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【創作大賞2025参加作・連載小説】夜は暗い ⑭


「黒さん、今話せる?」
「大丈夫だ。君は今どこにいる?」
「箱根湯本」
「箱根湯本?どうしたんだ?男にでも誘われたか?」
「何バカな事言ってんのよ。ケータ君をつけてたら、ここまで来る羽目になったのよ」
「ケータ君を?ひょっとして君は、あれからずっとケータ君のマンションを張ってたのか?」
「一昨日と昨日は、他の仕事があったので無理だったんだけど、今日の夕方にあのマンションの前に行ったら、丁度ケータ君がエントランスから出てきて、そのままつけてたらここまで来たという訳なの」
「それで今はどこだ?ホテル?」
「違う。何か、大金持ちの別荘みたいなところの前」
「外で立ってるのか?」
「まさか…ここ、駅から近いのですぐにレンタカー屋へ行って車借りたのよ。だから今は車の中。コンビニで食料や飲み物を買ってあるし、そのコンビニも近いからトイレも心配ないの」
「そいつは良かった。俺は今日はグデングデンだから、明日の早いうちに車でそっちへ向かうよ。何かあったら連絡くれ」
「何、また飲みすぎたの?誰と一緒?」
「岩田だ。あっ、そうそう、有紗ちゃんの写真は手に入ったのか?」
「まだよ。何せ私はまだケータ君と話せてないんだから」
「そうか、今日色々分かったんだが、電話では何なんで、明日会った時にまとめて話すよ。但し、大事な事を二点話す。いいかい?」
「いいわ」
「一点目は、有紗ちゃんは死んでるかもしれないという事だ。殺人なのか、自殺なのかはまだ分からんのだが、薬の影響で風呂で溺れ死んだのかもしれないんだ」
「かもしれないって、どういう事?」
「所轄がまだ、被害者を特定できてないんだよ。被害者は現在身元不明のままだ」
「どこで死んだの?」
「小田原のビジネスホテル…」

あっ!

箱根湯本と小田原は近い!
私の頭の中で何かが弾けた!
ヤバい…

「島野、前言撤回だ!俺は今からすぐにそっちへ向かうから、ケータ君のいる建物から絶対に見つからなさそうなところへ車を動かして、そこから動くな。できるだけ早くそっちへ行くから、それまで待ってろ」
「ええ、何、急に?怖いんだけど…」
「そりゃ怖いさ。何しろ、一人死んでるからな。何があってもおかしくない。とにかく、誰か運転できるヤツを捕まえて俺の車で出かける。俺が着くまで、おとなしく待っててほしい」
「分かった。で、後、もう一個は何?」
「あっ、ああ、有紗ちゃんだけど、超がつくほどのゴスロリだったらしい。これは一応情報までだ」
「分かった。じゃあ待ってる」
「ああ、何か動きがあったら、すぐに連絡してくれ」
「分かった」

私は再度石堂へ電話をかけた。



石堂は金次郎君を貸してくれた。
何でも彼は昔「首都高族」だったらしく、運転には自信があるという事だった。
彼とは私の車が置いてある月極の駐車場前で待ち合わせた。

彼はフルチューンしたGT-Rでやってきた。
「黒崎さん、乗って下さい。こっちの方が早いんで…」
確かに私のプリウスよりは早いのは間違いなさそうだ。
私は助手席に乗り込みながら、「吐きそうなほど飲んでるんだ。お手柔らかに」と言った。
すると彼は「大丈夫です。ゲロ袋は積んであります」と涼しい顔で言った。
車は動き出した。
すぐに私は、この車に乗ってしまった事を後悔した。


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