【神保町】青猫と、まだ開かれていない頁|言葉の街を歩く。
【世界最大級の本の街・神田古本まつり】
本の街には、まだ開かれていない頁がある。
その頁をめくるのは、今日ここを歩くわたし。
靖国通り沿いに100台のワゴンが並ぶ「本の回廊」。歩道には書店と書棚、人々が溢れどこか懐かしい古い紙の匂いがする。
神田古書店連盟が主催する、年間最大の行事「第65回東京名物神田古本まつり」が開催されている。神田神保町古書店街にて2025年10月24日(金)~11月3日(月・祝)まで。

【御茶ノ水駅から神保町へ】
「神保町まで歩けるよ」と友人から連絡を受け、散策することにした。風が少し冷たく、なだらかな坂道の先に古書の街が見えてくる。
道中にはかつて文豪たちが執筆活動(カンヅメ)を行っていたとされる「山の上ホテル」。メールもファックスもない時代、締め切り前にはホテルの前で原稿を待つ出版社の人々で溢れていたとか。“文化人のホテル”ーーなんて極上の響きだろう。そんな空気を少しだけ拝借しながら歩くこと10分。神田古書店街の入り口が、静かに視界に現れた。

【120軒の古本屋が集う街】
「青空掘り出し市」では古書ワゴンが一斉に立ち並ぶ。「神田古本まつり」が開催されていたとは露知らず。遠くから珈琲の匂いが鼻を掠め、思わぬ熱気に圧倒されながらも高揚感に導かれるように足を進める。

圧倒的におじさまと外国人観光客が多い印象。ワゴンごとに出店テーマがあるのが、素人目にも伝わってくる。配布されている神田古書店連盟のMAPには、「文学」「古典」「歴史」「思想」とジャンル別に、全書店の名前が細かく記されている。これを片手に、目当ての古本屋を巡るのも楽しそうだ。
【迷い込む愉しみ】
方向音痴で、ちょっとした冒険好きのわたしは、MAPをそっと鞄にしまい、片っ端から古本屋とワゴンを巡ることに。

その光景だけで、胸が少し高鳴る。
少し埃っぽくて、ふんわり柔らかな古本屋。
どこか別世界に迷い込んだよう。店主は奥の席で静かに本を読み、「いらっしゃい」と声をかけてくれる。その一言だけで、ドキドキ。詩集を探していたけれど、ここにもない。でもそれもまた楽しい。気の向くまま、次の店へ、また次の店へ。だんだん、自分に合う書店がわかってくる感覚が、なんだか嬉しい。


好きなラインナップを見かけると少し安心。
【わたしと詩の出会い】
わたしにとって、「詩」は心の翻訳装置。美しい比喩とリズムは、現実と幻想のわずかな距離を結ぶ。どこか余白と想像力を掻き立てるその構成は、心に蟠りのある日にもすっと馴染む。
谷川俊太郎に始まり、中原中也、萩原朔太郎――「詩」は、わたしの心のオアシスだ。
【八木書店で運命的な出会いーーわたしと、青猫と、朔太郎。】
中原中也作品集を探すも、比較的新しい本しか見つからず。八木書店で偶然目に飛び込んできたもの。それは、「萩原朔太郎・青猫」。
あぁっ♡
— モスキート エリ (@MosquitoEri) October 27, 2025
目的のものとは違うものを買うっ。 pic.twitter.com/VpdI9S3FVb
思わず手が震えた。この一冊がわたしを待っていたように。恍惚のため息が漏れる。「わたしだけの本だ」。そう確信した瞬間である。感受性の透度ーーわたしは彼の作品をそう読み取る。
【アンカット本という希少性】
購入した、「青猫」は、アンカット本(uncut book)。それは印刷された紙のページの端・天・地・小口が断裁されていないままの本。読者が初めて自分でナイフやペーパーナイフを使って、一枚ずつページを切り開きながら読むことができる。まだ誰の指にも触れられていない頁。わたしの手で初めて切り開く世界を、運命と呼ぼうか。


【わたしだけの本に出会える街・神保町】
紙の香りと珈琲の香りが混ざるとき、物語は少しあたたかくなる。
神保町の片隅で見つけた「青猫」の眠る頁。
その沈黙を抱きしめながら、わたしは今日も、物語と珈琲の匂いを追って言葉の街を歩いている。
【物語×珈琲】
そして、物語は珈琲の香りに続く。
「#なんのはなしですか」と“TABBY's COFFEE ROASTER”さんとのコラボ商品「なんのはなしです珈」。テーマは物語が読める珈琲。
第二弾は「なんのはなしです珈・moonlight Donkey」は明日11/1より発売。今日の余韻を閉じるように。そんな珈琲を隣に。
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