痛くて痒い一ヶ月
以前の記事にムカデが嫌いというコメントをいただいた。
実は私にも、忘れられない経験がある。
運動靴に突っ込んだ右手を引き抜いた瞬間、親指に何かがぶら下がっていた。
派手な色。たくさんの足。
もそもそと動く、あいつ。
仕事一筋で田舎暮らしの割に虫に詳しくなかった私は、それが何なのか、最初の数秒はわからなかった。
しかし周りにいた同僚たちはすぐに顔色を変えた。どうやらただ事ではないらしい。
あいつはしばらく私の指にぶら下がり続けた後、振り払った反動でぽとりと床に落ちた。
その瞬間、ぱちん。
同僚の足があいつの上に乗った。
没・あいつ。
あいつとは、ムカデである。
これは、昔勤めていた学校での話だ。
その学校は自然に恵まれていて、虫が多かった。だからムカデがいてもおかしくはない。
とはいえ、まさか靴の中にいるとは思わない。
いつものように生徒と運動場に出ようと、左足を運動靴に突っ込んだ瞬間、足先に違和感があった。靴を脱いで中を覗いても何も見えない。
では、と右手を突っ込んだのが運の尽きだった。
靴の中のお客様は、突然の侵入者に驚き、身を守るためにその牙を向いた。
それが冒頭のいきさつである。
噛まれた瞬間、不思議と痛みはなかった。しかし、じきにじんじんと痛みが走り始め、親指はみるみる腫れ上がった。
近くの病院に駆け込み、解毒の注射を打たれた。
「痛いと思いますが、我慢してくださいね」
その言葉どおり、 その後の痛みと腫れは想像以上だった。
右手全体が腫れ上がり、
翌日には腫れが右肘にまで達していた。
ムカデ、恐るべし。
目の前でその一部始終を見ていた同僚たちは、痛々しい私の手を見て心配しながらも、どこか少し楽しそうだっ
腫れが引いた頃、今度は異様な痒みがやってきた。刺された親指はもとより、指全体、腕までがかゆい。痛みと同じくらい、いやそれ以上にかゆい。
その痛みと痒みに耐えること、およそ一ヶ月。
ようやく右親指は元に戻った。
ムカデに刺されたのは、後にも先にもこの一回きりである。
たった一回の経験で、私はあの黒とオレンジの何とも言えない派手なムカデを見るたびに、無性にイライラするようになった。今でも。
そんな昔の話を、ふと思い出したので記録しておく。
私は足がたくさんあるものと、ついでに足が全くないものが、本当に苦手だ。噛むとか噛まないとか、そういう問題ではない。
……はっ、義母は巳年(みどし)生まれだった。
うっかり思い出してしまった。

オオヤスデと言います
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