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ピンポーン

ピンポーン

午後2時
静かなマンションの廊下に、乾いた電子音が響いた
無反応
部屋の主・25歳のアオイは、ソファで息を潜めていた
(……知らない人だ)
スマホには通知
『お荷物をお届けに参りました』
(メッセージ送ってくれればいいのに……)

ピンポーン

さらに気配を消した


そんな彼女は“現代型コミュ力”の達人
SNS総フォロワー8万人
配信では饒舌
オンライン会議も完璧


その時 母からの着信
無視

LINEが来た
『生きてる?』
既読をつけず放置

(全部、画面越しなら話せるのに)


その夜、配信で雑談
「いやー、今日も人と接触ゼロ達成しました」

コメント欄 盛り上がる
《わかるw》
《インターホン怖い》
《宅配来た瞬間、息止める》
《あるある》

同接は1万人を超えた
その時

ピンポーン

配信コメントが止まる
顔が凍る

コメント欄 ざわつく
《出る?w》
《配信ネタになるよ》
《がんばって》

「知らない訪問は出るな」
子どものころ 毎日教えられた
アオイは立ち上がったが足が動かない

ピンポーン

スピーカーからの声
「こんにちは 隣の302号室の者です」
「回覧板でーす」
(回覧板!? 令和に!?)

コメント欄 爆発
《都市伝説だ》
《まだ存在したのか》
《生身イベント発生》

隣人は続けた
「あと、いつも配信見てます」
「毎晩、壁越しに笑い声聞こえるので」

コメント欄
《草》
《リアル視聴者》
《最古のサブスク》

アオイはついにインターホンに出る決意をした
七十代くらいのおばあさん満面の笑みのドアップ

「ありがとう 扉の前に置いておいてください」

「でも安心したわ ちゃんと人間が住んでたのねぇ
AIか何かが喋ってるのかと思ってたわぁ」

「……え?」


その夜の配信タイトル
『「神回! 本日、人類と接触しました
ついに人類編スタートか???」』

配信終了後、アオイは人生で初めて
自分から 次の隣の部屋のインターホンを押した

回覧板を扉の前に置いて
信じられない早さで 自分の部屋に帰還した

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