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【毎週ショートショートnote】春眠フラペチーノ

近所に春眠をフラペチーノにする店ができた。
春眠中に見た夢を抽出し、味と一緒に内容も味わえるらしい。冗談みたいな謳い文句だったけど、若者を中心に爆発的に流行った。

ある日、好きな人が電車でうたた寝をしているのを見かけた。肩にかけたストールに小さな結晶が光っている。
それは、確かに春眠だった。迷った末、私はそれをこっそりと持ち帰った。

「これをお願いします」
店員に結晶を渡すと、慣れた手つきでミキサーにかけてくれる。
淡い色のフラペチーノにストローを差して一口飲むと、視界がゆっくり別の景色と重なった。

その景色の中で私は彼女と並んで歩いていた。名前を呼ばれ、笑顔を向けられ、当たり前のように手をつないでいる。
特別な出来事はない。ただ、付き合っている日常の夢だった。

飲み終えるころには、高揚感に包まれていた。なんだかすべてがうまくいく気がした。

次の日の帰りに、勢いのまま告白した。
彼女は少し驚いたあと、照れたようにうなずいた。返事は肯定で、私は有頂天だった。

「でも、どうして急に?」
聞かれた私は正直に話してしまった。君の春眠を、フラペチーノにして飲んだのだと。

空気がさっと冷え、沈黙が落ちた。

「そんなことする人だと思わなかった」
静かな声だった。謝る間もなくさよならを告げられた。

それから私は、店の前を通るたび同じ味を思い出す。
夢の中では、まだ隣にいる。

(570文字)


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