森が教えてくれた「少し離れて見る」という知恵
森を歩いていると、不思議だなと思うことがあります。
木々は自由に枝を伸ばしているように見えるのに、空を見上げると、隣り合う木の枝葉がぴったり重なっていません。
この現象は「クラウンシャイネス(樹冠羞避)」と呼ばれています。
なぜそうなるのかは、まだはっきりとは解明されていません。
風で枝がぶつかることを避けているという説や、光を分け合っているという説など、いくつかの理由が考えられています。
けれど私は、この景色を見るたびに思うのです。
まるで、
「そこはあなたの場所だから。」
そう言い合っているようだと。
もちろん木に言葉はありません。
けれど森全体を見ると、不思議な調和があります。
誰か一人だけが空を独り占めしているわけではなく、それぞれが光を受けながら生きています。
人もつい、自分のことだけを見てしまいます。
もっと評価されたい。
もっと早く結果を出したい。
もっと前に出たい。
そんな気持ちになることがあります。
でも心理学には「メタ認知」という言葉があります。
自分を少し離れたところから眺め、全体を見る力です。
森には脳はありません。
それでもクラウンシャイネスのある森を見ていると、一本一本の木が、自分だけではなく森全体のことを知っているように感じます。
もちろん、それは私の想像です。
それでも自然は、ときどき言葉以上に大切なことを教えてくれます。
少し離れて自分を見ること。
少し相手の場所を残しておくこと。
そうすることで、お互いに光を受けながら生きていける。
森を見上げるたびに、私はそんなことを思うのです。

