瀬戸際の戦い
「瀬戸際」という言葉は、
本来、崖のような場所に使うものなのだと思います。
けれど実際には、
人生の瀬戸際は、
もっと静かに日常の中へ紛れ込んでいます。
たとえば、
ボーナスの査定で、
「これくらいでいいか」と飲み込むか、
一度だけでも言葉にしてみるか。
会議で、
「違うと思います」と言うか、
空気を読んで黙るか。
コンビニで、
疲れて甘いものを買うか、
今日はやめて帰るか。
早く寝るか、
意味もなくスマホを見続けるか。
そんな、
他人から見ればどうでもいいような小さな場面で、
人は何度も、
静かな瀬戸際に立っているのだと思います。
しかも厄介なのは、
大きな戦いよりも、
こういう小さな戦いの方が、
ずっと回数が多いことです。
一回の敗北で、
人生が大きく変わることは、
案外ありません。
けれど、
「まあいいか」が積み重なると、
気づかないうちに、
自分の輪郭が少しずつ変わっていきます。
だからこそ、
日常は案外、
静かな戦場なのかもしれません。
ただ、
ここで勘違いしたくないのは、
全部に勝たなくてもいいということです。
負ける日もあります。
逃げる日もあります。
疲れて、
何も守れない日もあります。
それでも、
たまに踏ん張ることができれば、
人は案外、
簡単には崩れないのだと思います。
人生を決めるのは、
劇的な一撃ではなく、
誰にも見えない場所での、
小さな踏ん張りの積み重ねなのかもしれません。
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