見出し画像

【シロクマ文芸部】鍋の具は

鍋の具はなんだろう。フタを開けると髪の毛が隙間なく詰め込まれていました。まるで生き物のように、コンロの火に合わせてゆらゆらと揺れています。
ぞっとしました。
すぐに母にたずねました。
「ねぇ、これはいったいなに?」
わたしの予想に反して母は顔を赤らめて言いました。
「ふふ、あなたもこうやって生まれたのよ」
ぶくぶくと鍋が煮立つと、底の方から白いものが浮いてきました。人間の歯でした。
鍋の中の物体が混ざり合い、弟か妹になる。
わたしにはうまく理解できませんでした。
けれど、それはとにかくおめでたいことなのです。
父は帰りにケーキを買ってきました。
「ハッピバースデートゥーユー」
「ハッピバースデートゥーユー」
ケーキの上に苺は乗っていませんでした。
理由を聞くのは実に野暮なことだと思い、わたしは歌を続けました。
「ハッピバースデートゥーユー」
「ハッピバースデートゥーユー」
鍋の中の眼球と目が合いました。
早くこの子の名前を決めてあげないと……歌が終われない。
「ハッピバースデートゥーユー」
「ハッピバースデートゥーユー」

おわり

締め切り過ぎましたが、書いてみました。

いいなと思ったら応援しよう!