【シロクマ文芸部】誕生日
誕生日は新しい命を祝うと同時に、古い命が若い肉体を受け継ぐ日となった。
二十歳の誕生日を迎えた者は、国が定めた基準によって“有用"と"不用"に分類される。"不用"に分類された者の肉体は、高齢となった「有用な人間」へと受け渡される。
誰が選ばれるのか、どのような基準で選んでいるのかは誰にもわからない。
だからこそ、二十歳の誕生日の前夜には友人や家族が集まり、別れを告げるパーティを開催するのが慣わしとなっていた。
もちろん本気で悲しむ者などいない、形式的なものだ。
ほとんどは翌朝も自分のまま、何事もなかったかのように日常へ戻るから。
僕のパーティも慣習に従い開催された。
ケーキを食べ、歓談し、記念写真を撮った。
「明日にはもっとマシな人間になってるかもな」
なんて軽口も飛び交うが、誰も本当の別れだなんて思っていない。
この制度が始まってもう何十年も経つ。
社会はすっかり制度を受け入れ、大きな問題も表出することなくまわっていた。
夜が更けパーティはお開きとなった。部屋は静寂に包まれ、天井に残るパーティの名残りがエアコンの風にかすかに揺れている。
大丈夫だと信じている。交換なんてものは自分には関係のない、遠い世界の出来事だと。
それでも、ベッドに横たわると胸の奥に小さなざらつきが生まれる。
もし、自分が"不用"な人間だったとしたらーーー。
その思考は眠気に溶け、意識は闇の底へと引き摺り込まれていった。
*
朝。
目を開ける。
白い天井が見えた。
見たことない模様。
寝返りを打つ。
毛布の感触が違う。壁紙も、窓の形も、空気の色さえ見知らぬものだった。
こわばる手を目の前に翳してみると、文字が書いてあるのが見えた。
「ありがとう」
(696文字)
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