ココアと桃と赤か白

業務のメインは入院患者さんの退院支援だけど、
外来患者さんの相談だって当然対応してる。
入院と違って大変なのは、
「今から◯診に来て」
こっちの都合はお構いなしに呼びつけられることと
ハイ初めまして〜っていう状態から瞬時に解決課題を見抜かないといけないこと。
事前に看護師から「◯◯についてです」とか言われるけど、開いてみたら全然話が違うことなんかザラにあるし、やってることの手を止めて急いで向かったのに「それは診察の中で解決してくれよ」って結局出る幕がないことも少なくない。

この日もやっぱり突然呼ばれた。まとめたい書類があったのに。
外来医師「90代の女性で、家での生活が大変になってきたらしいから話聞いてみて」
まぁなんと雑な依頼でしょう。聞きますけども。

正確な年齢は忘れたけど、確か94歳だったと思う。
娘さんが同居して身の回りのことを世話してくれていた。ADLはかろうじて自立していたようだけど、何をするにも億劫で病院にかかったりとか外に連れ出せなくなってきたようだった。

娘さんに、まず1日何をして過ごしているか聞く。
テレビを何となく眺めていて、食事の時間になったら席について、もよおしたらヨタヨタとトイレに行って、眠たくなったら昼寝して…といったサイクルだそうだ。

94ともなればこんなもんだろうと思った。むしろ94でトイレに自分で行けてるなら上等じゃないか。

娘さんが用意した食事を、最近はちょこちょこっとつまんで食べて、残すことが多くなったらしい。

活動量からいって、採血データとかに問題がないなら、べつにいいんじゃないかと思った。
でも、ここからの話が興味深かった。

食事と合わせて
エンシュアと
贅沢縛りの缶チューハイ桃味
そしてワイン
これをコップ1杯ずつ1日かけて飲むらしい。
ストローで。

94歳に聞いてみた
「飲み合わせ悪くないですか?」

94歳「悪くないね!ココア(エンシュアのこと)のあと桃いって、そのあとワイン。あとコレ(タバコの仕草)よ!これで94まで生きたからね」
説得力が違うて。そしてタバコも吸うんかい。
ファンキーすぎる。

「液体ばっかりでお腹すかないですか?
だんだん元気がなくなってきたってご家族が心配されてるようですよ」

94歳「そりゃこの年なんだからずーっと元気ってわけあるか。食事の後はすぐ眠くなるしね」
うんそれは酒に酔ってっからな

娘さんに改めて話を向ける
「何かお困りなら地域のサポートを手配することもできますけど、ちょっとこれは頼みたいな…ていうようなことがありますか?」

娘「強いて言うならデイサービスとかに行ってもらいたいですけど、昼ごはんにお酒飲めないなら行かないって言うし、買い物とかでちょっと家を空けたいときに何かあったら心配だなって思います」
確かに。火事にでもなったら恐ろしいわ。何せ酔っ払ってんだから。

一応緊急通報装置ってのがあるってことは言ってみたけど、あんまりピンときてない感じ。まぁそうだよね。
今さら辞めろとは言えないだろうから、タバコの管理方法は工夫したほうがいいだろうと提案した。
そして意味あるか知らんけど介護保険の申請方法だけ教えといた。

94歳に声をかける
「転倒と体調には気をつけてくださいね。入院になったら、タバコは吸えないし贅沢縛りは飲めませんからね」

94歳「ハァ!そりゃ◎ねってことだね!あんたたちの世話にはならずに逝ってやるよ!!」
隣で娘、苦笑い。


終始自信に満ちた94歳。あの調子だと100歳までは余裕かな。
ファンキーな生き様も、ちょっと羨ましい。
もうちょっと仲良くなったら生活歴とか聞いてみよう。


ここまでで30分以内のやり取り。
お帰りいただいたあと、ひとつ聞き忘れたことがあったことに気づいた。


それは




飲んでるワインは赤か白か。

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