『変態病院』路地裏ver・To persiさん。
episode 0 変態にカンパイ
午前0時を過ぎた院内は、各部屋からの患者の寝息が漏れ響いている。荒れ狂うナースコールの嵐は、介護士のサトウの訪れとともにすっと姿を消した。
病棟には、今、私しかいない。
『頼む、エリ。ヤニギレだ』
そんな声を、私の耳元にウィスパーに残して。
サトウが暗闇の広がる廊下へ消えていった瞬間、病棟の空気は震えた。ナースコールの赤いランプは一斉に点滅を始める。私は、深夜0時、一人インターバルを開始した。
病院と想像すれば、『命の現場』を想像することが多いだろう。ただ、それだけではないのが現実だ。
ナースコールの内容に耳を傾けてみる。
患者A『うんこ』
患者B『おしっこ』
患者C『うんこ』
患者D『おしっこ』
うんこと、おしっこの乱戦である。
謎の一斉トイレラッシュだ。
私は、こちらの肛門、あちらのお股、こちらの肛門、あちらのお股、こちらの肛門……とひたすらに首を振った。
その繰り返しは、私の脳内を肛門ゲシュタルトへと導く。
ヤニを入れてすっきりとしたサトウが戻るころ、嵐はピターっと過ぎ去り、ナースステーションで私とサトウは対面に座り、定期報告会を開催した。
「近況を。まずは、俺から」
ヤニを補給したサトウの顔色は、すこぶる良い。同じ年齢の私たちは、ヤニを補給することで、若返りを果たす。
我々は、通称『アンチエイジングビューティの会』と呼ばれる会員の総取締役である。
「待て、焦るな。まずは私だ」
と、顎に下げられたマスクをスッとあげ、私はサトウの口元を封じた。
「おう、聞こうじゃないか。エリが制止するなんて珍しい」
サトウのサウナの話はもうすでに聞き飽きている。肛門ゲシュタルトの恩を返すのは、確実にイマである。
私はゆっくりと話し出す。
ノンフィクションをできるだけフィクションに寄せて。
「あるラジオパーソナリティの声に、私は魅了されている。名前は…persi」
「ほぉ。エリの浮ついた話は久しぶりだな。それで?」
サトウは、たいして伸びもしない顎髭をジョリジョリとさすった。
「私は彼に自分の文章を読まれることを、随分と前から願っていたんだ…」
「ほぉ。ラジオネーム恋するウサギちゃん現象だな」
「ものわかりが早くてよろしい。続ける」
深夜0時の病棟は、静けさの中で私たちの声だけが、ただ響いていた。
「persiは私の憧れ…とでも言っておこうか。声がめちゃめちゃ素敵なんだ。この声をいつまでも聞いていたい。これは、もはや、恋心に近いかもしれない」
私はうっとりとして、天井を眺めた。新築であるはずなのに、雨漏りの跡にすら愛おしさを感じる。
「エリがそこまで言うのは珍しいな。アルパカ以来かもしれん」
「サトウ、いい目のつけ所だ。そこでな?私はできるだけpersiが読みやすいだろう尺を考えて、気付けば文章を考えるようになっていたんだ。欲望とは、美しいだろう。文章力が、少しずつだが上がってきていたのだ」
「ほぉ。乙女心はわからんな。それはある種の性癖と捉えて問題ないかな」
「…問題ない。私はいつ自分の文章を読んでもらおうかと期を狙っていたのだ。その時が、今宵、遂に訪れた。それは…イマだ」
「ほぉ。肛門と股の首振りをしていたお主が。頭の中は、そのpersiでいっぱいだったと」
「そうだ。イマ、私の文章は読み上げられている。それも、相当向き合ってくれたらしい。よりによって、難解な文章を。私は、とんでもない物を生み出してしまったようだ。それでも、嬉しい。嬉しいんだ…サトウ…」
「エリ。お前がここまで”変態”だったとは。俺は嬉しいよ。バッチコーイ…」
夜は次第に更けていく。
私とサトウは、ケトルでお湯を沸かし、一杯のコーヒーをゆっくりとふたり分のカップに注ぎ入れた。
『変態の夜に、カンパイ』…と。
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このepisodeを、尊敬してやまないpersiさんへ送る。本当にありがとうございました‼︎感謝の舞をいつか贈ります♡サイコウでした♡
☝︎私が勇気を振り絞った素敵なやーつ☝︎
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