「苦手だった犬が、人生の支えに。」介護のつらさをペットのぬくもりが救ってくれた
犬は癒しの存在として、人の暮らしを支えてくれています。イライラしたときも、家庭内の空気が悪くなっても、犬が笑顔で尻尾を振ってくれるだけで心が和みますよね。
この記事では、家族が精神疾患・認知症を患い、介護やケアに追われるなか、愛犬が支えになったと話す、ろぼさんにお話を伺いました。
今では犬を溺愛するろぼさんですが、もともとは犬が嫌いだったそう。彼女が犬を飼い、かけがえのない存在になるまでのお話。
そして、家族の絆をあたたかくつないでいく感動のストーリーをお届けします。
ろぼさん

フリーランスのWebライター。35歳。栃木県在住。インタビュー音源の記事化、SEO記事の執筆を行う。ペットの柴犬を溺愛中。noteマガジンで精神疾患・認知症の家族をサポートするノウハウを発信している。Marbleスクール6期卒業。(note/X)
「うちで犬を飼うなんて嘘でしょ」犬嫌いなのに自宅で柴犬を飼うことに

――プロフィールのイラストからも犬への愛が伝わってくる、ろぼさん。犬との出会いはいつごろでしたか?
ろぼさん:
犬とは9年前に出会いました。それまでうちではペットを飼ったことがなくて。 今飼っている犬が、初めて我が家に迎え入れた子です。
――なぜ犬を飼うことになったんですか?
ろぼさん:
父と母が、それぞれ実家で柴犬に近い雑種を飼っていたそうなんです。それで二人が結婚する前から「いつか柴犬を飼いたいね」と話していたらしくて。
父が50代後半で早期退職して時間に余裕ができたタイミングで「よし、柴犬を飼おう!」となったみたいです。
――なるほど。ご両親はもともと犬好きなんですね。ろぼさんは動物を飼ってみたいという憧れはあったんですか?
ろぼさん:
私はもともと、動物がとても苦手だったんですよ。そのなかでも特に犬は怖くって……。人懐っこい子は「ワンワン!」って積極的に近づいて来ますよね。
当時はそれがとても怖かったんです。友達の家や知り合いの家に行ったとき、犬が駆け寄って来たら「ひいー!やめてー!」と逃げていました。
そんな経験から、犬が苦手になってしまって。うちで柴犬を飼うと聞いたときは「え?嘘でしょ……?」と、信じられない気持ちでした。
「犬を飼うなんて絶対に嫌!」と反対する私にお構いなく、あれよあれよと準備が進み、ついに柴犬がうちにやって来てしまって、最初のころは不安でいっぱいでした。
――どのタイミングで、犬が好きになっていったのですか?
ろぼさん:
子犬のころは同じ部屋で過ごしていても「(この人、誰?)」と、ボヤーンとした表情で私を見つめ、私も見つめ返すだけでした。
それからだんだんと慣れて、私が仕事から帰ると、玄関までダアーと走って来てくれるようになったんです。
懐いて尻尾を振って喜んでくれるのを見たときに「あ、かわいいな」と素直に思いました。そこからお互いに徐々に距離を詰めていき、今ではすっかり溺愛しています。
――犬を飼ってみて、ろぼさんにはどんな変化があったんですか?
ろぼさん:
私はマイペースなところがあり、これまでは「自分さえ良ければいい」という気持ちがどこかにありました。
そんな私が犬を飼ってからは、ごはんをあげたり散歩に連れて行ったり、自分から進んでお世話をするようになりました。
そのうち犬が居てくれるおかげでお世話をする楽しさや、愛情を分かち合う幸せを感じられるようになって。想像もしていなかった変化に、自分でも驚いています。
家族の介護・ケアで毎日いっぱいいっぱいの私に犬が気づかせてくれた小さな幸せ
――いくらかわいいとは言え、犬のお世話は大変ではないですか?旅行や遠出も難しくなりますよね?
ろぼさん:
そうですね。普段の生活では、毎日の散歩がとても大変です。うちの子は家の中や庭で絶対に用を足さないので、雨や雪、台風の日でさえ外に散歩に行かないといけません。
遠出も難しいですね。家族全員で出かける場合、犬をペットホテルなどに預ける必要があります。けれど、うちの子はストレスで排泄がうまくできなくなってしまうんです。
犬の気持ちを考えると可哀想で、家族全員で出かけることはほとんどありませんね。
――ろぼさんは犬のお世話だけでなく、ご家族の介護や心のケアもされていますよね。介護との両立は大変ではないですか?
