【馬の毛色入門①】 すべては3つの原色から
今回は、馬の毛色について紹介していきます。
馬の毛色は、古くから個体を識別する大切な手がかりとして使われてきました。競走馬や乗馬、ばん馬などの登録でも、毛色は馬の特徴として記録されます。
サラブレッドでは毛色が8種類、それ以外の乗馬やばん馬を登録する日本馬事協会では13種類とされていますが、実際にはさらに多くのバリエーションがあります。
では、そのたくさんの毛色はどのように生まれるのでしょうか。
実は、馬の毛色はまず大きく3つの原色に分けることができます。
馬の原色は3種類
馬の毛色の基本となる原色は、次の3種類です。
鹿毛(かげ)
鹿毛は、茶色い体毛に、黒いたてがみ・しっぽ・四肢を持つ毛色です。
競馬や乗馬の世界でもよく見られる、非常に一般的な毛色です。多くの人が「馬らしい馬」と聞いて思い浮かべる姿かもしれません。
代表的な競走馬としては、ディープインパクトが知られています。

青毛(あおげ)
青毛は、全身が黒く見える毛色です。
英語では「ブラック」と呼ばれます。
「青」とついていますが、実際に青いわけではありません。黒い毛が光の加減によって青みがかって見えることから、青毛と呼ばれています。
同じ青毛でも、季節や毛の生え変わりによって印象が変わることがあります。
栗毛(くりげ)
栗毛は、赤みを帯びた茶色の毛色です。たてがみやしっぽも、基本的には体と同じような色になります。
明るい栗色から濃い赤褐色まで、個体差が大きいのも特徴です。
栗毛の中にも、いくつかのバリエーションがあります。
栃栗毛(とちくりげ)
非常に濃い栗毛です。遠目には黒っぽく見えることもあります。
尾花栗毛(おばな栗毛)
栗毛の中でも、たてがみやしっぽに白っぽい毛が混じるタイプです。

三原色だけでは終わらない
ここまで紹介した鹿毛・青毛・栗毛は、馬の毛色の土台となる原色です。
しかし実際の馬の毛色は、これだけではありません。
これらの原色に、
芦毛遺伝子
クリーム様希釈遺伝子
白斑を作る遺伝子
などが加わることで、さらに多様な毛色が生み出されます。
今回はその中から、特に知られている「芦毛」と「クリーム様希釈遺伝子」について紹介します。
芦毛という特別な毛色
毛色の話をするとき、欠かせないのが芦毛です。
芦毛の馬は、生まれたときから真っ白なわけではありません。
多くは鹿毛や青毛、栗毛に近い色で生まれ、年齢を重ねるにつれて徐々に白くなっていきます。
そのため、若い頃と高齢になってからでは、まるで別の馬のように見えることもあります。
代表的な芦毛の競走馬としては、オグリキャップが有名です。
また、芦毛遺伝子は他の毛色に対して顕性です。
片親が芦毛の場合、子馬も芦毛になる可能性があります。
さらに芦毛は、他の動物ではあまり見られない、馬ならではの珍しい毛色の変化としても知られています。

クリーム様希釈遺伝子
毛色のバリエーションを生み出す代表的な遺伝子の一つが、クリーム様希釈遺伝子です。
この遺伝子は、毛色を薄くする働きを持っています。
また、遺伝学的には不完全顕性という特徴があり、遺伝子を1つ持つ場合と2つ持つ場合で現れる毛色が異なります。
北海道和種馬、いわゆるどさんこや、クォーターホースでは比較的よく見られる遺伝子です。
クリーム様希釈遺伝子を1つ持つ場合
原色にクリーム様希釈遺伝子が1つ加わると、次のような毛色になります。
栗毛+クリーム様希釈遺伝子
→ 月毛(つきげ/パロミノ)
鹿毛+クリーム様希釈遺伝子
→ 河原毛(かわらげ/バックスキン)
青毛+クリーム様希釈遺伝子
→ ブラックスモーク/スモーキーブラック
月毛は、黄金色の体毛と白っぽいたてがみが特徴です。
河原毛は、淡い黄褐色の体毛に、黒いたてがみ・しっぽ・四肢が残る毛色です。
ブラックスモークは、黒毛がやや薄まった毛色です。ただし、日本語での正式な毛色名は定められていません。
クリーム様希釈遺伝子を2つ持つ場合
クリーム様希釈遺伝子を2つ持つと、さらに強く希釈が起こります。
日本では佐目毛と呼ばれます。
佐目毛は、体毛が非常に淡いクリーム色になります。一見すると白馬のようにも見えますが、遺伝学的には白毛とは異なる毛色です。
海外ではベースの毛色で呼び名が異なります。
クレメロ
栗毛にクリーム様希釈遺伝子が2つ作用した毛色。体毛はほぼ白色で、青い目を持つことが多い。
ペルリーノ
鹿毛にクリーム様希釈遺伝子が2つ作用した毛色。体毛はクレメロとよく似ているが、たてがみやしっぽにわずかに黄褐色が残ることがある。
スモーキークリーム
青毛にクリーム様希釈遺伝子が2つ作用した毛色。クレメロやペルリーノとの見分けは難しく、遺伝子検査で判別されることも多い。

おわりに
馬の毛色は一見すると複雑ですが、
鹿毛
青毛
栗毛
という3つの原色を理解すると、とても整理しやすくなります。
そこに芦毛遺伝子やクリーム様希釈遺伝子、白斑を作る遺伝子などが加わることで、多彩な毛色が生み出されているのです。
次回は、まだら模様を生み出す遺伝子や、個性豊かな毛色について紹介する予定です。
またお会いしましょう。🐴
