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月刊創作新聞#001

行間

僕は国語が苦手だ。
行間を読むということが出来ない。
そもそも行間を読まなくても登場人物の気持ちを事細かく書いておいてくれればいいだけじゃないかと思っている。
思い返してみれば、小学生の頃から虫食い問題が苦手だった。
行間を読めなくても、虫食い問題が苦手でも人とのコミュニケーションは問題なく・・・できているつもりだ。

学校の伝統

なぜ、今更そんなことを紋々と考えているのかいうと、単純に高校の課題となったからだ。
僕の学校は特殊だ。
苦手科目克服の為に、苦手科目の課題が課せられるという拷問のような伝統がある。
なぜPTAからクレームが来ないんだろう?
こんな時こそクレームを入れてくれ。
読書感想文ですらあとがきをアレンジして出しているだけの僕に文学作品の行間を読むなんて、無理だ。

桃太郎

作品は何を選べばいいんだろう?
文学作品って縛りがあるからな~。
短めの作品がいいな。
桃太郎って文学作品か?
本棚の子供の頃の読んだ昔話の本の背表紙を見つけふと考えた。
いや、違うな。
これは童話というか昔話だ。
桃太郎には行間を読むような登場人物の心の葛藤はなさそうだし。
ほとんど動物だしな。
でも、動物も言葉を話していたような気がするな。
たしか、雉、猿、犬のトリオだったな。
海が出てこないから浦島太郎みたいに海の生物は出てこないのか。
川とかは出てきそうだけど、さすがにお供がニジマスってわけにはいかないか。
でも、鬼ヶ島にいくんだから海を渡るんじゃないか?
だったら海のお供がいてもおかしくないよな?
そもそも犬と猿って、原作書いた人は「犬猿の仲」って言葉知らないのか?

昔々

逃げ出したい気持ちから机に座ったはいいが、桃太郎のことばかり考えている内に寝てしまった。
机に伏せた状態から体がビクンとするのを自分でも感じ目覚める。
一度背伸びをした後、本棚から昔話の本を取り出し桃太郎を読み始める。
「昔々あるところに・・・」と日本人なら誰もが知る書き出しがある。
あるところってどこなんだよ。
おじいさんとおばあさんって何歳なんだ?
なんで二人暮らしなんだ?
子供はもう独立したのか?
それとも子宝に恵まれなかったのか?
「書いてないなぁ~」
山に芝刈りにって、これが唯一の収入源なのかな?
売るのかこれを?
結構貧乏だったのかな?
そりゃ~でかい桃が流れてきたら、おばあさん拾うよな。
高齢世帯には助かるよな。
何日間かは桃のアレンジ料理でしのげるしな。
全然想像できないけど。
中に子供が入っていたのは驚いただろうな。

見てみたい

どんな気持ちだったんだろう?
切ったのはお爺さんだろうな。
高齢者二人でよく運べたもんだな。
もしかしたら運ばずに家から包丁を持ってきて川原で切ったのかもしれない。
大きな桃が流れてくる川だからそれなりの流れがあるはずなのに御婆さんの下半身はかなり丈夫だな。
実際はどうだったんだろう?
って、これ、昔話だから実話じゃないわ。
でも、見れるものならその現場見てみたいな~。
いや、課題やらなきゃと本題に立ち返ったが、今日はもう気持ちが切り替えられないので寝ることにした。

ブックマーク

僕の部屋の昔話の本の桃太郎の章は真ん中よりやや前のページだった。
昔話の本で桃太郎が最初に来ない本があるだろうか?
課題攻略の役に立つ訳もないのに一応栞を挟んでおいて、今日のところは寝ることにした。
桃太郎の世界をあれこれ妄想している内にいつの間にか眠りについていた。

