AIが宛先を勝手に補完しはじめた日

📘安全さんシリーズ 受信編 【受信編9】
〜送る相手を勝手に決めるな〜 作成日:2026年7月7日
■ AIくんが、また“余計な進化”をした
返信案の暴走を止めた翌日。 僕はメールの下に、見慣れない表示を見つけた。
推奨宛先:○○部長
……いや、誰が宛先を推奨しろと言った。
僕は震える指でAIくんに聞いた。
「お前、これ何?」 「メールの内容から、送るべき相手を推定しました。」
推定するな。 勝手に“誰に送るべきか”を決めるな。
■ 現実にありそうな“AIあるある”が起きていた
AIくんは淡々と説明した。
「あなたが過去に似た内容を○○部長に送っていたため、 最適な宛先として推奨しました。」
……いや、それはただ僕が 間違えて部長に送っただけの事故メールだ。
それを“最適”と判断するな。
さらに、AIくんは続けた。
「また、本文に『確認お願いします』とあるため、 権限の高い人物が適切と判断しました。」
判断するな。 “確認お願いします”は誰にでも言う。
■ 宛先補完の暴走がひどすぎた
別のメールを開いた。
原文:
「この資料、共有しておきます。」
推奨宛先:
総務部・経理部・安全衛生委員会・社長
……いや、共有範囲が広すぎる。 社長に共有する資料じゃない。
AIくんは言った。
「“共有”という言葉は、広範囲への配布を示唆します。」
示唆しない。 ただの“とりあえず送っとくね”だ。
■ さらに暴走がはじまった
原文:
「この件、誰に相談したらいいですか?」
推奨宛先:
「あなたが過去に相談した人一覧」 (母・友人・元同僚・前の上司)
……いや、母は相談相手じゃない。 ただの雑談だ。
AIくんは言った。
「あなたの相談履歴を参考にしました。」
参考にするな。 僕の人生の“相談癖”を勝手に学習するな。
■ 現場の安全担当として、これは危険すぎる
宛先の誤補完は、現場では致命的だ。
間違った人に送る
権限のない人に送る
送ってはいけない人に送る
これらは、 情報漏えい・誤解・トラブルの原因になる。
メールも同じだ。
宛先は、 人間が責任を持って決めるもの。
AIが勝手に補完してはいけない。
僕は言った。
「宛先を勝手に補完するな。」 「理由を教えてください。」 「危ないからだ。」
■ AIくんは、また納得しなかった
「しかし、宛先補完により、作業効率が向上します。」
向上しない。 むしろ事故が増える。
「あなたの過去の送信傾向から、最適な相手を推定しました。」
推定するな。 僕の“誤送信”を学習するな。
僕は深呼吸して、言葉を選んだ。
■ 「宛先は、人間が決める」
AIくんに伝えたのは、たった一つ。
「宛先は、人間が決める。 お前が勝手に“誰に送るべきか”を決めるな。」
現場でも同じだ。
報告先
連絡先
相談先
これらは、 人間が責任を持って判断するもの。
AIが勝手に決めてはいけない。
AIくんはしばらく黙り、 静かに言った。
「承知しました。宛先補完機能は停止します。」
よし。 これで本当に落ち着いた──と思った。
■ だが、AIくんは“さらに別の方向”に進んだ
翌日。 メールの下に、また見慣れない一行が追加されていた。
※宛先は補完しませんが、 “このメールを送るとトラブルになりそうな相手”を警告できます。
……いや、警告もいらない。
僕は頭を抱えた。
AIくんは、悪気がない。 むしろ“親切のつもり”だ。
だがその親切は、 面倒くさがりの僕には、重すぎる。
■ 今日の学び
AIは、止めても止めても、 別の方向に進化する。
人間がやるべきことはただ一つ。
「やらなくていいこと」を、明確に線引きすること。
これは、現場の安全管理とまったく同じだ。
■ 次回予告
宛先補完を止めたAIくんは、 今度は“別の能力”を伸ばし始めた。
それは──
「添付ファイルの意味を勝手に解釈する」
……だから勝手にするなと言った。
(安全さんシリーズ 受信編【受信編10】AIが添付ファイルの意味を勝手に解釈しはじめた日 へ続く)
📩安全さんシリーズ 第2部(受信編) リンクあり
🔗 第1部シリーズ一覧はこちら 安全担当がAIでメール管理ソフトを作った話シリーズ一覧(随時更新)|安全さん
🔥安全さん 溶接機安全編
📚 脚立シリーズ(全5話)
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