イラストは生きづらさを抱える彼女のよりどころ。「描く」は大切な自己表現ツール
「生きづらさ」を感じるとき、心を支えてくれる趣味は日常を彩る存在となります。
今回は「人生を彩ってきた趣味」をテーマに、発達障がい(ASD)による生きづらさを抱えながら、同じように悩む方々に向けたメディア『constella-コンステラ-』を立ち上げた、あんぬさんにお話を伺いました。
人とのコミュニケーションが苦手だと語るあんぬさんにとって、趣味の絵を描くことは、時間を忘れて集中できる心のよりどころ。そして、自己表現として大切なコミュニケーション手段でもあります。
一度は趣味を活かして仕事にしようと挑戦し挫折するも、絵を描き続ける理由。そして、現在は絵を描くことをどのようにとらえているのか、あんぬさんと絵の関係ついて深掘りします。
あんぬさん

発達障がいのひとつであるASD(自閉スペクトラム症)を抱え、現在は就労継続支援A型に通いながらライティング業務に従事。イラストを描くのが趣味で、自身のアイコンやアイキャッチ画像も自作している。
2025年11月には、フリーランスが優しくゆるやかにつながるメディア『constella-コンステラ-』を開設し、生きづらさを抱える人たちに向けて情報発信。X/note
1人でできる趣味から、誰かと共有するコミュニケーション手段へ

ーー あんぬさんが「描く」ことを始めたきっかけは何ですか?また、これまでどのような絵を描かれてきたのですか?
あんぬさん:
絵は物心ついたころから描いていましたね。親が外出して留守番をしているときに紙とペンさえあれば楽しめることから、はまっていったのだと思います。
学生時代は漫画のキャラクターを模写することが多かったです。推しのアイドルなど実在する人物を題材に、ファンが尊敬や愛情を込めて制作するファンアートとしても描いてきました。
絵を描くときは自分だけの世界に入り込んでしまうので、筆が乗ってくると飲食を忘れるほど集中してしまうこともあります。ひとつのことに没頭することで余計なことを考えずに済むので、心が落ち着きますね。
子どものころは、スケッチブックに「コピックマーカー」というペンで描いていましたが、今は「板タブ」というPCにつないで使うペンタブレットで描くことが多いです。新しいツールを試すことで描きやすさが分かったり、自分の思う通りに表現できたりすることが楽しいですね。
ーー 色を使って自由に表現できる趣味はワクワクしますよね!これまで絵を描いてきて印象的なエピソードを教えてください。
あんぬさん:
自分が描いた絵を見せてほかの人から反応をもらったときです。高校生のときに、友人の好きなアイドルの絵を描いてプレゼントしたとき「そっくりだね!」とほめてくれて。そのあと彼女の家族にも見せるほど喜んでもらったことが嬉しかったですね。
ほかにも、ファンアートをSNSに投稿したときに「このシーン良かったよね」とか、「表現の仕方がうまいね」などのコメントをもらえて。これらの経験から、誰かと絵を介してコミュニケーションをとる楽しさを知りました。
「描かなきゃいけない」が辛い。描くことは仕事ではなく、あくまで息抜きに

ーー あんぬさんはご自身のSNSアイコンを自作されるほどの腕前ですが、これまでイラストの仕事をしようと思ったことはないのですか?
あんぬさん:
実は以前、描くことを仕事にしたいと思っていた時期がありました。
2年ほど前、働き方に悩んだことをきっかけに、在宅ワークやフリーランスという働き方に興味を持って。そのとき「自分にできることはなんだろう」と考えた結果、「デザインに挑戦してみよう」と。
その後、デザインの勉強中に通っていた就労継続支援B型で、イラストを書く仕事に挑戦しました。しかし、仕事となると期日があるので、締め切りに追われながら作業をした結果、体調を崩したことも重なって、絵を描くのがすごく辛くなってしまって。
そのとき「私は描くことを仕事にはしたくないんだ」と気付いたんです。それからは自分のペースで、好きなときに好きなだけ描くようにしています。
ーー イラストを描くことがつらい作業になってしまってから「描くことを辞めよう」と思ったことはないでしょうか?
あんぬさん:
日常生活が忙しくなったり、体調を崩してしまったりしたときなど、これまで何度も「もう辞めよう」と思ったことはあります。
それでも、これまで集めてきた紙やマーカー、水彩絵の具などの画材をどうしても捨てられなくて。やっぱり自分は描くことを完全には手放せないんだなと。今も描くことがしんどくなり始めたら、一旦離れるようにしてます。こうして一度距離を置いてから、「描きたい」という気持ちが湧いてくるまで待ちます。
今の私には描くことは自己表現の手助けをしてくれる存在であり、息抜きをする時間にもなっています。
自分にしかできない表現をしたい。ライターとして絵を描けることの強み

ーー 現在ライティング業務に携わるあんぬさん。「書くこと」と「描くこと」の共通の魅力は何ですか?
あんぬさん:
1番は自己表現です。私は発達障がいを抱えているため、人と対面でコミュニケーションを取るのが苦手で。そのため文章もイラストも「私はこういう人間です」と間接的に表現できる点が魅力ですね。
ーー noteで『constella-コンステラ-』の運営を始められましたが、今後「描くこと」と「書くこと」を掛け合わせて実現したいことはありますか?
あんぬさん:
カバー画像の制作などでデザインスキルを活かしていきたいと思っています。他のアーティストの作品を見て、「その人にしかできない表現」が素敵だなと思うので、私も自分にしかできない表現を追求して、より読者に届く世界観を作っていきたいです。
ーー あんぬさんは絵を描くことをどのようにとらえていますか?
あんぬさん:
自分の気持ちを表現することが苦手な私にとって、絵を描くことは自己表現やコミュニケーションの手段として欠かせないものです。また、私は嫌なことがあると、そのことばかり考えてしまって、負のスパイラルに陥りがちで…。そんなときに絵を描くと没頭できるので、良い息抜きになっています。
これからも自己表現ツールと自分の息抜きの時間として、描くことを続けていきたいですね。
・・・
「絵を描くことは自己表現でありコミュニケーション手段」というあんぬさん。イラストを仕事にしようとして絵を描くことがつらくなってしまった時期を経て、今では自分らしい付き合い方を楽しむ姿が印象的でした。
そんな彼女は2025年11月、noteで新しいメディア『constella-コンステラ-』を立ち上げました。
ご自身も生きづらさを抱えながら、「趣味のイラストを活かして、読者にとって心地良い世界観を作りたい」とメディア運営に挑戦されています。
生きづらさを抱えている方も、日常にワクワクが足りない方も、あんぬさんのように「自分を表現し、自分らしく生きる」ことに向き合う時間を作ってみてはいかがでしょうか。
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〔取材・執筆=やきいも/編集=ろぼ〕
