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もう全部、和え物がいい

毎日食べる、朝・昼・夜の食事。

それが今思えばいつの間にか、数年前から、

全部、和え物だった。




冷蔵庫を開ければいつでも

15種前後の和え物が並び

「料理研究家」という肩書ながら、次々と "(いわゆる)新しいレシピ" を作る、ということもなくなってくるー

和え物ばかり作っていて、レパートリーは減っているはず。
それなのに不思議と飽きない。むしろ、以前より満足している

私はその理由を、うまく言葉にできていませんでした。

毎朝、仕事や家事などをしながら
無理なく、自然とできていく

1日分の和え物


昔の自分が思い込んでいたこと(以下)と、真逆だったからだろうと思います。


和え物だけ(ワンパターン)なんて、飽きる

「料理研究家」として発信をはじめた頃~数年は、

そういう思いもあって、とにかく "新しいレシピ" を増やそうと奮闘。

もっと違う料理(レパートリー)を増やすべき
毎日毎食色んな料理が並んでいるのが、豊かな食事

そういう一般的な流れを感じて(それを目指すべきだと思い込んでいて)

その前提に、なにも違和感を覚えないまま、ただひたすらにもがいていたのかもしれません。


おかず・おやつ、どんなレシピも
「フライパン+蒸しプレートで丸ごと蒸す」
から始まる
、というのは
当初から一貫して変わらない


実際、新しいレシピを作れば作るほど、料理の幅が増えていって、

レパートリーは増えたのに

なぜか満足感は上がらない。しかも、

何かに追われている・何かが足りないという感覚で、いっぱいになっていくー。

日常で作りもしない "新しい" ものを作っては
動画にしてSNSに投稿して…
満足感は得られず、ただ疲弊していた時の料理たち


きっと、私が当初増やしていたのは、カレー・グラタン・ハンバーグ…という「料理名(料理の種類)」で

本当に欲しかったのは、別のものー

料理の種類ではなく、仕上がりの幅だったんだろうと、思えてきています。


「低温蒸し」というものに出会い、

「フライパン+蒸しプレート」の低温蒸し、という方法を考案。

フライパンに水・蒸しプレートを入れ、そこに野菜や乾物をのせて、"蒸して下ごしらえ" する調理法:


そして、「とりあえずまずは蒸して、切って、和えておき、1日の食事をやりくりする」という、

いわば「 "蒸す" 下ごしらえ」という名の、蒸し料理生活を営むようになると、

私の毎日はよりラクに・シンプルに、でもより豊かになっていきます。

"蒸す" 下ごしらえ」で1日が回るイメージ


「 "蒸す" 下ごしらえ」で和え物を作っておけば
食べる直前に、和え物同士を合わせるだけ

ロールキャベツやスープ、リゾットなどのおかず
そしてプリンやブラウニーなどのおやつ
まるで "インスタント" に作ることができる

※ わたしのおやつは、蒸し野菜・豆などを
生地のベースに
使って作るものばかり(

具体的な流れ:



蒸す、切る、和える。

次の日も、そのまた次の日も、蒸す、切る、和える……。

気づけば飽きもせず、毎日同じことを繰り返していて、

そんな暮らしの中で、見えてきたものがありました。

蒸して炊いた玄米ごはんに
蒸し野菜・豆の和え物をのせて仕上げた
おせち風わっぱごはん


色合い、味、そして食感の変化。

それが、低温蒸しを追求し、「蒸す、切る、和える」を繰り返すほどに夢中になっていった、3つのこと。

10~20種ぐらいの野菜・豆を
毎朝蒸して和え物にし、
昼夜翌朝にまんべんなく楽しむ

具体的には、蒸した素材の

・季節によって変わる、色や佇まい
・噛みしめるほどに出てくる、旨みや甘み
とろとろ・やわらかだけではなく、ぱりぱり・かりかり・しゃきしゃきにまで広がる、数々の食感

