短編小説「背負う光」 風まかせ文芸部|ふわっとことばあそび
気がつけば、私は「光」を背負っていた。
それがいつからだったのか、今となってはもう思い出せない。大人になったと感じて、しばらくした時には、この身に余るほどの光が、私の背中に宿っていた。背後からじりじりと肌を焼く熱と、眼前に広がる世界を白々と照らし出す圧倒的な輝度。それが、私の背中にのしかかった「光」だった。
一歩、足を前に踏み出す。すると、すぐ後ろにあったはずの地面が、音もなく闇に溶けていくのが見えた。まるで、濃すぎる黒の絵の具を水に垂らしたように、じわりと確実に、闇は私の歩いた軌跡を飲み込んでいく。振り返ることはない。したくもない。もし足を止めれば、この闇は私ごと、「光」をも呑み込んでしまうだろう。その恐怖だけが、私の足を動かす唯一の燃料だった。
背中が、再び強く焼ける。皮膚が焦げるような鋭い痛み。背負った「光」は、私の進むべき道をどこまでも明るく照らし続けてくれるが、その代償とばかりに私の生命を内側から削っていく。私という存在自体を削り、変容させながらも、「光」はどこまでも強く輝く。私はその輝きに何度も救われながら、また一歩を踏み出す。
迷いはない。もっと厳密に言えば、迷っている暇など与えられていない。この「光」を絶やさぬように。この道を照らし続けるために。今日もただ、歯を食いしばって一歩ずつ前に進む。
いつか、この光を届け切ったその瞬間。 「どうだ、カッコいいだろう」と胸を張って笑いながら、私自身は静かな闇の中へ消えていく。そんな最期を、私はずっと夢見ている。
こちらの企画に参加させていただきました。
素敵なお題をありがとうございました。
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