私的名盤 6. David Bowie 『The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars』 1972🇬🇧
エルヴィスがハートブレイクホテルで腰を揺らし、ロックンロールが始まった。
以来、数多くのアルバムがリリースされ、人々を魅了し記憶されてきた。ミュージシャン側も手を変え品を変え、いろんなアプローチから作品をリリースしてきた。
コンセプトアルバム。
私の記念すべき第1回目に取り挙げたビートルズの超名盤『Sgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Band』の回でコンセプトアルバムについて少し触れた。
それ以来さまざまなミュージシャンが多種多様のコンセプトに基づいてアルバムを作ってきたが、このボウイの5枚目のアルバム 『The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars』(長ったらしいんで以後『Ziggy Stardust』とする)ほど強烈なコンセプトを持ったアルバムはないのではないか。
何せ、地球に舞い降りた異星から来たシギーが
ロックスターとして成功しそして堕ちていく。
これを一枚のアルバムに表現する。
これ以上のコンセプトはないであろう。
グラムロック
ボウイ、T-Rex、ロキシー・ミュージックetc…
綺羅星の如く70年代前半にグラマラスなミュージシャンたちが現れる。
ラメやスパンコールのコスチュームにアイシャドウ、それに厚底ブーツ。
狂おしいくらいのステージアクションでファンを虜にした。
グラムロックの流行りは短かったけれど、そのブームの真っ只中に作られたのがこのアルバム。

Ziggy Stardust
前作「ハンキー・ドリー」リリース前にすでにこのアルバムが製作に入っていた事から、恐らく今ひとつ乗り切れない自分との葛藤があったのではないかと思う。
作風をロックンロールにシフトし、髪をオレンジに染め、短髪に切り揃え、後に作品ごとにキャラクターを変え、そのキャラクターになり切った片鱗が伺える。
アルバムを初めて聴いた高校生当時から、この『ジギー・スターダスト』のジャケットが好きだ。
ロンドンの裏通りのゴミ置き場に、ギターを片手に堕ちて来た異星人。ジギースターダストにぴったりだって思っていた。
この不気味なアルバムジャケットの写真は、そもそもモノクロで撮られた写真に着色したものらしく、それが却って何か微妙に狂った世界観とマッチしているように感じる。
収録曲
“僕たちにはあと5年しかない”
A-1「Five Years」でボウイは悲痛な声で叫ぶ。
何というアルバムのオープニングだ。絶望から始まるアルバム。
そしてスターマンの登場。
A-4「Starman」言わずと知れたボウイの代表曲であるが、実はアルバムが完成した後シングルになるような曲がなかったため、急遽作った曲とのこと。恐るべしボウイ。
この曲は歌詞をよく読むと何てロマンチックな曲だろうと思う。
愛や夢を語るだけがロマンチックなんじゃない。
想像してみてほしい。
スターマンが空で子供たちに交信してくる。そしてもっと自由に生きようって。まあ、正確な訳ではないと思うがそんな感じだと思う。
“Let all the children boogie”
子どもたちを踊らせよう。スターマンはロックスターで、ボウイだ。
「トップ・オブ・ザ・ポップス」という番組でのボウイのスタジオライブの映像がある。
グラムロック全開!的な衣装を纏い、オレンジのショートヘアに青いアコギ。
オッドアイと歯並びの悪さも相まって、もうスターマンにしか見えない。
ゾッとするほど最高のロックスターがそこにいる。
女の子を誘惑してイイ事に持ち込もうとしているのか。B-3「Hang On To Yourself」。
かねがね、最高のロックンロールを聴くと、もしその曲をエルヴィス・プレスリーが歌うとどんなんだろうと想像する。
もしボウイのこの曲を、ロックンロールのキングが、って。
ピタっとハマる。
特にサビの”come on come on”のところなんかエルヴィスそのものではないか、って。
そして次は名曲B-4「Ziggy Stardust」。
ミック・ロンソンが弾くイントロがいい。
ミックの粘っこいギターは、この時期のボウイには無くてはならない。
テクニックのあるギタリストではないかもしれない。でもグラムロックを体現したギタリストであった。
この「Ziggy Stardust」にはミックのギターが1番しっくりくる。

B-5「Suffragette City」。曲調はストレートなだが、歌詞はちょっと複雑だ。
性的な匂いがプンプンする。
しかも、バイセクシャルだ。
完璧に英語の歌詞の意味をしらなくても、なんとなくの意味さえ知っていれば却って想像が膨らみ、より歌詞がリアルに見えてくる。
“wham bam, thank you ma’am!” ー 早く済ませる性行為。
ラスト前のこの歌詞にそんな意味があったとは!
しかし、何て難解な歌詞なんだろう。
そして最後はB-6「Rock And Roll Suicide」だ。
正直、この曲でのボウイの悲痛な叫びは感じても、歌詞の意味までも深くわからない。
だから感じたままに書かせてもらう。
グラムロック全般に言えることだが、ストリングスの使い方が非常に効果的だと思う。
特に、後にボウイと組む事になるトニー・ヴィスコンティのストリングスアレンジはたまらない(トニーはT.Rexやスパークスのプロデュースもしている)。
狂気じみていると言えばよいのか、そういうイメージだ。
このアルバムではケン・スコットと共同プロデュースという形をとっているが、やはりこの曲でも狂気じみている、と感じる。
それがジギーの悲痛な叫びと相まってこの曲を特別なものにしていると感じる。
その後
このアルバムをリリース後、ライブツアーに出る。そしてツアー中のアメリカで『アラジン・セイン』というアルバムを製作する。
『ジギー・スターダスト』に負けず劣らずの名盤だ。
恐らくボウイがジギーになったのはアルバム完成後ではないだろうか。『ジギー・スターダスト』というアルバムを完成させて、ツアーでジギーになりっていったのではないか。
そうすると、この『アラジン・セイン』は、ジギーとしてレコーディングしたのではないか。
私はこの2枚のアルバムは双子の兄弟のような気がしてならない。そう思っている人はかなりいるんではないだろうか。
だから、このツアー中に『アラジン・セイン』をリリースし、ジギーとしてツアーを終えた時に引退宣言をしたんだと思う。
ジギーを葬るために。
また新しい”ジギー”を見つけるために。
ボウイが本物のスターマンになって、10年だ。
もう新しいボウイが見れないのは寂しいが、私たちはまだボウイが残したトリックを解き切ってない。
この世紀のロックスターにまだまだ振り回され続けるのだろう。
なんてしあわせなんだろう。