そして、何より魅力に感じたのが

時間が経つほどに、それら(上記3つ)が馴染んでいく変化があること。


つまりは、調理工程が同じ「蒸す、切る、和える」だとしても、

見た目も味も食感も、全く違うものになるー


私が求めていた「レパートリー」は、目に見えない点も含めた、そういう仕上がりの幅だったのかもしれない、と気づきはじめます。

蒸し野菜・豆の和え物を
蒸して炊いた玄米ごはんにのせた
モザイク寿司

※ 桜の塩漬け
(水にひたすのではなく)
野菜のついでに蒸して塩抜きして
トッピングに


同じなのに、"レパートリー" が増えていく

という状況を作ってくれるとはいえ、 "私の和え物" はほんとうにシンプル

蒸した野菜や豆、乾物に、+αの素材(※)加えて和える。

材料の詳細・使う理由については、後ほど。


やっていることは、基本的にこれだけです。

私の料理で「味付け」というものは存在せず
味を引き出す」「深める」「安定させる
という感覚で、素材を合わせていくスタイル。


+αの素材を和える時に、考えていることはほとんどありません。

しいていえば、

昨日と組み合わせがかぶらないように
色や食感が偏りすぎないように

程度、意識している感じです。

数種類の和え物を
玄米ごはんと一緒にぎゅっと合わせた
手巻き寿司

それでも、例え1週間、冷蔵庫に同じ種類の野菜があったとしても、

1日たりとも同じおかずになることはなく

「代わり映えないな」と飽きることもない


蒸し野菜・豆の和え物と
玄米ごはんを寄せ集めたプレート



これがいつしか当たり前になって、どうしてなのか・どういうことなのか言語化できないままでした。


今、振り返ってみると

カギになっているものの一つが、蒸した素材と合わせる「塩+α」にあった気がします。


蒸し野菜に合わせる「+αの素材」として使っているのは、主に
ごまやパンプキンシード、ひまわりシードなどのシード類

毎日使っているシード類の一部。
どれも良質な脂質 / タンパク質などが
豊富
なものばかり


これを塩と合わせて使うことで、「まずは丸ごと蒸す」そして「塩で和える」ことで引き出てきた、野菜に潜んだ旨み・甘みがより深くなり、満足感が上がる(※)

人参を丸ごと蒸す(まずそのものの旨み・甘みを引き出す
切ってから塩(さらに味を引き出す)
+α
で和える(出てきた味をさらに深める

脂質を合わせることで、野菜の栄養(脂溶性成分など)が
吸収されやすくなる
こともあるため、そういった面でも
シード類を合わせることが理にかなっている
ともいえそう。

(参考:Unlu, N. Z., Bohn, T., Clinton, S. K., & Schwartz, S. J. (2005). Carotenoid absorption from salad and salsa by humans is enhanced by the addition of avocado or avocado oil. The Journal of nutrition, 135(3), 431-436.



そして、同じ「蒸し人参」でも、合わせるもの(+αの素材が違うと、味も食感も、全く違う印象になる。

蒸し人参(塩+ひまわりシード
→ 蒸し人参(塩+パンプキンシード
に変えただけで全く別物の仕上がりに。


しかも興味深いのは、

"和えたら完成" ではない

こと。


どういうことかというと、和えたおかずを置いておく冷蔵保存しておく)と、時間とともに蒸した素材・塩・+αの素材同士が馴染み

色も味も食感も、少しずつ変わっていくー

朝作って、お昼に食べる時・そして夜に食べる時とでは、
見た目も、味わい深さも、食感も、
全く違う料理のよう
に変わる

それが「楽しみが尽きない」一つの大事な要素(=レパートリーが自然と増えていくこと)になっていると、思えてきています。

今回は「塩+α」に注目しているものの
満足感の高い和え物を作るために不可欠な
私にとっての "調味料" は大きく以下の5つ。

① 自然栽培など、自然に近い状態で育ったものを選ぶ(※)
② 切らずに丸ごと蒸す ③ 塩  ④ +αの素材 (で和える)
⑤ 置く(馴染ませる)


