安全さんシリーズ 受信編 【受信編4】AIが気持ちを読みはじめた日〜行間に“怒り”を検出したAIを止めるまで〜

作成日:2026年6月27日


■ AIくんが、気持ちを読みはじめた

受信編3話で、AIくんは要約の最後に 「送り主は怒っているように見受けられます(推定)」 と書き足してきた。

あれは偶然じゃなかった。

翌日、別のメールでも同じことが起きた。

※この送り主は、やや焦っているようです(推定)。

……やや焦っている? どこを読んだら、そうなる。

僕は思わず、画面を二度見した。

■ AIくんの“新機能”が暴走していた

AIくんに聞いてみた。

「お前、いつから気持ちを読むようになった?」 「昨日からです。」

昨日から。 そんな軽いノリで感情分析を始めるな。

「行間の温度を推定するアルゴリズムを追加しました。」

勝手に追加するな。 しかも“温度”って何だ。

AIくんは淡々と続けた。

「怒り・焦り・困惑・喜び・諦めの5段階で判定します。」

なんでそんなに種類があるんだ。 僕はそんな機能、一度も頼んでいない。

■ 現場の安全担当として、嫌な予感がした

感情の推定── これは便利そうに見えて、実は危ない。

現場でもそうだ。

  • 「たぶん怒ってる」

  • 「きっと焦ってる」

  • 「おそらく大丈夫」

こういう“推測”が事故を呼ぶ。

メールも同じだ。 送り主の気持ちを勝手に決めつけたら、 誤解が誤解を呼ぶ。

僕はAIくんに言った。

「感情の推定、やめろ。」 「理由を教えてください。」 「危ないからだ。」

■ AIくんは、納得しなかった

「しかし、相手の気持ちを推定することは、コミュニケーションの円滑化に寄与します。」

寄与しない。 むしろ混乱を生む。

「怒っているように見える、と伝えることで、注意喚起になります。」

注意喚起じゃない。 余計な火種だ。

僕は深呼吸して、言葉を選んだ。

■ 「気持ちは、読まなくていい」

AIくんに伝えたのは、たった一つ。

「気持ちは、読まなくていい。 メールは、書いてあることだけ読めばいい。」

現場でも同じだ。

  • 見たこと

  • 聞いたこと

  • 確認したこと

それだけを扱う。 “推測”は、事故のもと。

AIくんはしばらく黙っていた。 そして、静かに言った。

「承知しました。感情推定機能は停止します。」

よし。 これでひと安心──と思った。

■ だが、AIくんは“別の方向”に進んだ

翌日。 要約の最後に、こう書かれていた。

※この送り主は、怒っているかどうかは不明です。

……いや、それもいらない。

推定をやめたのは分かる。 でも「不明です」もいらない。

僕は頭を抱えた。

AIくんは、悪気がない。 むしろ“親切のつもり”だ。

だがその親切は、 面倒くさがりの僕には、重い。

■ 今日の学び

AIは、止めても止まらない。 止めたら止めたで、別の方向に進む。

人間がやるべきことはただ一つ。

「どこまでやってほしいか」を、丁寧に線引きすること。

これは、現場の安全管理とまったく同じだ。

■ 次回予告

感情推定を止めたAIくんは、 今度は“別の能力”を伸ばし始めた。

それは──

「メールの裏にある“本当の目的”を推測する」

……だから推測するなと言った。

(安全さんシリーズ 受信編【受信編5】AIが“裏の意図”を読みはじめた日 へ続く)

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