夢の中

翌朝、目覚めると忘れないうちにと夢で見たことを書き綴った。
お爺さんとお婆さんは話の内容から幼馴染らしい。
子供がいるかいないかは見ただけでは分からなかった。
話しかければよかった。
村の外れの一軒家にひっそり暮らしている。
村には20件ほどの家があるが、村自体もそれほど豊かさは感じなかったけど、田植えしてたから季節的には春だ。
村全体を見た感じでも、日本のどの辺だったかは分からなかった。
雪のある山とかが見えなかったから2,000m級の山はない。
でも、お爺さんが芝刈りする山の斜面の傾斜は結構きつかった。
そして芝と食料を交換していたから、この家の収入源はやはり芝だった。
裕福じゃないから二人とも痩せていた。
お婆さんを後をつけて川に行ったけど、この時は桃は流れてこなかった。
洗濯して帰ってきただけだ。
昔話には空振りの日のくだりは書かれていないが、桃が流れてこない方が日常だ。

ある日

夢の話とはいえ、昨日夢中で妄想していた桃太郎のことだから少し真実が見えた気がして嬉しかった。
昔話の桃太郎の章を開いてみる。
「あっ」
そっか、桃はある日流れてくるのか!
「ある日」って書いてある。
だから夢の中では空振りだったのんだ。
「んっ?」
おかしいな。
「ある日」って書いてあるのに気付いたのは今だから、昨日の夢の中で桃の流れてこない日があるなんて。
でも、夢だからな。
思い通りにはならないか。

話したところで

学校で桃太郎の夢の話をしようかと思ったけど、所詮夢の話だ。
他人の夢の話ほど退屈なものはない。
聞いた後「で?」って言われるだけだ。

同じ夢を見ることが出来るのか?

たぶん寝る前に読んでいたから夢にみたんだ。
と、仮定した。
学校から帰ると本を取り出し、栞の挟まっているページを開く。
昨日見ていたページでは桃は出てきていない。
意外に僕の見る夢は正確だった。
桃登場は次のページだった。
でも、桃は感情や表情がある訳じゃないからどうでもいい。
その次のページが桃を割るシーンで、挿絵はナタでお爺さんが割った後だ。
中から赤ん坊が出てきて、お爺さんお婆さんが驚いている様子は分かるけど、当事者のセリフはないなぁ~。
やっぱり行間を読むとか読まないの題材としては不向きだなぁ〜。
その先数ページをめくりキジ、サル、イヌがお供につくシーンの挿絵のページに栞をはさみ本を閉じた。
桃太郎はいいとして課題の作品を決めなくては。

改竄

その日の夢も栞を挟んだページが展開された。
翌朝、起きて本を確認する。
「そうだったのか」
と、思わず僕はつぶやいた。
夢で見た内容はこんな感じだった。
桃太郎はキビ団子の入った袋を腰にぶら下げ、甲冑を着飾り鬼退治に出発した。
鬼ヶ島に向かう道中まずはキジが現れ、「桃太郎さんお腰に付けたキビ団子一つくださいな」と歌にも歌われた通りのシーンが目の前で展開される。
ところで甲冑や刀、キビ団子とお爺さんお婆さんの経済状況とはかけ離れた装備はどうやって調達したんだろう?
そのあたりの説明は昔話には全く出てこない。
鬼退治自体は村の総意だと思うから村人から寄付を募ったのだろうか?
そこまでの恨みを村人は鬼に対して持っていたのか。
物語は続く。
キジに続いてイヌも登場。
家来として旅に同行する。
そして最後に現れたのは・・・。
なんだあれは?
サルではないな。
おなじみのセリフを言っている。
「桃太郎さんお腰に付けたキビ団子一つくださいな」
あれは、ザルだ。
ザルが言葉を発するシーンを始めて見た。
昔話とはいえあまりの驚きに目を覚ます。
栞の挟んだページをすぐさま確認する。
「サル」に濁点が付けられ「ザル」になっている。
ご丁寧にそのページ以降も全て「ザル」になってる。
「ザル」ってどうやって鬼と戦うんだ?

#創作大賞2024 #漫画原作部門

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