ろぼさん:
祖母がグループホームに入るまではデイサービスを利用し、自宅介護もしていたので、毎日バタバタしてましたね。
祖母がデイサービスから帰る15時半ごろまでに犬の散歩を済ませて、出迎えの準備をしていました。
それから夕飯の買い物をして、自分で料理をする祖母が火事を起こさないように見守りつつ、ほかの家族の分の料理を同時進行で作っていましたので、本当に大変でした。
――ご家族のケアが大変ななか、犬が居てよかった瞬間はありますか?
ろぼさん:
犬の存在が心の支えになって、つらいときも何とか乗り越えることができましたね。家族のお世話ばかりで体力的にも精神的にもしんどいときは、この状態がいつまで続くのだろうと、途方に暮れます。
そんなときに、家に帰るたびに犬が飛び跳ねて喜んでくれるのを見ると、本当に癒されるんです。大変なことはたくさんあるけれど、家族が一緒に暮らせるだけで、とても幸せなことなんだ――と。
犬が居るおかげで、当たり前の幸せに気づかせてもらったと思います。
「犬は鎹(かすがい)」ギスギスした家庭内の空気も、犬が和ませてくれた
――ご家族との関わりのなかで、犬が居てくれて助かることはありますか?
ろぼさん:
母も妹も体調が優れず、一日中寝て過ごす日もあります。となると、父と私が家事や通院の付き添いをしなければなりません。
だんだんうっぷんが溜まり、「なぜ私たちばかりが動かなきゃいけないの?」とイライラして、家庭内がギスギスするときもありました。
そんなときも、犬が場を和ませてくれました。雰囲気がピリついたのを察すると、「なになに?」ってキョロキョロ、ソワソワし始めるんですよね。
犬の不安そうな様子を見て、「少し言い過ぎたかもしれない」と、冷静に自分を振り返ることができました。
――犬の優しさと、思いやりを感じますね。ほかにもエピソードはありますか?
ろぼさん:
居てくれるだけで場が和み、家族の笑顔やコミュニケーションが増えたと思います。明るい話題が少なくなって、家の中がシーンとしたときに「ご飯ちょうだい」って尻尾を振ったり。
昼寝しながら「ウォンウォンウォン」と寝言を言ってたり。思わずクスッと笑ってしまい、そこから家族の会話が生まれることが多いですね。
犬が居てくれることで家庭の笑顔が増えて、家の中の空気があたたかくなったように感じています。
――かわいらしいエピソードを伺っていると、こちらまで癒されます。ろぼさんにとって犬はどんな存在ですか?
ろぼさん:
ずっと家族の看病に追われ、先が見えない生活でしたが、犬が私にがんばる意味を与えてくれています。もし、この子が居なかったら我が家はどうなっていたんだろうと思うくらい、我が家に欠かせない存在です。
犬のおかげで、自分に新しい存在意義が生まれて。「この子のためにがんばろう」「この子のために何かしたい」という気持ちが、日々を生きる原動力になっています。
――すてきですね!ご家族にとって、犬はどんな存在だと思いますか?
ろぼさん:
「子どもは鎹(かすがい)」とよく言いますが、うちの場合は「犬は鎹」だと思います。認知症になって祖母はイライラすることも多かったのですが、犬が寄っていくと笑顔になるんです。
記憶が薄れていくなかでも、犬の名前だけは未だに忘れないんですよ。それくらい、特別な存在なのだと思います。
母と妹も病気で落ち込みがちになりますが、そんなときも犬がそっと寄り添ってくれるので、気持ちが軽くなるようです。
犬の人懐っこい性格のおかげで、家族全員が支えられています。
――最後になりますが、今後、犬とどう過ごしていきたいですか?
ろぼさん:
うちの子は9歳と高齢になり、目も白くなってきています。犬の一生は人間よりずっと短いので、永遠に一緒にいられるわけじゃない…と残された時間に寂しさを感じています。
だからこそ、かけがえのない一日一日を大切に過ごしたいと思います。
・・・
愛犬の話をするろぼさんはとても優しい表情で、本当に大切な存在ということが伝わってきました。
ペットへの愛情、困難に立ち向かう家族との絆。胸が熱くなるお話の数々に、日々を生き抜くための力を分けてもらったような気がします。
ろぼさんとご家族が、犬とともにあたたかく和やかな日々をこれからも過ごせますように。
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(取材・執筆=あんぬ/編集=小嶋 絵美)
