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高齢者本人には聞かず、「施設側から聞いた通りに判断」|宝塚市虐待調査の証拠音声48秒

最終更新日:2026年8月7日

「虐待の調査としては、施設側から聞いた通りに判断いたしました」「裏付けがあるかの質問はしておりませんね」

これは、虐待通報を受けて、高齢者施設へ立入調査を実施した宝塚市の調査責任者の発言です。

証拠として、実際の通話録音が残っているのです。わずか48秒の音声には、社会通念上、見過ごし難い言葉が記録されています。

高齢者本人の面接を行わずに判断

調査責任者は、対象の高齢者は居室で眠っていたため、面接や聴取をしていないと説明。市は、本人の心身の状態を確認せずに「虐待なし」と判断したのです。

当然、家族は、せめて一度だけでも本人に会ってほしいと懇願しました。それでも聞き入れず、調査は終了しました。

では、宝塚市は何を根拠に「虐待なし」と判断したのでしょうか。調査責任者は、こう説明しています。

調査責任者「お母様の眠っている様子を拝見したところ、中身のほうの確認が十分にとれたと判断いたしました」

はて、眠っている他人を目視して、心身の状態を確認できるのでしょうか。その職務上の判断は、国の虐待対応マニュアルに反していないだろうか。

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/12304250/001225723.pdf

施設側の説明に裏付けがあるか、確認していなかった

家族側は調査責任者に、施設側の説明をそのまま採用したのではないかと尋ねています。

その問いに対する調査責任者の回答が、次の48秒です。
あなたは、この説明をどう評価しますか。

市民:施設側の聞き取り内容の裏取りをしたのですか。

調査責任者:調査としては、施設側から聞いた通りに判断しました。

市民:それ以上のものはないということですか。

調査責任者:それ以上のものはないです。

その前後の会話では、調査責任者が、

「裏付けがあるかの質問はしておりません」

と認めています。

つまり、この証拠録音を整理すると、こうなります。

①本人に直接話を聞いていない。

②施設側の説明に裏付けがあるかどうかも質問していない。

③そして、施設側から聞いた内容を事実として判断した。

宝塚市自身も、国の虐待対応マニュアルを踏まえて対応すると明記

本件について、家族側は当時から、本人への聞き取りを行わなかったことや、事前に説明された調査手順との違いについて、客観性のある説明を求めていました。

その際、調査責任者から厚生労働省の高齢者虐待対応マニュアルが渡されました。さらに宝塚市は、調査責任者の上司と部局長の連名文書で、事実確認のための調査を行う際には、同資料を踏まえて対応しているとメール回答に明記しています。

さて、市が自ら示した国の基準に照らして、実際の調査は適切だったのか。まさに、そこが本稿の核心です。

※宝塚市健康福祉部長・安心ネットワーク推進室長の連名文書(2023年1月16日)。事実確認のための調査では、厚生労働省の高齢者虐待対応資料を踏まえて対応していると明記。

本件調査では、調査責任者自信が以下の事実を認めた証拠録音が存在します。

  1. 高齢者本人に面接し、その心身の状態を確認しなかった

  2. 施設側職員から「聞いた通りに判断した」

  3. その内容の、裏付けすら問わなかった

  4. 「それ以上のものはない」と明言した。

では、何を確認し、何を確認せず、どの証拠によってのみ結論を出したのか。市には、調査過程を客観性のある事実をもとに説明する責任があるのではないだろうか。「適切に判断した」という言葉の繰り返しでは足りません。

そもそも「聞いた通りに判断した」は判断といえるのか

ここで、少し言葉の意味を考えたいと思います。

  1. 施設側の説明を聞く。

  2. 裏付けを確認しない。

  3. 対象者本人には事情を聞かない。

  4. 「聞いた通りに判断した」「眠っている様子を拝見したところ、確認が十分にとれた」と説明する。

本来は、市は施設側と被害を訴える側の双方から距離を取り、客観的な事実を確認して判断する立場です。

だからこそ、調査責任者の「聞いた通りに判断した」という発言の意味は重いのです。不自然であり、独立した事実確認を伴う行政の判断といえるのだろうか。

「判断した」という言葉繰り返し使っても、調査の公正さが証明されることにはなりません。

調査から9か月が経過しても、上司は内容を確認していなかった

証拠録音には、もう一つ見過ごせない発言がある。

家族側が、「調査内容を上司に確認してもらったのか」と尋ねると、調査責任者は、次のように答えている。

調査責任者「いえ、まだ上司はそこまで見ておりません」

すでに、調査判断から9か月以上が経過しています。

①高齢者本人への面接を行わなかった。
②施設側の説明の裏付けを確認しなかった。
③家族が調査の不審点を繰り返し訴えていた。

上司が、調査内容を確認していないのであれば、問題は一人の調査責任者だけにとどまりません。

調査結果を検証する仕組みが組織として機能していないのではないかという重大な問題が生じます。実際に、市の調査報告書には、虐待対応マニュアルに記されたケース対応記録という再検証に重要な書類が存在しませんでした。

調査の不審点を問い続けた市民を「社会通念を理由」に対話拒否する組織

担当部局のトップである健康福祉部長は、調査の不審点の説明を求める市民の言動を、「社会通念上相当な範囲を超える」と断ずる市長名文書を発出し、対話の扉を閉じました。

今も、市には、説明できない調査の不審点が残ったままです。なぜ、調査過程を再検証するのではなく、説明を求める市民との対話を拒否する対応が選ばれたのでしょうか。

しかし、市職員の公務上の言動もまた、市民と同等以上の社会通念・公務員倫理によって世論に評価されます。

宝塚市議会でも明確な疑義が示された

本件は、市議会でも取り上げられました。中山ゆうすけ市議は市民から提供された録音など大量の一次資料を精査し、この市長名文書は「市民を貶める方向へと改変されたものであると感じられた」と公言。少なくとも公開された議事録上、市側が中山市議に発言の撤回や訂正を求めた事実は確認できません。

市議会の場で、虐待調査と、その後の市民への対応について具体的な疑義が示されたのです。市議会の議事録に残された、公的な疑義です。

さて、48秒の音声を、あなたはどう評価しますか

この48秒を聞いて、あなたは公正な虐待調査だったと思うだろうか。

市職員は、市として対応したという言葉を盾に、自らの判断の責任を曖昧にしがちです。よって、本稿で検証した内容に関わった職員の、当時の役職を記録しておきます。

本件調査と、その後の説明・対応に関わった市職員

健康福祉部長(当時)
藤本 宜則(現・上下水道管理者 特別職)
安心ネットワーク推進室長(当時)
前田優子(現・上下水道経営管理部長)
介護保険課長/高齢者虐待調査責任者(当時)
小川奈緒子(現・総務部 契約課長)
介護保険課職員/高齢者虐待調査実務担当(当時)
吉井奈緒子(当時)

問われているのは、誰が何を確認し、どの段階で組織的な検証が行われたのかです。個人の問題だけではなく、宝塚市の調査・検証体制そのものが問われています。

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