セカンドキャリアの聖地化を目指す宮城県気仙沼市の担い手たちがマイプランを語る! 「ぬま大学」第11期最終報告会の様子
セカンドキャリアの聖地化を目指している宮城県気仙沼市は、”余白”が多い街だ。場所、時間、役割、人、などなど、多くの点で余白があり、だからこそ挑戦の機会や何かを試す機会に溢れている。
2025年11月9日。気仙沼市担い手育成事業「ぬま大学」の最終報告会が開催された。「ぬま大学」は、気仙沼市で何かをやってみたい若者や何かを見つけたい若者に伴走し、各々が思い描く街で実現したいことへの挑戦の機会を提供する。
過去10年にわたって取り組まれており、卒業した受講生は126名に上る。今回は11年目となる第11期で、総勢15名の受講生が自分と向き合う時間を過ごしている。最終報告会は、そうして過ごした半年間について報告する場だ。
今回のnoteでは、そんな「ぬま大学」第11期の最終報告会の様子を伝える。なお、前回の第10期の様子は以下のnoteで伝えているので、興味が湧いた読者はぜひ目を通してみて欲しい。
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「ぬま大学」第11期最終報告会|セカンドキャリアの聖地化を目指す気仙沼市でマイプランに取り組んだ若者たちの想いと行動を知る時間
セカンドキャリアの定義を第二の名刺とするならば、「ぬま大学」の受講生はまさにセカンドキャリアを歩む期間を過ごした人々と言えるのでなかろうか。第一の名刺は普段の仕事や学業、第にの名刺は宮城県気仙沼市の街を舞台に自己実現や自己探求を行う挑戦者である。
「ぬま大学」第11期最終報告会は、「ぬま大学」の説明から始まった。説明においては、「祝祭感」というテーマが語られた。”ぬま大生”を”まち”に迎え入れる一体感。今回の場を、そうした時間、場にするというメッセージだ。
最終報告をする”ぬま大生”とそれを聴く聴衆という分かたれた立場ではなく、この場に集まった全員が一体となる時間にする。そんな強く、優しい想いが会場に広がっていくのを感じるメッセージである。
その後、「ぬま大学」第11期最終報告会は、二部制で行われると発表される。説明を行った司会の二人は、昨年、第10期を受講したOBである。一人は「ヒビノクラシ」という取り組みを行い、一人は学びの輪を広げる活動をしている。
「ぬま大学」第11期最終報告会 第一部の様子
「ぬま大学」第11期最終報告会の第一部は、受講生15名による活動報告である。各々が半年間で取り組んだ活動の様子や半年間の講義を通じて感じたこと・考えたことを発表した。
※各マイプランの詳細については、「ぬま大学」運営を通じて、受講生等から確認していただけますとありがたいです
1. 愛でたい! Kesennuma
気仙沼市での暮らしを通じて、SLOW HOUSEなどのコミュニティがあり、自分自身を必要としてくれる人々の存在を知り、誰もが誕生したことに意味があることへの気づき、そしてそうした人々に祝福を届けるべく、「愛で隊」という取り組みを行うマイプラン。
気仙沼で暮らす人々やコミュニティの間に「愛で隊」が介在し、その繋がりを生むことで、生き辛さを感じている人々に、自身の在り方を考えるきっかけを生む、そんな優しさと温かさ、何より人間の多様性を尊重する想いを感じられるマイプランだった。
2. ひとごとからじぶんごとへ~あなたの「スキ」はなんですか?~
2~3年周期で転勤を繰り返す中で、家と職場の往復になっている生活に退屈を感じていた中、自らバドミントンや「ぬま大学」への参加をしていくことで、巻き込まれるように様々な繋がりや活動が連鎖的に発生し、他人事だったことが自分事へと変わっていく体験を経て、出会いや体験が自分事化を生む気付きを得たとされる。
そのことから、巻き込まれる生き方があっても良いのではないかと考え、よそ者の自分を貸し出すマイプランが提案されている。巻き込まれるように他者の活動に関わる中で、自分の価値に気付けるのではないか。その提案は、現代において生き方に悩む多くの人々に示唆を生むように思える内容だった。
3. 自由肯定感
生まれてから40カ国以上を旅してきた受講生が、気仙沼市に移住して抱いたモヤモヤした感情を踏まえて、自由で無駄のない贅沢な暮らしを提案するマイプランである。自由な暮らしのスタイルが気仙沼市に根付くことで、気仙沼市が居心地の好い街として、他地域のロールモデルになるのでないか。そうした示唆が与えられる内容だった。
日本で最初のスローシティである気仙沼市をより居心地の好い街にする上で、とても重要な提案が行われているように感じただけでなく、とりわけ昨今の20代以下の人々に広がってきた新しい価値感を掬い上げたような内容で、今後の街を占う意義深い提案に感じられた。