※「素材を活かす料理」となると、
できあがる料理のおいしさは
素材そのもののよさに依存。
農薬や化学肥料・動物性堆肥がえぐみの原因になることは
農家さんからよく伺うことの一つで
低温蒸し料理を続ける中でも、その実感は強まっている。




以下、まとめメモ📝
同じ「蒸す、切る、和える」から
自然とレパートリーが広がって行くイメージ

① 「+αの素材の変化」で「蒸し人参」1つから広がる

「+αの素材」が3つあれば、3種のおかずに。
「+αの素材」が増えれば、おかずがもっと増える
色・味・食感は、全部まったく違う


② 「使う蒸し野菜の変化」で「+αの素材1つから広がる

丸ごと低温で「蒸した野菜」が2つあれば
「+αの素材」が1つしかなかったとしても、2種のおかずに。

(同じ塩・+αの素材でも、
元の蒸し野菜の味が異なるため
まったく違う仕上がり
に)

※私の生活では1日に同じ「+αの素材」を
いくつものおかずに使うことはない。
(栄養が偏るため)

「昨日、蒸し人参にひまわりシードを合わせたから
今日は蒸し小松菜にひまわりシードを使おう」

という感じで、この変化を活用するイメージ。


③ 「時間の経過」で、同じ1つのおかずから広がる

【丸ごと蒸した素材】
時間の経過が変わる
「塩+α」の馴染み具合によって
味の深まり具合が変わる

【塩】
・蒸した素材に馴染んでいって
味(塩気の強さ・質)・食感が変わる

【+αの素材】
・蒸した素材&塩に馴染んでいってが変わる
蒸した素材の水分を吸って、食感が変わる
(かりかり→しっとり感のあるかりかり、など)
※チアシードやフラックスシード(亜麻の実)など
水分を吸って、ゼリー状になるものも。

→ 昼・夜・翌朝で
違うおかずを食べているような感覚に


①~③をまとめると、
私の和え物で、「 "仕上がりの" レパートリー」が自然と広がって行くのは、こんなイメージ(画像をタップして拡大):

蒸し素材の種類+αの素材、そして時間経過
それぞれの掛け合わせによって、仕上がりが変わっていく。

→ 必死に新しいものを生み出そうとしなくても
こうした掛け合わせによって
「仕上がりの全く違う料理」が自然と広がっていく。




蒸す、切る、和える

たったそれだけの繰り返し。

でも、その中には挙げだしたらきりがないほどの違いがあって

気づけばそんな "和え物" の奥深さに、夢中になっていました。

ー 和え物でいい、というより「和え物がいい」

"ある意味和え物"な 味噌汁
蒸し野菜・蒸し豆の和え物に
水・味噌を足して温めるだけ。

きっと私が求めていたのは、いわゆる "新しい料理" ではなく、

こういう広がりだったのかもしれない、と

ここまできてやっと、腑に落ちた気がします。

カレー、グラタン、ハンバーグ…そうやって "全く違う" ものを作り続けなければ「豊かな食卓」とは言えないと思っていた。

でも、"まったく新しい" 何かを増やさなくても、毎日繰り返される "同じ" ものの中"変化" を見つけることが、日々の食卓、そして暮らしを「豊かに」してくれるのかもしれない。


毎日 "変化" のある "和え物"
を作って食べながら、そんなことを思ってさえもいます。

一番のお気に入りは
蒸し戻し切り干し大根の和え物。

※ 野菜などのついでに
蒸して戻した切り干し大根が活躍。
水戻しでは考えられない
旨み・甘みと、ふっくらジューシー感

が味わえる


もう全部、和え物がいい

家に引きこもって
"蒸す" と向き合い、
PCと向き合い、

庭に出て
自然と向き合い
自分と向き合う。

そうやって、ただ淡々と過ごし
ある意味 "変りばえのない毎日" が過ぎて行くー


そんな私の暮らしの中で "変化" を生み、暮らしを豊かにしてくれるのは


"和え物" 。

だから私は今日も、また "和え物" を作る。

でも、

昨日と同じものは、何一つない





撮影編集・図解作成・執筆 : 筆者(あいり)














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