緊張感は、川をまっすぐにする。
組織というものは、放っておけば必ず少しずつ緩んでいく。
人が異動し、仕事のやり方が微妙に変わり、前任者がそのルールに込めた意図は、時間とともに薄れていく。
「前からこうだったから」
社内でその言葉が増えはじめたとき、経理という名の川は、ゆるやかに蛇行しはじめる。
目に見えるほどの大きな変化ではない。
今すぐ誰かが困るわけでもない。
けれど、そこには確実に、目立たない淀みが生まれていく。
税務調査は、その見過ごされがちな淀みに、外から強い光を当てる。
決して心地よい時間ではない。
膨大な資料の準備は大変だし、胃の痛くなるような緊張もする。
調査官は、手放しの味方ではない。
でも、決して敵でもない。
彼らはただ、静かに、まっすぐに問いを投げてくる。
その問いに一つひとつ向き合うことで、不思議と川の流れは整っていく。
曖昧だった判断に言葉を与え、惰性になっていた処理の足元に、再び確かな「根拠」という石を置き直す。
そうして淀みは消え、蛇行していた川は少しだけ、まっすぐになる。
すべての確認を終えた川は、また決算という河口へ向かって、静かに流れていく。
以前よりも少しだけ、力強く、澄んだ音を立てて。
適度な緊張感は、決して悪ではない。
それは、私たちが日々デスクで守り続けている川を、健やかに保つための力なのだ。
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