4. 気仙沼を知ろう
自分軸と地域軸を見つめ直したとき、自分に地域軸が不足している点に気付いた受講生による、地域を知るマイプランが語られている。実際に自分が好きと思える気仙沼市内の地域を歩いたり、市内のホテルに宿泊する中で、豊かな状態についての示唆を得た話が印象的だった。
昨今、シビックプライドが語られる中で、地域を知るのは、その第一歩としてとても価値のある行為である。一方で、その行為をどのように導出するかは悩みどころだ。実際に地域を知る活動に取り組んだ経緯から取り組んでみた結果までが語られる本マイプランは、そうした点において示唆深い内容であった。
5. Many voices, one community
日本で暮らし始めて9年になる、海外出身の受講生が感じている暮らし難さについて、実際に気仙沼市内に住んでいる同様に海外から訪れた人々へのアンケート調査、回答分析を経て、未だ気仙沼市にある暮らし難さが可視化されたマイプランであった。
多文化共生は、気仙沼市だけでなく日本全体の課題である。日本人ファーストなる思想が極一部の層から発せられる昨今であるが、現代はそんな思想が罷り通るような時代ではない。また、誰かの暮らし難さは別の誰かの暮らし難さにつながる。誰もが暮らしやすい気仙沼市を実現するにあたり、とても意義深いマイプランであるように感じられた。
6. Round About ~マガジンで視点を届ける~
イギリスからUターンした受講生によって、旅のストーリーを届けることや空き家などを活用した古着屋を開業する夢が語られたマイプランであった。とりわけ人にフォーカスしたカルチャー誌を創りたいといった夢は、胸を打つものがあった。
人にフォーカスしたマガジンは、形に残り、五感で感じられる内容になるのは、容易に想像できる。折しもAIが世界を席巻する時代である。今後、人間という存在に対する熱量は全世界的に高まるに違いない。ぜひ実現して欲しいと思えるマイプランだった。なお、受講生は以下のnoteを運営している。
7. ”好き”からひろがる、シェアするリビング美好
2年前に気仙沼市に移住し、地元酒造で働く受講生が、独り暮らしを苦手とする自分の特性から、過去シェアハウスなどのサードプレイスに救われた経緯を踏まえ、気仙沼市にシェアリビングを創るマイプランに取り組んだ話を行っている。
シェアリビングは、シェアハウス・美好の一階に開設。自分が好きな日本酒や他の人々の好きを共有する会を催すことで、社会人の溜まり場にしていく過程が語られた。誰かの好きを味わえる空間は、地方には中々ない。そうしたものに触れながら、様々な人々と触れ合える社会人の溜まり場は、とても尊い存在に思えた。
8. 「海と生きる」自分ゴト化計画~暮らしの中でいのちとつながる~
気仙沼市に移住後、釣りに魅了された受講生が、釣りなどを通じて感じた命を頂く感覚、他人事が自分事へと変わっていく感覚について、①釣りに行こう、②魚を捌く会、の二つの取り組みを通じて、様々な人々へと伝えたマイプランが語られている。
気仙沼市×移住×釣りというとサンセットサンライズを想起するが、更に一歩踏み込んで命を頂くという、食の根底にある概念について語られた内容で、考えさせられる内容だった。また、共に魚を捌くことで、得られる体験があるのは未知の気付きで、学びの多い内容でもあった。
9. 気仙沼を知って、若者が暮らしやすい街にした9.い!~人と人、人と場所のつなぎ役に~
気仙沼市へのUターン後、同級生などが同市を巣立っているなど、知人・友人が乏しい環境となっており、仲間づくりに困った経験を持つ受講生が、そうした自身の経験を踏まえ、若者に対して若者が知りたい地域の情報を届けたいと思い、導き出したマイプランが語られた。
昨今、地方はこれまで東京都などの大都市にしかなかったような洗練された飲食店やイベントなどが増えている一方で、そうした情報が若者などに適切に届けられているとは言えない。また、そんな環境で抱えたモヤモヤした感情を吐き出す場も少ない。そこに気付き、それを何とかしようとマイプランを組み立てた点に尊さが感じられた。
10. ダイヤはダイヤでしか磨けない 叔父と甥の同居生活からの発見物語
8年で抱えていた精神疾患について寛解の診断を得るに至った受講生が、そこに至るまでに存在した叔父との生活を振り返り、その同居生活から得られた知見を共有するマイプランであった。
昨今、精神疾患を抱える人々は増える一方だが、寛解は難しく、だからこそそこに至るまでの生活について赤裸々に語られる機会は中々ない。そもそも外部に積極的に発信する人が少ない。そんな中、自身が歩んできた道程をつまびらかに語るマイプランには、崇高なものを感じずにいられなかった。
