【毎週ショートショートnote】カウントダウンする脈拍
脈拍を測ってくれるリストバンドを買った。
名前の下にいまの脈が表示される。
今日は50。
あれ?と思った。先週は、もっと多かった気がするのに。
気になって毎日見ているうちに、数字が1つずつ減っていることに気づいた。
49、48、47……。
まるでカウントダウンのように、勝手に減っていく。
40を切ったころ、病院に行った。
「異常なしですね」
医者は軽く笑い、カルテを閉じた。
帰り道、安心したはずなのに、なぜか心臓の音がやけに遠く感じた。
それからは、むしろ減っていくのが楽しみになった。
あと数日で0になる。
どうなるのか、確かめてみたくなった。
最後の夜。
リストバンドの光は淡く明滅していた。
時計の針がてっぺんを指すのと同時に、数字が0になる。
途端、目の前が暗くなり、世界から音が消えた。
一瞬の静寂。
けれど次の瞬間、暗闇の奥で、微かな鼓動のような振動が湧き起こるのを感じた。
ディスプレイが一際明るく光る。
【脈拍:100】
脈の上には、知らない名前が表示されている。
新しく生まれた脈が、リズミカルに刻まれる。
確かに生きているこの音は、いったい誰のものなのか。
わからないまま、拍動するリズムに身を任せた。
(488文字)
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