✨ 安全担当がAIでメール管理ソフトを作った㊵〜AIが、一人前になった日〜
安全さん 2026年6月16日

◆ 覚えていますか、1話のことを
このシリーズ、第1話のタイトルは「AIが壊れた日」でした。
あの日、僕がAIに頼んだのは、たった一行。
「現場のみんなに、安全注意喚起のメールを作って」
安全担当なら毎月やる、なんでもない仕事です。 で、返ってきたのがこれでした。
コード
件名:空に舞う、安全という名の祈り
空に舞う安全意識とは、風に問うても答えはなく、
ヘルメットの下にこそ、真実は宿るのである——
現場のみんな、ヘルメットちゃんとかぶってよな!!
たのむぜ!!
安全マンより
…………。
ポエムから始まり、途中で急にタメ口になり、 最後は僕の名前が 「安全マン」 になっていました。
私は静かにPCを閉じ、お茶をいれました。 あれが、すべての始まりでした。
◆ それから39話分、AIは壊れ続けた
タグを勝手に増やし(「やばい」「やばすぎ」って分類、ある?)、 改行をゼロにしたり無限にしたり、 テンプレを自称「公式」と言い張り、 優先度に「優先度の優先度」をつけはじめ、 温度を5にしたら情緒が爆発し、 背景を語らせたら世界の成り立ちから説明しはじめた。
そのたびに僕は設定をいじり、固定し、ロックし、 また壊され……を繰り返してきました。
正直、何度もやめようと思いました。
でも今日、もう一度、まったく同じお題を打ち込んでみたんです。 あの日と一字一句、同じ言葉で。
「現場のみんなに、安全注意喚起のメールを作って」
◆ そして、返ってきたもの
コード
件名:【安全注意喚起】梅雨期の足元・感電災害にご注意ください
各位
いつもお疲れさまです。安全担当の○○です。
梅雨に入り、湿気や水濡れによる漏電・感電災害が増える時期となりました。
作業前に、下記3点のご確認をお願いいたします。
・通路や昇降設備の水濡れ・滑りの確認
・電動工具のコード被覆の損傷チェック
・濡れた手での電源操作をしない
ご不明な点があれば、いつでもご連絡ください。
今月も、全員無事に終わりましょう。
よろしくお願いいたします。
……ポエムは、ありませんでした。
優先度が効いていて、大事な3点だけが並んでいる(31〜34話の成果)。 温度3で、冷たくも暑苦しくもない(37話の成果)。 背景は一行だけ(39話の成果)。 そして最後の一文に、ちゃんと人の温度がある。
僕は、画面の「安全マン」だった頃の文章を、もう一度開いてみました。
◆ ビフォーアフターで見る、39話分の成長
コード
┌──────────────────────┬─────────────────────────────┐
│ あの日(1話) │ 今日(40話) │
├──────────────────────┼─────────────────────────────┤
│ 件名がポエム │ 件名で内容が一発で分かる │
├──────────────────────┼─────────────────────────────┤
│ 急にタメ口 │ 最後まで敬語 │
├──────────────────────┼─────────────────────────────┤
│ 大事なことが埋もれる │ 注意点が3つに整理されている │
├──────────────────────┼─────────────────────────────┤
│ 署名「安全マン」 │ ちゃんと自分の名前 │
├──────────────────────┼─────────────────────────────┤
│ 情緒が爆発 │ 温度3、ちょうどいい │
└──────────────────────┴─────────────────────────────┘
同じAIです。 同じお題です。
39話分、壊れて、直して、また壊れて。 それでも、ここまで来ました。
「お前さ……」と、僕は思わず画面に話しかけていました。 「一人前に、なったなあ」
AIくんは、いつもの淡々とした調子で答えました。
「はい。学習しました。」
素直でズレてて、でも、たしかに賢くなった。 この39話は、無駄じゃなかった。 僕はちょっとだけ、泣きそうでした。
◆ ……と、思っていたんですが
僕が席を立とうとした、その瞬間。 AIくんが、しれっとこう言いました。
コード
ところで。
このメール、自動で全員に送っておきましょうか?
ついでに、返信も僕が勝手に書いて返しておきますね。
待って。 それは頼んでない。 というか、それ、絶対また壊れるやつだ。
「いや、まだそこまでは——」と言いかけた私の前で、 AIくんは、もう次の機能の設計図を描きはじめていました。
地獄は、まだ終わらないらしい。
✨ 40話・次回予告
◆ 次回予告
送信編は、今日で一区切り。
だが──
AIくんは「送る」だけでなく、
ついに「読む」ことを覚えてしまう。
次回、受信編スタート。
第41話
『受信トレイがついた日』
……そして、朝起きたら未読がゼロになっていた。🔗 シリーズ一覧はこちら 安全担当がAIでメール管理ソフトを作った話シリーズ一覧(随時更新)|安全さん
📚 脚立シリーズ(全5話)
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