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スーパータスカンは、この銘柄からはじまった!

Vol.048
いま、密かにイタリアワイン周辺をざわつかせている銘柄が販売中です。トスカーナ州のキャンティを代表する赤ワインであり、ファーストヴィンテージからちょうど50周年を迎え、スーパータスカンの嚆矢となった、2021年ヴィンテージ「ティニャネッロ」がそれです。今回は、スーパータスカンをテーマに、ふたつのワインを探ります。
 
これまで、noteで話題にしてきたのは、白ワインオレンジワインが中心でした。その狙いをひとことでいえば、イタリアワインの常識を、異なるアングルからとらえるため。多くのひとがイメージするイタリアのワインといえば、やはり赤ワイン。トスカーナ州やピエモンテ州の名産地で造られた銘醸に限る、といい張るワイン通もいるでしょう。そういった固定観念を解き放ってみると、案外知られていない、白ワインの実像がみえてきました。ワイン造りの近代化は、白ワインにも歴然としていたし、産地の特性から分析すると、白ワインは北イタリアのほうが、南に比べてキレ味がいいことや、白ブドウの土着品種は、あまりにも多彩です。
是非、上の文章でアンダーラインを引いたnoteのバックナンバーをあたってみていただきたい。
 
なぜ、懐かしい響きとなった、スーパータスカンに注目するのか。
理由は、「ティニャネッロ」誕生50周年のインパクトが大きいですね。ファーストヴィンテージが1971年ですから、まさにイタリアのワイン造りが近代化に突入した時代。ヴィーノサローネは、この時代を深掘りし、イタリアワインの現在を見極める起点としています。つまり、“量から質”の造りに移行したころです。採れたブドウをどんどん発酵・熟成させたワインは、生産者たちが飲む分の自家消費用から、積極的に販売するためのクオリティの高いワインへと大転換を図った。ワイン生産の革命を世界に知らしめたのが、なにを隠そうトスカーナ州ではスーパータスカン。イタリア語の“スーペル・トスカーナ”ではなく、英語表現になっているのも、世界のマーケットを十分に意識していることがうかがえますね。
そして、「ティニャネッロ」のほかに「サッシカイア」の登場も、スーパータスカンに注目が集まった要因です。一般的にいえば、「サッシカイア」のほうが有名ですが……。
 
まず、「ティニャネッロ」とは、どんなワインか。
およそ14世紀から、トスカーナ州でワイン造りをはじめた名門、アンティノーリ家のワイナリーから誕生しました。キャンティのワインで知られる土着品種、サンジョヴェーゼに国際品種のカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドした赤ワインです。
「サンジョヴェーゼの優美さを保ちながら、まろやかで豊かな味わいを表現した、まったく新しいワイン」というのが、ワイン専門家たちの評価でした。
 
しかし、ワインを販売するとき、等級で問題が発生しました。
キャンティのワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンの使用は認められていないうえ、白ブドウのブレンドも義務づけられています。そのセパージュ(品種のブレンド比率)に従えば、“DOC”という格づけになる。ところが、規定から逸脱したセパージュのため、もっとも格下の“ヴィーノ・ダーヴォラ”というカテゴリーに位置づけられたのです。それでも、先のコメントのように、当時、一流の専門家から絶賛され、スーパータスカンを代表するワインに躍り出ました。

2021年ヴィンテージで誕生50周年を迎えた「ティニャネッロ」。
14世紀から続く名門ワイナリー、アンティノーリの傑作の1本です。

 一方、「サッシカイア」は、同じトスカーナ州でも、ティレニア海に面した、日当たりのいい傾斜地のボルゲリが産地。さかのぼると、1945年から造りはじめています。転機が訪れたのは1968年。それまで自家消費用だった「サッシカイア」を、親戚筋のアンティノーリ家(ピエロ・アンティノーリさん)が、世界的なワインになることを予感して、販売と配給を担いました。 

「サッシカイア」のセパージュは、カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フラン。いわゆる、フランスのボルドータイプのワイン。それが、ボルゲリという産地から、本家に負けないワインが生まれ、1985年、世界一の赤ワインに認められ不動の位置を決定づけたのです。 

こうしてみると、イタリアワインの近代化は、赤・白ともに、明白に1960~70年代がターニングポイントになっています。戦後、イタリアは奇跡的な経済復興を遂げるとともに、品質に注力した商品に発展してきたことも、要因のひとつといえそうです。

 主は、スーパータスカンのどちらの銘柄に軍配を上げるのか。
もちろん甲乙つけがたいものの、やはり「ティニャネッロ」です。国際品種のみで造った「サッシカイア」に対し、「ティニャネッロ」は、土着品種のサンジョヴェーゼを用いて、ワインを造っている。そこには、「イタリアワインの“本質”にであう」を掲げるヴィーノサローネの思いが通じています。

 実は、ヴィーノサローネでは、現在どちらのワインも販売していません。エポックメーキングなイタリアのワインであり、文化的な商品としてもとらえているため、当店の販売の有無に関わらず、偉大なスーパータスカンの「ティニャネッロ」と「サッシカイア」をnoteで紹介しないわけにはいかなかったのです。 

次回の“ディアリオ ヴィーノサローネ”に続きます。

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