11. さあ可愛がれ♪ その類稀なる個性を抱きしめGoing My Way♪
東京都内のコンサルタント会社に勤める受講生が、やりたいことを分からずに悩む人々に向け、他社の武勇伝を通じて生き方や考え方に触れる価値を伝えるマイプランだった。
また、そうした多くの人々にとって知らない世界に触れられるバーのような存在を通じて、人生をオーダーメイドできるようにする提案は、示唆に富んでいるだけでなく、滅多に見聞き出来ない話であり、新鮮なマイプランに感じられた。
12. 老舗水道屋の息子だって気仙沼のために活動したい! あなたの力を貸してください‼
気仙沼市の老舗水道屋の4代目(仮)が、『誰かがつくる気仙沼市でない、自分でつくる気仙沼市』を掲げ、「余暇のリビング」的空間の必要性を提案するマイプランであった。
アンケートを通じて、気仙沼市内で活動的に過ごしている人々が多い一方で、場所がないと感じている人々が少ないというインサイトから提案されたマイプランは、あまり可視化されていなかった気仙沼市の実像を映し出しているように感じられ、示唆に富む内容だった。
13. 家族の愛情に感謝💞 ~家庭料理を通じて~
気仙沼市に移住したものの友人がおらず、苦しい期間を過ごす中で
家庭料理への想いを再発見した受講生による、家庭料理の価値に気付かせられるマイプランだった。
家庭料理=家族を思い出す料理という観点から、家庭料理を通じて感謝を伝えられる場所を創りたいと想いを抱いた話は、日頃多くの人々にとって当たり前になっているが故に感謝を忘れがちな家庭料理に対する気付きを与えてくれており、考えさせられる内容だった。
14. あり方セレクト( ) スペース
大きな選択をするとき、選び倒した過去の中に必ず誰かが居た思い出から、選択する力・選択できる場のバランスを取り、自分の在り方をセレクトできる地域にしたい。そうした想いと内容がつまった、今年から気仙沼市に移住し、一般社団法人まるオフィスに勤める受講生によるマイプランだった。
昔に比べて何かを選択しようとしたとき、選択に役立つ情報を入手しやすい環境になっている一方で、あまりにも情報が多すぎて適切な選択をするのが難しい現代において、その選択を支えようという尊い想いを感じられる内容で、そうした想いを持った方が進路選択・探究学習などに介在してくれるのはとても助かるだろうと思えた。
15. 少数派な悩みに寄り添う冊子『星のざわめき』
抱えている”モヤモヤ”を吐き出しにくいのは、少数派だからだろうか。そんな疑問に端を発し、誰もが安心して相談できる悩みを吐き出す空間を創りたいと考え、「星のざわめき」という人々が匿名で悩みを発せる冊子を生み出したマイプランである。
悩みを吐き出す空間として紙媒体を選んだ視点もさることながら、「ぬま大学」第11期が始まって最終報告会に至る短い期間で発刊まで到達した行動力、熱量に感嘆するマイプランだった。
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「ぬま大学」第11期最終報告会 第二部の様子
「ぬま大学」第11期最終報告会第二部では、受講生が4つの分科会に分かれ、それぞれの分科会を訪れた聴講者に対して、自身のマイプランの発表に関する深堀や今後の活動に向けた議論・仲間づくりを行う時間となった。
筆者は、”5”、”10”、”15”の分科会に参加しており、気仙沼市で暮らす海外から移住した人々の暮らしがより良くするためのディスカッションや精神疾患が寛解に至るまでに取り組まれた内容の詳細、「星のざわめき」が生み出されるまでの経緯などについて伺っている。
「ぬま大学」第11期最終報告会 チェックアウト
「ぬま大学」第11期最終報告会第二部が終わった後、チェックアウトとして、受講生一人一人の振り返り、受講生一人一人に寄り添ったコーディネーターによる振り返り、そしてチェックアウト後、気仙沼市長及びゲスト3名による総評を伺った。
気仙沼市長による総評で語られた『今の自分・街での暮らしに満足していないのは大事。満足していないから何とかしようと動きが生まれ、豊かさに繋がっていく』といった話は、まさに「ぬま大学」という取り組みの根幹にある思想のように思え、気仙沼市という街が、今後より豊かになっていくための希望を感じられる話に感じられた。
「ぬま大学」第11期生、そして今後の「ぬま大学」の取り組みに大きな期待を寄せたい。
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