見出し画像

「ポール・スチュアート」のトークショーに登壇

Vol.059
11月初旬。「ポール・スチュアート」青山本店開業5周年イヴェントに、光栄にもお招きにあずかりました。コロナ禍にオープンし、もう5年も経ったのか……。率直な印象です。
 
ちなみに「ポール・スチュアート」とは、アメリカ発祥のファッションブランドです。日本では特別に、鴨志田康人さんがディレクターを務めています。鴨志田さんといえば、メンズファッション界重鎮のクリエイティブディレクター。クラシックかつエレガントなスタイルは、国内外から注目される真の洒落者です。
インスタのIDを記しておきますので、是非アクセスしてみてください。
kamoshita
 
トークショーに登壇したのは、下記の5名です。
鴨志田康人さん
フィリップ・トルシエさん(元サッカー日本代表監督)
長谷川喜美さん(ヴィターレ・バルべリス・カノニコ、PR)
四方章敬さん(スタイリスト)
矢部克已(ファッションエディタ―、ヴィーノサローネ主)

登壇した5人。左から、トルシエさん、
長谷川さん、鴨志田さん、
主、四方さん

イヴェントは、こんな感じでした。
「ポール・スチュアート」のスーツに、イタリアの老舗生地メーカー「ヴィターレ・バルべリス・カノニコ」の限定素材“オフリミッツ”という生地を採用していることから、その機能と狙いを鴨志田さんと長谷川さんが説明。スタイリストの四方さんは、スーツのコーディネートを4体つくり、独自の視点ながらも、だれにでも取り入れられるような解説が見事でした。そして、ファッションとワインとファブリックの3つのお題で、トークショーが進行しました。
 
主役は、もちろんフィリップ・トルシエさんでした。トルシエさんはいま、フランス・ボルドー地方のサンテ・ミリオン地区に構えるワイナリーのオーナーとして、新たな人生を歩んでいます。
 
会場でふるまわれたワインが、トルシエさんのワイナリーで造った赤と白ワイン。ブドウ畑のテロワール、品種の個性を引き出したワインの味わいの話を、フランス文化を土台に語る姿勢はなかなか含蓄がありました。
 
余談ですが、トークショーがはじまるタイミングで、かつてトルシエさんの通訳を務めていたフローラン・ダバディさんが急遽参加。普段から饒舌なトルシエさんの話に、一層拍車がかかったようでした。
 
トークショーの半ばあたりで司会の方が、競技場に立つ監督のスタイルのことに触れました。ここで、ヴィーノサローネ主の出番です。

サンテ・ミリオンのワインの魅力や
監督の服装の話題など、
言葉に熱が帯びてきたトルシエさん

主はこう質問しました。
「サッカーの監督は、なぜピッチ(競技場)でスーツを着て、タイドアップしているのでしょうか。特に、国際試合では多くの監督たちがそのようなスタイルで目立ちます。トルシエさんも凛々しいスーツスタイルでした。なにか歴史的な意味や社会的な背景があるのでしょうか?」 

実は回答は長いお話でした。キモの部分をひとことだけ触れると、トルシエさんはフランス人であるがゆえ、ピッチでもエレガントでいたい、と。監督のスタイルは、伝統的にタイドアップの慣習が残り、ディレクターという立場からも正装であることがふさわしい、というのが理由でした。 

主のトークに移ります。
“ファッションとワインの関連、ワインとファッションの接近”という、ちょっと硬めのタイトルを掲げました。わかりやすくいえば、ファッションとワインの共通項を見つけ、より豊かなライフスタイルを位置づける目論見です。 

品種と生地の関係は、ワインとスーツの風合いを近づけるようなものと考えています。トルシエさんのワイナリーで造る赤ワインは、メルローとカベルネ・フランの品種構成ですが、それを生地に置き替えるとどういえるのか。ウールを主体に“カシミアのコク”を加えた質感になりそうだ、と主はコメントしました。連想ゲームのような遊びを含み、本質観取のプロセスでもあるように、品種の個性を生地の特性にシフトして考えると、ワインとファッションとのつながりが広がります。

 次の切り口は、経年変化と熟成。これは、いまのファッションのトレンドとバッチリ相関した感がありました。
ワインはリリースされたとき、香り高く芳醇な味わいがあります。つまり、手に入れた時すぐにワインを楽しめますが、5年、10年、さらに20年とワインを寝かせておくと、想像以上に味わいが変化し、極上のワインに育つことは、よくあることです。 

これは、現在のファッションの見方と通じるところがありますね。たとえば、メンズファッションは、ジョルジオ・アルマーニに代表される、1980年代の服が再注目されています。ゆったりとしたシルエットで、流れるようなドレープを演出する合成繊維を織り交ぜた生地の再来で、かつての雰囲気が再びよみがえっています。まるで、1980年ヴィンテージのワインを、いただくような贅沢な感覚です。 

大勢の人が集まった「ポール・スチュアート」
青山店5周年イヴェント。
皆さんワイン片手に熱心に聞き入っていました

これまで、主がNoteで書いてきた内容や、ヴィーノサローネの試飲会でお伝えしていること、また、今回のトークショーでも実感できたのは、大人のファッションは、モノで語る趣味の世界に留まらず、ワインとも相関するライフスタイルのひとつのように、大きな視点で捉えるともっと広がりのあるファッションにつながっていきます。
ボタンホールのできの良し悪しや、ステッチワークの美しさを観察するのは大切なことですが、小さな領域だけでは、本来のメンズファッションの意味をかえってみえにくくする。ファッションの時代は、確実に流れています。 

ワイナリー自慢の赤ワイン『グラン・ブルー』。
なにか映画のようなタイトルですね。
品種はサンテ・ミリオン特有のブレンド、
メルローとカベルネ・フラン

「ポール・スチュアート」関係者の皆様、会場を訪れた多くの皆様に深くお礼を申し上げます。

 次回の“ディアリオ ヴィーノサローネ”に続きます。


いいなと思ったら応援しよう!