何かのリスクを排除すると別のリスクが高まる
今回からシリーズで『リスクマネジメント』について考察していきたいと思います。
世間を騒がす何か大きな事件があった時に
『○○は危ない! 規制してリスクを排除すべき』
という世論になってしまうことが多々あります
ですが
①リスクを排除するには相応のコストがかかること
②リスクを排除すると別のリスクが高まること
を理解している人は決して多くはありません
発がん性物質の基準を例に話をすると
そもそも人間の死ぬ確率は100%ですよね
発がん性物質を規制して
がんで亡くなる人を減らした場合
その人が別の原因で亡くなるまでの時間が延びて
その結果、別の疾病を経験する機会が増えます
極端に単純化してたとえると
がんになる人が減った場合には
脳出血でマヒが残り苦しむ人
認知症で家族に介護の負担をかける人
が増えるかもしれない訳です
もちろん長生きして老衰で亡くなる人も
増えるかもしれませんが、、、
発がんのリスクを回避した結果
別のリスクが高まる訳です
(ただし病気になるまでの期間は伸びます)
本シリーズでメインでお話するのは
『原発事故』の時の話です
東日本大震災で原発事故があった時に
『原発のリスク』が世間に認知されることになり
反原発のムードが高まり
原発が長期にわたり稼働停止となりました
ですが本来は
原発を停止させて
事故を起こすリスクを排除しようとするならば
原発を停止させることによるリスクも
評価しなければならなかったはずです
原発を停止させた以上
火力発電に頼らざるを得なくなり
・電力供給が足りずに大規模停電が起こるリスク
・二酸化炭素放出による地球温暖化促進と
それによる集中豪雨などによる水害の増加のリスク
を負った訳ですね
そして自然エネルギー推進で
・太陽光発電パネルの設置による環境破壊のリスク
も負うことになり
さらには
・中東紛争で化石燃料の供給不足に陥るリスク
も高まった訳です
でも
原発事故が起こると悲惨なことになるではないか?
という反論が来るかもしれませんが
では福島の原発事故はどの程度悲惨だったのか
を定量的に計算をしているのでしょうか?
もちろん放射性廃棄物が大量に出てしまったことは
将来にわたる『負債』を抱えたことになります
ですが、原発が爆発したのは
『核爆発』ではなくて『水素爆発』であり
冷却機能を失い高温になった核燃料と水蒸気が化学反応を起こして大量の水素が発生し、それが建屋内に充満して酸素と激しく反応(引火)することで起きる爆発現象
福島県内での放射線による健康被害の影響は
受動喫煙の影響に比べると少ないことは
事故直後に公表されたデータから
僕は計算できました
つまり
福島第一原発事故は非常に重大な事故でしたが
事故の規模から人々が想像したほどの
放射線による健康被害が確認されたわけでは
なかったのです
健康影響の中には
避難による生活環境の変化や
精神的ストレスによるものもあり
リスクを定量的に評価できなかったことで
必要以上の『恐怖心』が生まれ
それが健康や生活に影響を及ぼした面も
あったのではないでしょうか
原発の事故で漏出した放射線により
受ける健康被害・リスクと
・電力供給が足りずに大規模停電が起こるリスク
・二酸化炭素放出による地球温暖化促進と
それによる集中豪雨などによる水害の増加のリスク
・太陽光発電パネルの設置による環境破壊のリスク
・中東紛争で化石燃料の供給不足に陥るリスク
これらを比較する必要があったのですが
マスコミが定量的なデータを示さず
過剰に国民の不安を煽った結果
国民は良くない選択をしたと僕は考えています
定量的なデータに基づいた意思決定が必要だが、比較的多くの人が数字で物事を捉えられない
受験系の情報を集めていた中で
『数学的な思考能力は遺伝による影響が大きい』
という話によく触れてきて
比較的多くの人が
数字で物事を捉えることができない
ということが見えてきました
民主主義という仕組の難しいところは
数字で物事を捉えることができない人たちが
『ふわっとしたイメージ』で意思決定してしまい
間違った選択を取ってしまうということですね
データを根拠に意思決定することは
大事なのですが
多くの人は数字にアレルギーを示しますし
『数字は嘘をつかないが
嘘つきは数字を使う』
という格言もあります
僕が記事を書く時に
データをあまり載せないのは
数字を出すことに
嘘くささを感じてしまうからです
実際、福島原発事故の折の
専門家の発表を聞いて
『何かを隠しているのではないか?』
という不信感を持った人も多いようです
研究者はついつい
『危険性はゼロではない』
という言い方をしてしまいがちですが
一般人はそれを
『危険性がある』
と解釈してしまう訳です
リスクマネジメントについて議論する時に
一番ネックになるのはこの部分で
『リスクを厳密な数字で示すことは難しい』
という点ですね
0.01%は起こらないと見なせるのか
その0.01%という試算は本当に正しいのか
これはどこまで行っても平行線です
仮にリスクを定量的に評価できたとしても
数字にアレルギーを持つ人が多いため
納得してもらうことは難しいのです
次回に続く
長くなってきたので
今回はここで一旦まとめます
「何かのリスクをゼロにすること」と
「社会全体のリスクを小さくすること」
は同じではないのですね
たとえば
自動車事故を減らすために自動車を禁止する
→ 自動車事故は減る
→ しかし物流・救急・移動など別のリスクやコストが発生する
食品の食中毒リスクをゼロにするために生ものを禁止する
→ 食中毒は減る
→ 食文化や事業者の利益、消費者の選択肢など別のコストが発生する
つまり
リスクマネジメントとは「危険なものを排除すること」ではなく、「複数のリスクとコストを比較して、社会全体として許容できる水準にすること」
なのです
今回の記事をまとめると
・何かのリスクを排除すると別のリスクが高まる
・リスクを定量的に評価することが必要だが実際は難しい
・仮に定量的に評価できたとしても
数字にアレルギーを持つ人が多数派であり
納得してもらうことは難しい
ですね
次回はデータを根拠に意思決定しなかったため
起こってしまったこと
から書いていきたいと思います
ここまでお読み下さりありがとうございました
ではまた!
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