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違和感のある言葉は、どこでズレているのか

違和感のある言葉は、どこでズレているのか

正しいことを言っているはずなのに、なぜか責められているように感じる。

幸せそうな投稿に対して、
「病気で子ども産めない人の気持ち考えたことありますか?」
というコメントがついて炎上していました。

おかしいとまでは言い切れない。
でも、どこか引っかかる。
責められているような、うまく説明できない圧迫感が残ります。

なぜそう感じるのでしょうか。

その背景には、この言葉の中で「あるズレ」が起きている可能性があります。

痛みは、そのままでは外に出にくい

まず前提として、このコメントは単純な悪意から生まれたものではありません。

背景には、おそらく個人的で深い痛みがあります。

子どもを望んでいたが持てなかった。
その状態で、誰かの幸せな投稿が目に飛び込んでくる。

そこで生まれるのは、羨ましさ、悲しさ、取り残された感覚。
ときに、怒りに近い感情も混ざります。

ただし、こうした感情はそのままでは表現しにくいものです。

「羨ましい」と言えば、心が狭いと思われるかもしれない。
「つらい」と言えば、それはあなたの問題では、と返されるかもしれない。

個人の痛みは、そのままでは受け入れられにくい。
弱さとして見られることへの恐れがあります。

だから人は、感情を別の形に変えます。

「つらい」が「正論」に置き換わるとき

ここで起きているのが、感情の変換です。

「つらい」
 ↓
「なぜつらいのか。それは相手が無神経だからではないか」
 ↓
「無神経なら、指摘するのはおかしくない」
 ↓
「病気で産めない人の気持ちを考えたことがありますか?」

最初にあったのは「自分の感情」でした。
でも最後に出てきたのは「他者への要求」です。

個人の痛みが、社会的な正しさの言葉に置き換わっています。

この変換には、ひとつの機能があります。

「つらい状態」ではなく「正しいことを言っている状態」になれる、ということです。

傷ついたまま言葉を出すより、
正論の形で出した方が、否定されにくい。
批判が来ても、「正しいことを言っているだけ」と守ることができます。

これは、痛みを抱えた人が無意識にとる、一種の防御反応と考えられます。

ここに最初のズレが生まれている可能性があります。

なぜこのズレが、苦しさになるのか

受け取る側には、この変換の過程は見えません。

投稿した側は、ただ喜びを共有しただけです。
誰かを傷つける意図はありません。

そこに突然、「配慮が足りない」という言葉が届きます。

何が問題なのか分からない。
それでも責められている感覚だけが残ります。

ここで感じる違和感の正体は、「理由の分からない指摘」と言えるかもしれません。

本来は個人の感情だったものが、
他者への評価として届いてしまっています。

「内側の出来事」が「外側への指摘」に変換されたことで、
意味のズレが生じていると見ることもできます。

さらにいえば、「正論」の形をしているため、
受け取った側は反論もしにくい。

正しそうなのに苦しい、という感覚はここから来ているのかもしれません。

SNSが、このズレを大きくする

このズレは、SNSという環境でさらに広がりやすくなります。

「つらい」という個人の感情は、SNSでは共感を得にくい傾向があります。
スルーされるか、「それは個人の問題」と返されやすい。

一方で「配慮を求める正論」の形にすると、
同じ痛みを抱えた人たちの共感が集まりやすくなります。
「そうだよね」「よく言ってくれた」という反応が来ます。

つまりSNSは、
「個人の感情」よりも「正論の形をした感情」の方が、
承認されやすい構造になっていると考えられます。

だから人は、意識せずに変換します。
痛みを、主張に変えて出す。

そしてその結果、
本来は「分かってほしかっただけ」だったものが、
「攻撃」として届いてしまうことがあります。

ここでもうひとつのズレが生まれます。

「分かってほしい」という意図が、
「責められている」という受け取りに変わってしまうのです。

善悪ではなく、ズレの問題

幸せを表現すること自体は、ごく自然な行為です。

誰かの幸せが、別の誰かの痛みに触れることはあります。
でもそれは「表現してはいけない」という話ではありません。

一方で、コメントをした人の痛みも本物です。
否定されるべきものではありません。

ただ、その痛みの「出し方」が、
受け取る側には届かない形に変わってしまっています。

これは善悪の問題ではなく、
感情がどのように言葉へ変換されるか、という構造の問題です。

違和感のある言葉は、内容そのものよりも、
その背後で起きているズレによって生まれているとも言えます。

このズレの構造を知っておくことで、
なぜ正論なのに苦しいのか、
なぜ悪意がないのに傷つくのかが、
少しだけ見えやすくなるかもしれません。

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