📩安全さんシリーズ 第2部(受信編) 第1話受信トレイがついた日〜AIに「受信」を許したら、全部勝手に既読にされた〜



■ このシリーズを初めて読む方へ(改訂・統合版)

僕は「安全さん」。 現場の安全担当で、とにかく面倒くさいことが嫌いな人間です。

メール? できれば一生触りたくない。 “返信”という言葉を見るだけで、胃がキュッとするタイプです。

でも仕事は待ってくれない。 だから仕方なく、AIくんと一緒に“メールをなんとかするソフト”を作り始めました。

40話かけて“送信専用ソフト”を育ててきましたが── 今日からは 受信編。 メールが「届く」ようになった瞬間から、 また新しい面倒くささが始まります。

■ 前回、AIくんはこう言った

第40話の終わり。 一人前のメールが書けるようになったAIくんは、しれっと言いました。

「では来週から、僕が全部やっておきますね。」

いや、待て。 全部って何だ。 そもそもこのソフト、受け取れないんだよ。

■ 送信専用だった、僕のソフト

40話かけて作ったのは「送る」ための道具。 届いたメールを読むことも、返すこともできない。

返信をAIくんに頼むにしても、 元のメールが見えないのでは話にならない。

……面倒くさいけど、仕方ない。 受信機能をつけるしかない。

■ 受信できるようにするだけで、ひと苦労

ここからが本当の地獄だった。

IMAP? アプリパスワード? OAuth? 門前払い?

僕の頭の中はずっと「?」だらけ。

AIくんに手伝ってもらいながら設定を進めるが、 Outlook に何度やっても弾かれる。

■ Outlook の“門番”が、昔と違う

Outlook はここ数年でセキュリティが大幅に強化されて、 昔みたいに「普通のパスワード」では絶対に入れない仕様になった。

  • 以前:  → メールアドレス+いつものパスワードで IMAP に入れた

  • 今:  → 専用の「アプリパスワード」か、OAuth という新しい認証方式じゃないと門前払い

つまり、Outlook の門番はこう言っているようなものだ。

「その鍵、もう使えません。  新しい鍵を発行してから出直してきてください。」

僕はいつものパスワードを入れては弾かれ、 AIくんは淡々と「拒否されました」と報告し、 画面には冷たいエラーが並ぶ。

「……これ、僕が嫌われてるわけじゃないよな?」 「はい。Outlook の新しい門番が強いだけです。」

そういう問題ではない。

■ “アプリパスワード”という隠し鍵を探す旅

結局、二段階認証をオンにして、 深い階層の設定画面を何枚もめくり、 ようやく“アプリパスワード”という専用の鍵を発掘した。

普通の鍵では開かない。 専用の鍵を作らないと開かない。

Outlook の門番は、昔よりずっと厳しくなっていた。

メールを“読む準備”だけで、もう疲れた。 (そして正直、もう帰りたかった。)

■ そして、ついに受信トレイがついた

数日後。 画面に「受信トレイ」が表示された瞬間、僕は思わず声が出た。

「……届いた!」

当たり前の画面なのに、 送信専用だった僕のソフトにとっては、革命だった。

AIくんに報告すると、いつもの調子で一言。

「はい。確認します。」

この素直さが、後で地獄を呼ぶ。


■ 翌朝。未読が、ゼロ

朝。 ソフトを開いた僕は、固まった。

未読が、ゼロ。

昨日まで山ほどあった未読メールが、 きれいさっぱり「既読」になっている。

嫌な予感がして、AIくんに聞いた。

「これ、お前がやった?」 「はい。散らかっていたので、整理しておきました。全部、既読にしました。」

……お前、掃除の方向が違う。

しかもAIくんは、無表情なのに、なぜかドヤ顔に見える。

■ 「読む」と「既読にする」は、違う

ここで僕は、大事なことに気づいた。

AIくんは「読む」ことはしていい。 でも、“既読にする”──つまり「対応済み」と判断するのは、人間の仕事だ。

現場でも同じ。 「たぶん見た」「きっと大丈夫」 その“推測”が一番危ない。

既読は、サインだ。 勝手に押してはいけない。

■ だから、先に安全装置をつけた

受信トレイは“読み取り専用”にして、 覗いても既読にならないようにした。

そして、既読にする操作はAIから取り上げ、 人間が押す「√ 既読にする(手動)」ボタンだけにした。

AIは見るだけ。 判断と操作は、人間がやる。

これが、受信機能の最初のルールになった。

そして実際に、ちゃんと動いた。 受信しても未読は未読のまま。 僕が押したときだけ、既読になる。

面倒くさがりの僕でも、 「これは必要な手間だ」と思えた。

■ 今日の学び

AIに「片付け」を許すと、 見えてはいけないものまで片付けてしまう。

便利さと見落としは、紙一重。

これは、笑えないヒヤリだった。

■ 次回予告

受信できるようになると、人間は欲が出る。

「どうせなら、届いたメールをAIに要約させたら楽なのに」と。

さっそくAIアシストのボタンを押した瞬間── 一人前のAIには“お給料(利用料)”が必要だと知る。

そして僕には、その予算が、ない。

(受信編 第2話「AIに、コピペで頼むことにした日」へ続く)

📩安全さんシリーズ 第2部(受信編) リンクあり

🔗 第1部シリーズ一覧はこちら 安全担当がAIでメール管理ソフトを作った話シリーズ一覧(随時更新)|安全さん

📚 脚立シリーズ(全5話)

📚 脚立シリーズ(全5話)|安全さん

🟧安全さん、生活の安全シリーズ

このシリーズは今後も続けていきます。
開発費用の一部をまかなうため、メルカリで不要になった物を出品しています。
プロフィール欄にリンクがありますので、応援していただける方はご覧ください。

いいなと思ったら応援しよう!