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構造で見る⑪ 証券 ——「市場が上がれば儲かる」は本当か

メガバンクが「金利正常化」で買われているなら、証券会社は「市場活況」で買われている。

日経平均が上がれば、売買代金が増え、手数料が増え、証券会社の利益が伸びる。単純な構図に見える。

しかし、証券3社の構造を並べると、同じ「証券」でもまったく違う会社であることがわかる。


3社の数字を並べる

野村ホールディングス(8604)は2026年3月期の純利益が3,621億円。前期比+6%で2期連続の最高益を更新した。収益合計は2兆1,677億円(+15%)。個人・法人部門がともに最高益を達成している。

大和証券グループ(8601)は純利益1,752億円(+14%)。12年ぶりの最高益だ。ウェルスマネジメント部門が牽引し、リテールとホールセールの両輪で増収増益を達成した。

SBIホールディングス(8473)はネット証券を軸に、銀行・保険・暗号資産まで金融エコシステムを拡大している。新生銀行(SBI新生銀行)の統合効果も出始めている。

3社とも「好調」だ。しかし構造はまるで違う。


業績構造 ——何で稼いでいるかが違う

野村:「グローバル投資銀行」への転換途上

野村の業績を動かしているのは、もはや個人の株式売買手数料だけではない。

個人部門は預かり資産に応じた安定収益(フィービジネス)にシフトしている。法人部門ではM&AアドバイザリーやTOB関連で大型案件を獲得。マッコーリーの資産運用会社を買収し、運用資産残高は136.9兆円に拡大した。

かつての「相場の波に乗る証券会社」から、「安定収益を積み上げるグローバル金融グループ」への構造転換を進めている。ただし資産運用部門は海外買収費用や減損で減益。転換はまだ道半ばだ。

大和証券:「リテールの王者」

大和の強みは国内リテール基盤だ。全国の支店ネットワークと富裕層向けサービスに強みを持つ。

野村がグローバル展開で勝負しているのに対し、大和は国内に軸足を置く。NISA拡充による個人投資家の裾野拡大は、大和のリテール構造に直接追い風になる。

ただし裏を返せば、国内市場への依存度が高い。日本の株式市場が冷え込めば、大和の業績も冷え込む。

SBI:「金融エコシステム」という異次元

SBIは証券会社というより、金融プラットフォームだ。

ネット証券で圧倒的なシェアを持ちつつ、SBI新生銀行、SBI損保、SBIレミット、暗号資産取引所まで、金融サービスを横断的に展開している。

野村や大和が「証券業の延長」で成長を目指しているのに対し、SBIは「証券を入口にした金融経済圏」で勝負している。収益構造がそもそも違う。

⚠️ 業績構造 → 野村=グローバルIB転換、大和=国内リテール深耕、SBI=金融エコシステム。同じ「証券」に見えて、稼ぎ方の構造がまるで違う。


評価構造 ——PBR1倍割れの証券株

証券株の多くはPBR1倍を割っている。野村もPBR0.95倍前後だ。

銀行と同様、東証のPBR改善要請が追い風になっている。自社株買いや増配で資本効率を改善し、PBR1倍超えを目指す動きが続く。

しかし証券株の評価が低い「構造的な理由」がある。業績のボラティリティが高すぎるのだ。市場が好調なら最高益、不調なら赤字。この振れ幅の大きさが、安定志向の機関投資家を遠ざけている。

野村がフィービジネスや資産運用にシフトしているのは、この「評価構造の壁」を壊すためだ。安定収益の比率が上がれば、PERやPBRの水準が切り上がる。

🟡 評価構造 → PBR1倍割れが常態化。構造的にはボラティリティの高さが原因。安定収益比率の向上が評価改善のカギ。


需給構造 ——NISAと資産運用立国

証券株の需給を動かしている最大のテーマは「貯蓄から投資へ」だ。

新NISA制度の拡充、資産運用立国政策、確定拠出年金の普及。これらは構造的に証券会社への資金流入を促す。

特にSBIと楽天証券が個人投資家の口座開設数で圧倒的なシェアを持つ中、野村・大和は富裕層向けの対面サービスで差別化している。

外国人投資家の動向も重要だ。日本の株式市場全体の売買代金が増えれば、証券会社はその恩恵を受ける。しかし「恩恵を受ける」は「依存している」と表裏一体だ。

✅ 需給構造 → NISA・資産運用立国が構造的な追い風。ただし市場環境への依存度が高く、逆回転リスクも大きい。


構造で見ると何がわかるか

証券3社は「市場が上がれば儲かる」という点では同じだ。しかし、その先の構造がまったく違う。

野村は「市場依存からの脱却」を目指している。グローバルIBと資産運用で安定収益を積み上げ、評価構造を変えようとしている。2期連続最高益はその成果だが、海外事業の不確実性もある。

大和は「国内市場の深耕」で勝負している。NISA拡充の恩恵を最も直接的に受けるが、国内依存のリスクも背負う。

SBIは「証券業界の外」で戦っている。

ネット証券を入口に、銀行・保険・暗号資産まで金融エコシステムを広げている。

野村や大和が「証券会社」の延長で成長しているのに対し、
SBIは「金融プラットフォーム」で勝負している。

SBIは成長している。
しかし市場は、「結局この会社は何で評価すればいいのか」をまだ掴み切れていない。その“複雑さ”が、PERを抑えている。

「証券株を買おう」ではなく、「どの構造を買うか」だ。

NISA相場でも、金利相場でも、
最終的に株価を決めるのは“構造”だ。


▶ メガバンクの構造比較はこちら 構造で見る⑩ メガバンク ——「金利のある世界」で、3行の構造はこんなに違う


本記事は企業分析および投資教育を目的とした情報提供であり、特定銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

記載のデータは2026年3月期通期決算(野村HD:2026年4月24日発表)および公開情報に基づきます。

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