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Excel考古学① 出向者引き継ぎゼロ

出向初日。
私がまず取り掛かったのは、共有フォルダの探索だった。
「経理」の階層を下り、「月次」フォルダへと潜っていく。

画面に並んでいたのは、おびただしい数のExcelファイルたちだった。
「月次」「月次_修正」「月次_最終」「月次_最終2」……。
ざっと数えただけでも10個以上ある。
しかも「最終」を冠するファイルが複数存在し、どれが真の最終版なのかは誰にも分からない。

そもそも、この職場には出向者に対する「引き継ぎ」という概念がほとんどない。
1日あれば御の字で、場合によってはそれすらなく実務に放り込まれる。
仕組みより個人の経験、マニュアルより気合と根性。
「体で覚える」という極めて属人的なやり方が当たり前としてまかり通っているのだ。
業務内容も、過去資料の保管場所も、すべて自分で探して気づくことが大前提であり、できなければ能力不足の烙印を押されてしまう。

結果として、新参者が頼れる唯一の手がかりは、共有フォルダの奥底に放置された過去のExcelファイルだけになる。
先人たちが残したセルを一つずつ開き、「この業務は一体何をしているのか」を推測していく。
それはまるで、地層から発掘された土器の破片を繋ぎ合わせる作業に似ていた。

単なる業務把握ではない。
「考古学」なのだ。
私は共有フォルダという名の遺跡で、静かに発掘作業をスタートさせた。



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