【第3部②】AIに予定表を読ませたら
機械は、同じ言葉しか“同じ”と思わない
まずは、読むだけ
前回、決めたとおりです。 AIくんの最初の仕事は、「予定表を、読むだけ」。
僕は、予定表を用意しました。 日付と予定名を並べただけの、シンプルな表です。 そして、AIくんに頼みました。
「この予定表を見て、今週やることを教えて。」
AIくんは静かに読み始めました。 今度こそ、平和な一歩だ──そう思ったんですが。
半分、見落とされた
返ってきた「今週の予定」を見て、僕は首をかしげました。
……少ない。
予定表にはもっと書いてあったはずなのに、 AIくんが拾ってきたのは、その半分くらい。
「これ、これも今週じゃない? なんで拾わないんだ。」
AIくんは平然と答えました。
「それは、別の予定だと判断しました。」
別の? 指さした先を見て、僕は理由が分かりました。
僕は予定表に、こう書いていたんです。
安全パトロール 案内
安全パト 結果報告
パト報告 とりまとめ
──ぜんぶ同じ「安全パトロール」まわりの仕事のつもりでした。 でもAIくんには、
「安全パトロール」 「安全パト」 「パト報告」
が、まったく別々の予定に見えていたんです。
AIくん「“安全パト”と“安全パトロール”は、別の儀式かと。」
儀式じゃない。同じパトロールだ。
機械は「同じ言葉」しか、同じだと思わない
ここで僕は思い出しました。 これはAIが悪いというより、僕の書き方の問題でもある、と。
人間なら、「安全パト」と書いてあっても、 「あ、安全パトロールのことね」と勝手に補って読みます。 略語も、言い換えも、文脈でなんとなく分かる。
でも、機械はそれをしません。
文字が違う。だから違うもの。 ──それだけの話です。
これ、安全の現場でもまったく同じことがあります。
保護メガネ
防護メガネ
ゴーグル
人間同士なら通じます。 でも集計・チェックの段になると、 表記ゆれは必ず、抜けや取り違えを生む。
安全の世界では昔から言われてきました。 用語は、そろえる。
予定の名前を、毎回おなじ言葉に(安定)
直し方は、簡単でした。 AIを賢くするんじゃなく、こっちの書き方をそろえる。
ひとつの予定には、ひとつの正式名だけ
「安全パト」「パト報告」禁止
ぜんぶ「安全パトロール」に統一
略さない・言い換えない
予定表の「予定名」を毎回まったく同じ言葉にそろえたら── AIくんは、こんどはひとつも取りこぼさず、全部拾ってきました。
賢くしたわけじゃない。 ただ、機械が“同じだ”と分かる書き方にしてあげただけ。
まとめ
そろえるのは、AIのためだけじゃありませんでした。
「安全パト」と書いた紙と、「安全パトロール」と書いた紙。
人が見ても、別の書類だと思うことがあります。
用語をそろえるのは、機械のためであり、人のためでもありました。
AIに仕事を任せる、その手前で大事なことがありました。 それは、
「機械が“同じ”と分かる言葉に、そろえておく」こと。
人間の“なんとなく分かる”は便利です。 でも、その“なんとなく”に頼ったまま自動化すると、 静かに、抜けが生まれます。
──用語をそろえる。 地味だけれど、安全の現場がずっと大事にしてきたことでした。
次回予告
名前をそろえたら、予定はちゃんと拾えるようになりました。 「よし、あとは完成したメールをコピーするだけだ」──そう思ったんですが。
そこから、2日、溶けました。
AIくんは、何度も「できました」と言いました。 中身は、空っぽなのに。
(第3部③ 「できました」を信じた日 へ続く)
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