黄帝内経と水①
東洋医学では、
人は自然の一部であるという「天人相応」の思想が根底にあります。
その中でも水は五行の一つというだけではなく、
多くの場面で人と関わってきました。
今回は「黄帝内経と水」というテーマに絞って色々書いていきます。
人,水也。男女精氣合,而水流形。三月如咀,咀者何?曰五味。五味者何,曰五藏。酸主脾,鹹主肺,辛主腎,苦主肝,甘主心。五藏已具,而後生肉。脾生隔,肺生骨,腎生腦,肝生革,心生肉。五肉已具,而後發為九竅:脾發為鼻,肝發為目,腎發為耳,肺發為竅,五月而成,十月而生;生而目視耳聽心慮;目之所以視,非特山陵之見也,察於荒忽。耳之所聽,非特雷鼓之聞也,察於淑湫。心之所慮,非特知於麤麤也,察於微眇。故修要之精。
管子には
「人とは、水である。男女の精気が合わさり、水が凝って形をなす。」
と書かれています。
この様に古代中国では、
人は水から形づくられる存在として捉えられる事がありました。
黃帝問於歧伯曰:經脈十二者,外合於十二經水,而內屬於五藏六府。
黃帝曰:余聞之,快於耳不解於心,願卒聞之。歧伯答曰:此人之所以參天地而應陰陽也,不可不察。足太陽外合清水,內屬膀胱,而通水道焉。足少陽外合于渭水,內屬于膽。
,內屬于胃。足太陰外合于湖水,內屬于脾。足少陰外合于汝水,內屬于腎。足厥陰外合于澠水,內屬于肝。手太陽外合淮水,內屬小腸,而水道出焉。手少陽外合于漯水,內屬于三焦。手陽明外合于江水,內屬于大腸。手太陰外合于河水,內屬于肺。手少陰外合于濟水,內屬于心。手心主外合于漳水,內屬于心包。凡此五藏六府十二經水者,外有源泉,而內有所稟,此皆內外相貫,如環無端,人經亦然。故天為陽,地為陰,腰以上為天,腰以下為地。故海以北者為陰,湖以北者為陰中之陰;漳以南者為陽,河以北至漳者為陽中之陰;漯以南至江者,為陽中之太陽,此一隅之陰陽也,所以人與天地相參也。
黄帝内経でも人体と自然界の水を対応させ、
十二経脈を十二経水に見立てています。
足少陽胆経=渭水
足陽明胃経=海水
足太陰脾経=湖水
足少陰腎経=汝水
足厥陰肝経=澠水
手太陽小腸経=淮水
手少陽三焦経=漯水
手陽明大腸経=江水
手太陰肺経=河水
手少陰心経=濟水
※手心主=漳水
※手心主は現在の手厥陰心包経を指します。
霊枢 経脈篇には「心主手厥陰心包絡」とありますが、
素問・霊枢の他の箇所では心主と書かれるだけで、
手厥陰とは書かれません。
夫十二經脈者,內屬於府藏,外絡於肢節,夫子乃合之於四海乎。歧伯答曰:人亦有四海,十二經水。經水者,皆注于海,海有東西南北,命曰四海。
黃帝曰:以人應之奈何?歧伯曰:人有髓海,有血海,有氣海,有水谷之海,凡此四者,以應四海也。
更に、経水は皆海に注ぐもので、
東西南北の四海に繋がります。
人体でも四海が存在し、
それが髄海・血海・気海・水穀の海の4つとなります。
黃帝曰:定之奈何?歧伯曰:胃者水穀之海,其輸上在氣街,下至三里;衝脈者,為十二經之海,其輸上在於大杼,下出於巨虛之上下廉;膻中者,為氣之海,其輸上在於柱骨之上下,前在於人迎,腦為髓之海,其輸上在於其蓋,下在風府。
冲为经脉之海,又曰血海。
上の文章から
水穀の海=胃
十二経の海(血海)=衝脉
気海=膻中
髄海=脳
とわかります。
黄帝内経のみをみると
血海ではなくて十二経の海なの?となりますが、
奇経八脈考著者の李時珍等の歴代医家は
文脈的に十二経の海=血海だろうとの事で
この二つを結びつけています。
海論篇にはこれら(気・血・水穀・髄(精))の過不足や流注部位の記載があり、
心身の状態への影響も書かれています。
補足:霊枢を深掘りする史料としての太素・淮南子・山海経
黄帝内経太素では、
海論篇(四海合)と経水篇(十二水)は、
人体を天地・四海・十二水系になぞらえる「人合」として
同じグループにまとめられています。
太素 四海合・十二水には霊枢より具体的な土地が挙げられます。
淮南子 墜形訓を併せて見ると相違点もありますが、
多くの面で一致します。
個人的にはこの霊枢の経水篇・海論篇のみでは
イメージが持てなかった部分が太素と淮南子をサブテキストとして
使う事で想像しやすくなり、
解像度が上がりました。
山海経との共通点も一定みられます。
胃のみが特別
十二経水の中には
「足陽明外合于海水」とあり、
水穀の海である胃のみが
特別なものである事がわかります。
黃帝曰:夫經水之應經脈也,其遠近淺深,水血之多少,各不同,合而以刺之奈何?歧伯答曰:足陽明,五藏六府之海也,其脈大,血多氣盛,熱壯,刺此者不深勿散,不留不寫也。足陽明刺深六分,留十呼。足太陽深五分,留七呼。足少陽深四分,留五呼。足太陰深三分,留四呼。足少陰深二分,留三呼。足厥陰深一分,留二呼。
経水篇でも置鍼時間や深さについて述べている際、
胃(足陽明)は五臓六腑の海だから〜と
他臓腑と差別化されています。
具体的には、胃経は気血の流れが盛んなため、
治療の際は他経よりも深く指し、置鍼時間も長くしなさいとの事です。
経水篇・海論篇を中心に黄帝内経における水の流れを書いてみました。
他にも井滎兪経合なども含めていくと
より具体的なイメージになり、
経脈の理解に繋がっていくと思っています。
今後も水シリーズとして更新していければと思います。
