風呂から出たら売り切れていた。やむなく山菜そばに。私はね、ヘルシーは求めてないんだよ……とか思いつつ、美味しかったです。ごちそうさま。

結局、どんなに緻密に計画をしても、その通りにはいかない。山も人生もそんなもんだ。ていうか、登山口に到達しただけなのに、波乱の予感しかしないんだけど……。どうなる、燕岳? 行けるんか、表銀座!? 
一抹の不安を抱えながら、静かな森のなか眠りについた。                           


次回、いよいよ山に! 謎のスイカの真相も明らかに\(^o^)/←今回、結局登らないんかいッ!!


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