🌙 第9章|女友達の恋バナを聞く夜 part1. 変わらない恋の話
その夜、
友人Aはグラスを持ったまま、少し間をあけてから話し始めた。
「一応さ、もう夫婦としては破綻してるらしいんだよね」
やけに静かに響いた、“らしい”のひとこと。
奥さんとは会話もなくて、
同じ家に住んでるだけで、
気持ちはもうとっくに終わってるんだって。
彼はそう言っているらしい。
連絡はマメで、
優しい言葉もちゃんとかけてくれる。
会えば、大事にされている感じもする。
「未来の話も、しないわけじゃないんだよ」
そう言いながら、友人Aは少し笑った。
でもその笑顔は、
どこか自分に言い聞かせているみたいだった。
私は、「そっか」とだけ言って、
グラスの水を一口飲んだ。
正直なところ、どう返していいか分からなかった。
やめたほうがいいとも、分かるよとも、
簡単に言える言葉じゃなかった。
「分かってるんだけどね」
友人Aはそう言って、
分かってる人の顔で、少しだけ目を伏せた。
変わらないことも、
待つことも、
きっと全部、分かったうえでの恋なんだと思った。
その恋を、正しいとも、間違ってるとも、
その夜の私は言えなかった。
ただ、切ないな、とは思った。
それだけは、嘘じゃなかった。
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